群馬DC
群馬の朝。国鉄時代から現役の115系が通勤通学利用者を乗せて群馬一の都市、高崎にやって来る。
国鉄時代から現役で走り続ける115系、211系、107系は現在も群馬の鉄路の主力である。
高崎は古くから宿場町として栄え、高崎線、八高線、両毛線、上越線、吾妻線、信越本線が交わる交通の要衝となり、機関区や貨物列車の操車場、車両基地が設置され、国鉄時代にはD51等の蒸気機関車、上越国境のシェルパEF64電気機関車等が配置された。
現在もこれらの車両は現役で活躍しており、平日でも訓練運転でD51‐498やC61‐20蒸気機関車が旧型客車や12系客車を牽引し、上越線等を駆け抜け、夕方の帰宅ラッシュの時間には高崎駅でもその有志を見ることが出来る事もある。
また、現在は貨物の主力はEH200型電気機関車になったが、JR東日本高崎車両センターには今もEF64が4両配置され、イベント列車や事業列車で活躍している。
この外にも、特急牽引機であったEF65‐501やEF60‐19、ディーゼル機関車DD51とDE10が高崎車両センターに配置されている。
旅客列車も、高崎線と八高線はE231やE233。キハ110系等のJR世代の車両になったが、それ以外は今も国鉄115系や211系、107系が現役で活躍している。
そういうわけで、群馬を訪れる鉄道ファンは多い。
夏休みになると、連合艦隊は連日のように高崎機関区等でSL列車を撮影する。
上越線と信越本線では毎週土日を中心にSLが運転される。
だがこの年の夏は違った。
7月2日から9月30日まで、「群馬ディスディネーションキャンペーン」としてJR東日本の上越線や信越本線、両毛線、高崎線を中心にイベント列車が多数走行し、その中には高崎機関区のD51とC61が重連で走行するという列車もある他、新潟から「SLばんえつ物語」がやって来るという物もあった。
三河にとって、新潟から「SLばんえつ物語」がやって来るというのは、彼と新潟のSL列車が再会するということであり、燃えていた。
7月2日、上越線と信越本線のSL列車が高崎駅を同時発車。これを皮切りに群馬ディスディネーションキャンペーンがスタートした。
SL同時発車を撮影した連合艦隊は、列車を追跡して上越線の後関―上牧間の撮影ポイントでC61とC57の重連を仕留める。
7月3日は上越線の敷島―渋川間の大正橋でD51とC57の重連が牽引する「SL重連みなかみ物語」を撮影。三河は、久しぶりに見る青とクリーム色のツートンカラーの「SLばんえつ物語」の12系客車とC57‐180と再会した。
そして、夏休みになると、三河は青春18切符を購入し、日帰りだが新潟へ行ったり、東京や甲府へ行ったりした。
三条神流も、長野に行って「エメラルダス」と再会し、更に関係が深くなり彼氏と彼女に間違えられる程になっていた。
そして、秋の文化祭等に向けた鉄道模型の用意も着々と進んでいた。
高崎第一高校の文化祭での展示を皮切りに、10月15日の高崎車両センターでの展示、そして11月5日~6日の倉賀野高校の学園祭で鉄道模型を走行させる。
それに向けて、連合艦隊は車両の整備と線路配置についての打ち合わせが行われる。
夏休みが終わると、高崎第一高校では文化祭に向けた準備が始まる。
例年なら倉賀野高校の女子達は、高崎第一の文化祭で男子を何人ナンパするかと言う話題で持ち切りだが、三河のクラスだけは違った。
三河のクラスでは、三河はクラスの誰が一番好きなのかという話題で盛り上がっていた。
この日、三河は珍しく一番乗りで学校に来た。
三河は連合艦隊の三条神流に電話で、倉賀野高校の様子を伝えた。
「まったく。ナンパしに来るとか、やる気なくなる。」
「そうですね。ところで、エメラルダスは来るのですか?」
「来ないよ。」
「そうですか。」
「そっちこそどうなんだ?」
「何がです?」
「松宮さんとの関係だ。」
「付き合ってません。あいつとは部活の仲間という関係です。それに、この学校に私と相性が―。」
言いかけたとき、クラスの女子全員に囲まれていた。
「どうした?」
「相性が会う人が居るか解りません。」
と、三河は言った。
電話が切れたと同時に、女子達は堰を切ったように三河に襲いかかってきた。
そして、また拷問部屋に連れ込まれて集団レイプされ、今度は倉賀野貨物ターミナルで遮断機の降りる踏切に入りかけて遮断器と衝突しかけ、フェンスにしがみつきながら歩き、気がつくと、倉賀野貨物ターミナルの入換線の終端部に来ていた。
(一体、俺は何の為にここにいるんだ。)
と、思う。
「まるで銀河鉄道999のカタパルトレールだ。もし、高崎がメガロポリス駅なら、スリーナインはここから宇宙へ向けて飛び上がるだろう。」
と、三条神流が言っていた事を思い出す。
(銀河鉄道999は見たこと無いけど、ここから蒸気機関車が宇宙へ向かって飛び上がっていったら、感動するだろうな。)
三河はここから、SLが宇宙へ向かって飛び上がって行く姿を想像してみたが、想像したところで、今のこの状況を変えることは出来ない。
アパートへ帰る時、三河は倉賀野貨物ターミナルのヤードを突っ切る公道の踏切まで行ってヤードを見てみた。
夕陽に照らされたヤードに、留置されているタンク車の車列が、寂しく見えた。
(俺は毎日、女に揉みくちゃにされるが、貨物列車は毎日のように日本全国何処へでも行ける。ここに来たタンカー列車は、石油を降したら根岸や川崎に戻って、また石油を積み、宇都宮や郡山、あるいわ松本や長野にまで行ける。休む事も無く。どっちが幸せな人生か分らない。毎日のようにハーレムか、毎日のように日本全国へ貨物を運ぶのか。)
三河は溜め息をついた。