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冗談。まるで漫画だ。もしくはB級映画。少女は長い袖を揺らす。逆巻く風は厳しく流血の灯火に被る。宵闇人形のつぶやき。死刀と呼ばれた彼は言う、殺したい、単刀直入に。どなたをとさえずる人形。陶磁器の様な白い肌は現実感を麻痺させる。貴殿の期待に添えることができるかしら?彼女が提示したのは一つの条件と二つの選択支だった。わたくしは別に金銭など望んで居りませぬ、ただ一時の娯楽、暇潰しを求めて居るだけなのです。ですから貴殿達にはわたくしの気晴らしとなるほどの愉快な活劇を演じていただかねば。
それがまずわたくしの出す条件です。そして代償ともいうべきかしら。わたくしは二つの道を示します。どちらでも結構、お好きな方をお選びください。言うなれば同日同時の二箇所の劇場の予約をするということかしらね。貴殿達は大変仲がよろしいようだけれど、そんなもの粉微塵に潰し打ち捨てるほど面白いものを見せて頂きたいわ。最後に絶妙な微笑。彼女はとある公園の名と日時時間を指定して、風のように去った。残り香など一片も残さず。爽快、故の不快感。死刀と呼ばれた彼は不機嫌な顔を隠すことなく、うざいなあの女とぼやく。
とにかく、扉は開いた。いや、幕は上がった、無理矢理にでも。残された問題は、解決とはほど遠くいかに自分の意志を通すかということに他ならず彼女へ娯楽を提供する為にねじ曲げられる危険性を排除することにある。もっとも彼女も僕も彼もそんな気は毛頭ないが。しかして約束の期日となり公園へと向かった。彼女の用意した役者は二人。妊婦。そして青年とも少年ともいえないほどの男の子。妊婦は言う。あたし、この子を産んじゃいけないんだって。だから、薬を打たれちゃって、そしたら、死ん、じゃった。泣きそうに明るい笑顔。
少年は無表情に語る。僕はもうほとんど死んでるんです。全て失ってしまいました。ただ、あと命が残っているだけで。それきり口をつぐむ。見上げると青い空、その向こうの限りなく遠い太陽。きっと光はこの場所まで届くことなく人工灯に照らされているのだろう。…妊婦を殺すことにした。とりあえず僕の部屋に向かう。彼女が夕食を作ってくれると言うので途中スーパーで買い物をした。全く普通の光景。彼女は数品和食を作ってくれたがどれもおいしい。良い奥さんだったんですね、というと、でも良いお母さんにはなれなかったわと返された。




