逃亡
今回も勇者視点です。
「くそっ、ユーリのやつこんなに強かったのか!?」
あの屈強なジルがユーリに押し負けている。
ユーリは元々剣士をやっていたのだから多少手強いだろうと思っていたのだが、まさかここまで強いとは思わなかった。
ジルも相手が相手だからかなかなか本気が出せないでいる。
ユーリは舞を踊るかのように、ジルを翻弄する。
そして、ついにユーリの剣がジルの槍を飛ばした。
「お前で最後や!」
「ま、待て!俺だ!ジルだ落ち着け!」
ザクッ
「カ、カイン・・・お前・・・」
俺はユーリを背後から突き刺した。
「え?・・・あれ?カイン・・・?な、何で・・・」
ドサッ
「ユーリは確かに襲ってきたけど、なにも殺す事は無かっただろ!?仲間だろ!」
「ジル、ユーリはお前を襲ったんだ。俺達を裏切ったんだ。だから仲間じゃ無くなったんだ。」
「それは、アイツの変な魔術のせいだろ!?」
「うるさい。黙ってろ。」
「あらあら。勇者様ともあろうお方がそんな口が悪くていいんですか?仲間じゃなくなったと言っても、元仲間だったのに殺すなんて・・・」
アリサはニヤニヤと笑っている。
「ところで、さっきから死んだふりをしているそこの人、バレバレですよ?」
ダリルがピクッと動いた。
「罪を償わず、なおかつこの場から逃れようとするその行動。いけませんねぇ・・・」
ダリルにゆっくりと近づく。
「ひぃ!待ってくれ!元々そんなつもりは無かったんだ!カインが提案したんだ!謝るから助けてくれ!」
「はぁ、この場に及んで命乞いですか。仕方ないですね・・・」
ザシュッ
「じっくりと痛めて反省させるつもりでしたが、そういう気分じゃなくなりました。」
アリサの漆黒のナイフの様なものがダリルの頭部と胴体を切り離す。
「カイン、逃げよう。俺らでは勝てない。無理だ。煙玉が袋に入ってるはずだ。」
俺は少し考えてからジルに言った。
「ジル、『俺の為に戦え』」
「か、体が勝手に・・・嫌だ!解呪してくれ!うわぁぁぁぁぁ!!」
ジルは叫びながらアリサに突進して行く。
俺は、勇者に与えられた一度きりの絶対命令権『神令』を使った。
これは俺と敵対している者以外に効く。
本当はこんな所で使いたくは無かったのだが仕方がない。
俺はこんな所で死ぬわけにはいかない。
俺は全力でこの場から走り去った。




