転校生
有栖「波乱の予感」
白蘭と別れた有栖は指定された教室へ向かった。担任の教師から指示されて教室に入ると、生徒達の視線が一気に自分の方へ向けられる。
(注目されるのは慣れないわね…。)
そう思いつつも努めて冷静を装い、簡単な自己紹介を始めた。
「ベドウィン地区から来ました。こ、香坂有栖です。よろしくお願いします。」
言い終えると生徒達から握手が返ってきた。それから先生の指示で自分の席に向かう。そしてすぐに朝礼が始まった、
(大丈夫だよね?別に変じゃないよね?)
自分の振る舞いに問題なかったか考える有栖。これまでルーク達と関わってこなかった彼女にとって、学校という閉鎖的で様々な人が集まる場所に入るのは初めてだった。そのうえ、彼女にはある目的がある。周りに発覚した場合、生徒達を危険に巻き込むことになる。できるだけ目立たない様にしなければならないのだ。
(とにかく、大人しくしないと。人と関わることはできるだけ控えて。)
「あのー。」
(何か聞かれても知らないで通そう。学校が終わったら即帰宅で。)
「もしもーし?」
(でもルークさんから学生生活を楽しめとも言われたし、少しだけなら…。)
「聞こえてますかー?」
「えっ!?」
我に帰るといつの間にかクラスの生徒達に囲まれていた。朝礼が終わり、1時間目は自習だった様だ。
「えっと…何でしょうか?」
思わず身構える有栖。だが転校生が来たらすることは1つ。質問である。特に有栖の場合は…。
「貴女ベドウィン地区から来たのでしょう?だったらブラッカーズを見たことある?」
「え、ええ。あるけど…。」
「リーダーのルークさんってかっこいい人?それともかわいい人?」
「どちらかというとかっこいい、かな?」
ルークについて知りたい者。
「なぁ、あの噂は本当か?バルクス病院の不正を暴いたのがブラッカーズだってのは?」
「えっと、どう…かしら?」
バルクス病院事件のこと。
「ブラッカーズのアジトってどこにあるんだ?どうすれば仲間にしてもらえる?金か?」
「いや、私に聞かれても…。」
仲間になりたがる者などブラッカーズについての質問が多かった。有栖も予想していたため、答えられる範囲で答え、かつ自分のことは言わないように決めていた。ただこれほどたくさんくるとは有栖も予想していなかった。もっと言えばこれほどブラッカーズが知られていることに驚いた。なかでも彼女が驚いたのは…。
「そういえば、片目の少女のことは知ってるか?」
「…えっ!?」
「最近ブラッカーズのメンバーに片目の少女が入ったらしいぜ。噂によるとかなり強いらしい。」
「けっ!俺らと変わらねぇ年だろ。なら俺だって…。」
「命のやり取りできるの?戦えるってことはそれだけの実力があるってことよ。ねぇ有栖ちゃん。」
「え?あ、ああ。そう、かな?」
「そういえば君、眼帯をしているよね?もしかして…。」
「!?」
「なんてね!冗談だよ、冗談。」
「は、はははは…。」
初日からバレそうになり、思わず冷や汗を流す有栖だった。
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しかし身分がばれることはなく1時間目は終わり、その後の授業も難なくこなせた。午前を無事に過ごし、今は昼休み。有栖は学園内の広場にあるベンチに座り、1人で昼食をとっていた。
「疲れた・・・。」
初めての学校生活に気を張り、ようやく一息つける時間がおとずれた。だがしばらくこの生活が続くのである。気を抜くわけにはいかない。
「当面の目的は学園内をよく知ることね。あまり目立たない様にしないと。」
そう決めた彼女だが1つミスがあった。生徒の中に彼女を知っている人物がいたのだ。
「あれ?有栖さん?」
「えっ?圓龍さん?」
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「上手くやれているかねぇ、有栖は。」
店の椅子に座って一服するロイスはふと、そんなことをつぶやいた。隣で作業しながらルークは答える。
「彼女なら問題ない。頭はいいし運動もできる。すぐ人気者になるさ。」
「確かに。今頃は質問攻めにあっていそうだが。」
「それも経験だ。まぁ、彼女の学校生活については心配しなくていいだろう。それよりも…。」
ルークは作業する手を止め、ロイスの方に向き直る。その目はことの重要さを示していた。
「もう一つの件はどうだ?何か進展は?」
ルークの問いにロイスは手をあげて首を横に振った。
「いや何も。」
「そうか。なければそれが一番だが。」
「本当に製造しているのか?いくらネグルとはいえ流石にそれは…。」
「その確認も含めての調査だ。違っていたならそれでよし。真実なら、対処が必要だ。」
「まさか赤飴の製造が学園内で行われているとはなぁ。2年前に禁止したはずだが。」
「法の目をかいくぐる連中はどこにでもいる。特にネグルはかつて潰した組織の生き残りがまだ潜んでいるはずだ。だいぶ良くなったとはいえ、まだまだ犯罪の温床であることには変わりない。」
「平和とは程遠いな。警戒を怠るわけにはいかいない、か。」
「そういうことだ。」
ため息をつくルークとロイス。学園内に潜む闇の実態に嘆く2人だった。
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「そういえば白蘭から聞いたんだが・・・。」
「どうした?」
「RAIDの圓龍、あいつ青藍学園の生徒らしいぜ。確か有栖と一緒の学年だったはず。」
「・・・なに?」
その報告に場の空気が凍り付いたのは言うまでもなかった。




