王城へ
ガイザーヴの足取りは、颯爽としていた。
セリフィスが大きめのバッグ一つにまとめた身の回り品を片手で軽々と持ち上げ、人込みの中をすいすいと歩いていく。
もちろん彼女をほったらかしにする事はなく、おいてきぼりを食らわす本末転倒な事もなかった。
「歩かせてごめんね」
王城に近づくにつれ行き交う人がいなくなり、前を歩いていた少年は横に並びながらそんな事を言い出した。
「本来は馬車で迎えに行くのが筋なんだけど、取り調べに時間がかかるから使えなくってさぁ。ったく、あのウスラバカ!」
その毒づきに、セリフィスは呆気にとられる。
仮にも自らが仕える王子殿下を、どうしてここまでこき下ろせるのだろう。
「い、いえ……私は構いませんから」
そんな悪態をついても平気なガイザーヴ。
この若さで近衛騎士隊長だと、自己紹介していたではないか。
彼に関する噂で、どうも何かを失念している気がする。
「そう言ってくれると嬉しいな」
にこにこと邪気のない笑みを浮かべるガイザーヴが、ふと足を止める。
つられて立ち止まればそこには水濠と跳ね橋、人の出入りを見張る二人の門番がいた。
王城に、着いたのだ。