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硝子の蕾

夏の県大会1回戦、4点ビハインドの阿賀北の7回表の守備、この回から1年生の一色彩夏がマウンドにあがった

3年生の先輩捕手からのサインを確認すると彩夏は「フ―ッ」と軽く息を吐きながら頷き、ワインドアップからの第1球、インハイへのストレートを力強く投じた

打者は思わず仰け反ったがコースはストライクゾーン、球審がストライクのコールをする


続く2球目、3球目もストレートを投じ、打者はスイングをするもバットに当たる事無く空振り三振


後続もストレート中心の配球で連続三振にとり、結果この回を三者連続三振に抑えた彩夏は軽く拳を握りガッツポーズをした


しかしその裏阿賀北打線は1つの出塁もなく淡々と攻撃を終え、8回表のマウンドにも彩夏があがる


先頭打者への初級、捕手からのサインは外角低めへのストレート、彩夏はワインドアップから外角低めギリギリストライクゾーンへの直球を投じ、打者がそれを見逃すと球審はストライクのコールをした


(うん、今日は調子いい。もっと出力上げれるかも)


2球目、彩夏は自分の限界を試すかのように思いっ切り腕を振り、全力のストレートを再び外角へ投げ込んだ

唸るような直球に打者はのバットは振り遅れて空を切り、これで2ストライク

3球目はカーブを投じ、タイミングを狂わされた打者のバットが再び空を切り三振


(うん、いけるいける)


その後彩夏は9回まで投げて1人もランナーを出すこと無く完璧に相手打線を封じたが、阿賀北打線も反撃する事が出来ず、結局4-0のスコアでゲームセット

阿賀北の夏は1回戦敗退に終わった



試合終わりの帰り道

彩夏と同じく1年生の堂前香は家が同じ方面という事もあり彩夏と2人で今日の試合について語りながら自転車を漕いでいた


「それにしても凄かったな~彩夏、3回で7奪三振だもんな。三振以外の2つのアウトは内野ゴロだし外野まで飛ばされてなかったもん」


「相手が勝ち確ムードだったから適当に攻撃終わらせただけじゃないの?」


「いやいや、そんな訳あるか!」


謙遜や冗談では無く彩夏は本気で言っていると、付き合いの長い香は理解しているからこそ真面目にツッコミを入れた


「でもやっぱり、試合で投げるのは楽しいよ。ドンドン気分が上がってきちゃってさ」


「今日、もし彩夏が先発だったらどうなってたんだろうな」


「うーん、先発のペース配分だと流石にあの出力じゃ投げれないから打たれてたんじゃないかな?」


「そうかあ?」


自分の実力を過小評価しすぎている彩夏に対し、香は呆れた声を漏らした


「来年、もしくは再来年、彩夏が全部完封してくれたら私達みたいな弱小校でも全国行けちゃうかもしれないな」


「えー、流石にそれはしんどいよ。」


「彩夏は凄いピッチャーだよ、ただの凄いじゃないぞ、とんでもなく凄いピッチャーだ」


その言葉を聞いた彩夏は、とぼけた顔で他人事おように「おぉ~」と気のない声を出す

相変わらずな彩夏に香は呆れてため息をついた


「彩夏は絶対にプロになれるほどの逸材なんだよ、だからアタシは一色彩夏というとんでもなく凄い逸材がここにいるぞ!って沢山の人に知ってもらいたい、そのために県大会1回戦敗退なんかで燻ってちゃだめだ!もっともっと沢山の人に注目されるとこで投げないと、それが全国なんだよ!」


香は自分が発した言葉ながら、照れくさくなり顔を少し赤らめた


「そっか、じゃあその為には香にリードしてもらわないとだね。私のピッチングを一番うまくリード出来るのは香しかいないんだから」


彩夏はニッコリ笑ってそう言った

香は更に照れくさくなり彩夏から顔を逸らすように空を見上げた


真っ青な昼下がりの空に一直線に飛行機雲が伸びていた、

しかし飛行機が通過してからかなり時間が経っているのだろうか、飛行機は僅かに途切れ途切れになっていた。


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