復讐(2)
アリサ視点に戻りましたー。
勇者が逃げていく。
あと少しで復讐が出来る所だったのに・・・
「うわぁぁぁぁぁ!!」
ジルが叫びながら私に突進してくる。
『縛呪』
私がそう言うとジルはピタリと止まった。
何故だか分からないが、不思議と力が溢れてくる。
それだけじゃなく、全く知らないはずの魔術が次々と頭に浮かんでくるのだ。
「くそっ!何なんだよ!?こんな魔術知らねぇ!!」
「うるさいですよ。これから貴方はこれまでの罪を反省するのです。」
私は短剣を取り出して、ジルの前に立つ。
そして、ジルに聞こえないように呪文を呟いた。
「では、貴方に質問します。貴方達は私以外の女性にも私と同じような事をしましたか?」
「い、いや。やってねぇ。」
ザシュッ
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
私はジルの右腕を切り落とした。
「嘘はいけませんよ。分かるんですから。」
さっき聞こえないように呟いた呪文の効果だ。
嘘なんて言わなければ腕が落ちなくて済んだのに・・・
私はジルの右腕に治癒魔法を使い、出血を止める。
出血多量で死なれては困るからだ。
「では、もう一度。貴方達は私以外の女性にも私と同じような事をしましたか?」
「や、やった!たくさんやった!!いろんな女とやった!」
ザクッ
「あぁぁぁぁぁ!!」
今度は左腕を切り落とした。
持っていた槍が地面に突き刺さる。
こいつは馬鹿なのだろうか。
言い方ってものがあると思うのだが・・・
左腕も治癒魔法で出血を止める。
「貴方、ふざけてます?」
「ふ、ふざけてなんかいない!何故、嘘なんか言ってないのに左腕を切り落とした!?」
「はぁ・・・」
なるほど、頭の中まで筋肉なのか。
「じゃあ、二つ目の質問です。貴方は今までの犯してきた罪を反省していますか?」
「反省している!だから頼む、許してくれ!!」
「許すかどうかはこの後の質問次第何ですけど・・・まぁ、嘘は言ってないようですね。」
嘘は言ってないが、それは私に言われたから反省しただけのようだ。
「では、三つ目の質問です。貴方は今までの傷つけてきた女性達にどうやって償いをしますか?」
「そ、それは・・・金だ!!欲しい物を何でも与えてやる!こ、これで終わりなんだろ?しっかり償いをするから、許してくれ!!」
こいつは罪の重さを分かっていない。
お金で何でも解決出来ると思っているらしい。
これ以上続けても意味がない。
仕方がない・・・
私は少し考えてからジルに言った。
「分かりました。許しましょう。」
「本当か!?なら早く魔術を解いてくれ!」
グサッ
「許すとは言いましたけど殺さないとは言ってませんよ。」
私はジルの心臓に深々と短剣を突き刺した。
「う・・・あ・・・」
グチャッ
倒れ方が悪かった。
ジルが倒れた所にには地面に刺さった槍があった。
槍の柄がジルの眼球を貫通した。
さらに体格が大きく体重が重い事も加わり、後頭部すらも貫いていた。
「さて、残りは勇者だけ・・・」
憎い憎い憎い憎い。
一度でも勇者に恋をしてしまった事も憎い。
勇者を信用してしまった自分も憎い。
これだけ私の人生を狂わしたのに平然としている勇者が一番憎い。
そこで急に私の視界が暗転した。