第29話インフラを整えよう中
「治水は目立たないが、メリットが多いと言う事は分かった。
それと道路工事に何の因果関係がある?」
道路を改善しなければ、大きなメリットを提示する事は難しいと言うのに、理解されていないのは説明が辛い。
さてどうしたものか……
「道路と言うのは最も一般的な移動手段です。
急な段差をなくし、ぬかるんだ道を無くし、道の揺れを少なくする。
徒歩でも馬でも馬車すら快適に移動する事が出来るようになれば、商人や軍の移動速度は飛躍的に向上し、移動にかかる時間が短くなるので領土は小さくなると言え、ノーフォーク公爵領内でも有数の都市に成長する事でしょう……これは先ほども言いましたが兵にやらせれば練度が上がり、民を雇えば雇用が生まれるのです。あえてやらない手はないでしょう?」
中世ヨーロッパにおいて、最も早い道は古代ローマ時代に整備された街道であったと言うほどであり、海路と古代ローマ時代に整備された道路網によって、イタリア半島の諸王国は商業都市や交易都市として栄える事が出来たのだ。そして金融が発達し、教皇から王族まで排出する事になる名門メディチ(メディシス)家が生まれる要因になったのだ。
そして幸いな事に、古代ローマから現代にいたるまで、道路工事の主な作業には差して変化はない。最も手間はかかるもののチートがしやすい部分なのだ。
「手間はかかりますが、道は長く誰でも使えますし作れます。資金が不安でしたら、商人から借りてもいいですし、住民に課せられている労働税で払わせてもいい良いかと、俺としては関所での税の徴収を撤廃し都市や村に入る際に税金を取れば、今までよりも税金をと取りっぱぐれる事はないと思います」
怖いのは税金を取れない事なので、道路の建設費用の元が取れれば良いのだ。織田信長が近江国(現在の滋賀県)の六角 定頼や今川義元の息子の今川 氏真からパク……インスパイアされた楽市・楽座をしようとは思わない。
多くのWEB小説ではこの楽市楽座の手法を用いる事が多いが、欠点として店自体の売上が均一化し、禁制品の類が市に並ぶことになる。城下町や領内の主要都市に商人を集めるための政策であるのだから、税金を下げてやればいい。
もしこれをするのであれば、江戸時代の株仲間のような組合を組織し、一定の権力を与えつつそこから、纏めて税を徴収する仕組みを作る方が効率的で現実的で無理がない。
「それでは、賊の監視と被害を抑える事は出来なくなる……」
収入が少ないのにパウルは、どうやら現代世界で言う【大きな政府】を目指しているようだ。俺個人としては税金の対価が社会サービスなのだから、税を払わずスパイ活動をする旅芸人や商人には、古代ローマ時代のように兎にかく自助! 自助!! 自助!!! とさせればいいのだ。
移動が不安なら傭兵でも冒険者でも雇えばいい。身の丈に合った支出の【小さな政府】の方が、この中世世界の世情には合っているように感じるのは、地理・公民や歴史を学んだ為だろう……
はぁ……少し予算はかかってしまうが、小規模な軍事拠点を作る事で解決するか……
「収支が釣り合いません。村や町の間が一日以上開くようでしたら、その間に軍の駐留所を設けましょう……」
「駐留所だと?」
パウルとてバカではない。言葉の意味が分からない訳ではなくどう言う物か? と聞いているのだ。
「えぇ。徒歩で6時間程度の箇所に、宿場町を造り軍が馬を休ませたりする警邏の拠点とする場所です。商人や旅人が通れば金を落としますから都合は良いと思います。賊も人ですから町で買い物をするでしょうから、【交番】と言う衛兵の駐留所を設け罪人を捕らえたり、巡回する事で犯罪抑止につなげます。
新兵は衛兵をしながら訓練を積めば、兵の損耗を抑える事が出来ると思います。手足を無くしたり怪我をして、前線を引退した兵を再雇用し衛兵の事務仕事をさせれば問題ないかと……もし田舎など何かの理由で宿場町を作る余力がないのなら、一晩明かすあたりに屋敷を立て交代制で兵を駐在させれば問題ないかと思います」
古代オリエントでは、アッシリア帝国とアケメネス朝ペルシア帝国で駅伝制と言う日本で言う駅家……宿場町をより軍事特化にしたものがある。
これは適切な間隔で人・馬・馬車などを常備した施設を置き、施設から施設へと行き来することで逓送し情報を伝え、また使者が旅行する交通・通信の制度を指す。
古代ローマの公道を意味する【クルスス・プブリクス】、イスラム帝国の【バリード】、モンゴル帝国の【ジャムチ】やオスマン帝国、中国、日本などで利用されてきた信頼と実績のある、情報と食料や税金の輸送システムである。
高校時代世界史の教師が、「モンゴル帝国では馬を乗り換えて、広大なユーラシア大陸を高速で横断した」と言っていた事と、アメリカ軍の他国の領土に軍事拠点を作るベースキャンプ方式と、日本の交番(派出所)を合せ、ウチの軍の中継基地を目指した形だ。
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