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思い出の春2

「あ、キミ!確か同じクラスの子だよね?名前は...えーっと...」


初めて会話をしたのは、中学1年の春


「小山内、アナタは春日さんだよね」


「そうそう!小山内さんも見学に来てるってことは、野球やるの?」


第一印象は馴れ馴れしい奴


「まぁ...」


「へぇ~そっか!どのポジションやるの?」


「ポジションは...外野かな...一応去年までは外野守ってたし」


「本当にそう思ってる?」


頭の悪そうな奴だと思ったけど、意外と鋭い


「なんで?」


「だって一瞬間があったからさ、言い方も乗り気じゃない感じだったし」


「ハハハ...」


「で、本当はどこ守りたいの?」


失礼な奴、空気の読めない奴


「えーっと...まぁ、外野でいいよ、全然」


「やりたいポジション守ったほうが楽しいとおもうけどなぁ...」


「でもそれで試合に出れるとは限らないでしょ?」


「仕方なくやってるポジションでも出れなかったらどうするんだ?」


「それは...」


「そうだ!すまんすまん、人にポジションを聞くときはまず自分から名乗らなきゃ失礼だよな!」


本当にバカみたいな奴、それでも...


「アタシはいずれ4番セカンドとしてチームを引っ張る存在になる!小山内さんは?」


それでも、彼女みたいに、バカだって思われるくらい素直になれたら


「私は...」


いつかは自分も...


「私は、実は、ピッチャーやってみたい...やったことないし、出来るかわかんないけど」


「おぉ!そっか!いいじゃん!よし!決めた!」


その日、ハッキリと感じた

運命が動き出した瞬間を


「いずれはアタシが4番で小山内さんがエースだ!」


「そんな、大袈裟な...」


「よし、そうと決まったら早速今日から練習しよう!ピッチャー、やったことないんだろ?」


「え、でも...」


「いいからいいから!小山内さん、グローブ持ってきてる?」


2人きりの特訓


「ここの公園でよく親父や兄貴とキャッチボールしたんだ」


「へぇ~...」


「よし、じゃあ早速投げてみて」


「え?でも春日さん大丈夫なの?」


「大丈夫大丈夫!ドンと来い!」


それからは、毎日のように帰りにここで2人きりの特訓をした

コントロールが定まらず、不馴れなキャッチャーを務めてくれた彼女に無理をさせてばかりだった。



そして月日は流れて


「遥、ちょっと試したい変化球があるんだけど」


「お、いいぞ!」


「ねぇ遥、今更だけど、キャッチャーやる気は無い?」


「うーん、無いかな?」


「私的には遥がキャッチャーだとやりやすいんだけど」


「そりゃ、毎日毎日ここで受けてるからな」


「じゃあ」


「それでもアタシはセカンドがいい、4番でセカンド」


「こだわるね」


「こだわるぞ」


遥がいたから必死に野球に取り組めた

それはこの先も変わらない


「小山内、そろそろ志望校決めたか?」


「いえ...」


「部活もいいけど将来の事も大事だぞ?お前は勉強も出来るんだから。先生、期待してるからな!」


「はい...」


まだ、もう少し、遥と野球をやりたいと思った


「小山内、お前本気で言ってるのか?」


「はい、私は林ノ宮を受けます」


「もしかして、春日か?」


「...」


「あのなぁ、お前の将来はお前のものなんだぞ、春日のものじゃない!」


「...」


「お母様からも何か言ってあげてください」


「私は、この子の好きなようにすればいいと思います。この子の人生なんですから、後悔のない人生を歩んで欲しいです。世の中、勉強だけじゃないですよね?」


「しかし...」


「私は、野球をやりたいです。プロになるとかは...まだ考えてませんけど、それでも、遥と野球をやりたいんです。1度しかない青春ってやつを、野球に捧げてみたいんです!」


そんな言葉、昔の自分なら絶対に言えなかっただろう

彼女の影響で自分も変わった


「恭子ぉ~、どうしよぉ~!全然解けない!」


「はぁ...本当にそれで林ノ宮いけるの?私が落とせるギリギリのレベルなんだからね」


「アタシからしたらアタシが目指せるギリギリのレベルの高校なんだぞ!」


「ほら、ここの式は...」


中学最後の年

背番号1を背負い全力で投げた

後ろには4番でセカンドを守る遥がいる

あの日遥が言った事は実現した

これからも、2人ならどんな目標も叶えて行ける

きっと









「そういえば高校に入ってからは初めてだね、ここでキャッチボールするのも」


「そりゃ、もうここで特訓する必要なんて無いからな」


妙な気まずさが2人の間に漂っているせいか、会話が弾まず無言になる

ひたすら会話のないキャッチボールが続いたが、恭子が耐えきれずに切り出す


「ねぇ、私達の距離って思ったより近く無いのかな?」


「そんなこと、そんなことない...」


遥から力の無いボールが返ってくる


「じゃあなんで!」


恭子の投げる球に力が入る


「何も...出来なかったから...」


「え?」


「恭子と一番付き合いが長いのはアタシなのに...アタシは、何も出来なかった...慰めの言葉をかけてやることすら出来なかった!結局、沢井灯に全部持っていかれてしまった...」


その言葉を聞いて、今日の遥が空回りしていた理由をようやく理解した


「そんなことない、遥はいつだって私の手を引っ張ってくれてた、遥がいる限り私は野球を続けるし、どんな壁も乗り越えてみせる!」


「恭子...」


「私、遥のおかげで変わった、多分段々と遥に似てきたんだと思う、昔の私なら沢井さんに勝負なんて挑まないもん。人間として成長出来たのは遥のおかげだから感謝してもしきれない、これから沢山恩返ししなきゃいけないのは私なんだから、イチイチそんなことで悩むなよ!」


更に力の入ったボールを遥に向かって投げる。


「...そっか...アタシも恭子には感謝してる!こんなアタシに付き合って野球をやってくれて、同じ目標を共有できる大事な友達だ!」


遥もさっきまでより強い球を投げ返した。


「そうそう、だから改めて宣言するね!アタシはエースになる!」


「私は、4番セカンドになる!」



春、ここから始まった2人の物語

互いに友情を再確認し、そしていよいよ夏が始まる。

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