第2章 42話 電気と雷撃魔法
「その雷撃魔法ってマリリとマリスは使えるの?」
普段マリリとマリスは水属性と風属性の魔法を好んで使っており、他属性魔法を使っている所を殆ど見た事が無い。
魔法にはファンタジー系のゲームなんかに良く有る様に、数種類の属性が存在しており、術者によっては得て不得手が存在する。
勿論、得て不得手だけでは無く、特定に属性魔法は全く使えない魔術師も居たりする。
というよりも「適正」と言うのが有り、逆に全属性の魔法を使える方が珍しいそうだ。
「はい、使えますよ。 私もマリスも。
特に苦手とか言う事もありませんよ。」
あっさりと答えるマリリ。
逆に聞いた俺が恥ずかしかった。
「そうですね、私の方から補足させて頂きます。
お二人は闇属性魔法以外の全属性の魔法を使え、それも僅か10代にしてギルドランク・プラチナクラスを獲ている要因の一つですね。
全属性の魔法を扱えるなんて、まずそうそう居ないですからね。
冒険者の間では、天才魔術師とも呼ばれている位です。」
ベテランギルド職員のセリーにそう言わせる程だ。
普段2人と一緒に居るせいか、俺の中での魔法等に関する感覚のベースが2人のランクがベースとなってしまっている。。
こういった慣れが、命を懸けた戦いにおいて生死を分けるきっかけに成り兼ねないな。
以前の魔族との戦いで痛いほど思い知ったハズなのに、またいつの間にか薄れてしまっている自分が居る。
ダメな傾向だ。
初心を忘れず、緊張感を常に持っておかねば・・・。
「なあ大地よ、その電気という名の雷の力を、お前達の世界では自在に操っておるのか?」
「んー、まぁ操ってるといえばそうですね。
大分簡略して説明しますと、発電所という施設で電気を自由に作り出す事が出来、その作り出された電気でありとあらゆる様々な機械を動かす事ができますね。
どの家庭・・家にも電気が電線で送られてきているので、それこそ子供でも自由に使う事が出来ますよ。」
「なんと・・・」
一同絶句の様子。
後から聞いたのだが、雷撃の魔法は中でも特に難易度が高い属性らしく、戦いに置いて有効に使用出来る術者はそれこそ一握りとの事らしい。
この異世界の住人に置いて電気というのは、あくまでも雷や雷撃の魔法というのがイメージに有るらしいので、驚くのも無理は無いと思う。
「今、ミトンさんが手に持っているそのスマートフォンも電気の力で動いていますよ。」
「こ、これも・・・なのか・・・???
でも、その電線とやらは繋がっていないぞ???」
「それは、そのスマートフォンにバッテリーと呼ばれる電気を蓄える事が出来る部品が内蔵されているんです。
それでそこに蓄えられた電気の力を利用しているって感じですね。」
!!!!!
慌ててスマホを手放すミトン。
他のみんなも慌てて1歩後ろに下がる。
「こ、この中に雷の力が入っておるのか!?
お、恐ろしい!!」
「・・・?
あぁ、あの大丈夫ですよ。その、なんて言いますか、電撃とか流れませんよ?」
「そ、そうなのか?
しかしこれの中に雷を貯め込むとか、なんという技術力なんだ、大地の居た世界は・・・」
一同が目を丸くして改めてスマホを見る。
どうやらこの世界での電気の認識はあくまでも雷であって、かなり恐れられている様だ。
となると・・・
「なぁマリリ、マリリがいつも身に着けているその首飾り、魔法を込める事が出来る魔法石だったよね?
それを使う時は魔法名を言うだけで、詠唱は特に必要無いとか。」
「ええ、その通りです。」
マリリが首から下げたペンダントに加工された魔法石を手の平に乗せる。
何気に今までじっくりと見た事は無かったのだが、魔法を込められたその魔法石は透き通るような綺麗な青色をしており、まるで水の波紋が広がり続けている様な光の動きが中に見える。
「その魔法石ってどんな魔法でも込める事が出来る?」
「基本的には。
ただ込めようとする魔法属性に有った魔法石を用意する必要がありますが。」
「成る程ね。って事は、逆にいうと雷撃魔法に合った魔法石が有れば雷撃魔法も込められるって事かな?」
「はい出来ます・・・ただ雷撃魔法は操るのに技術が要るので、余り・・・というか雷撃魔法を魔法石に込めているのを、私は見た事が無いですね。」
「あの、いいですか?」
セリーが小さく挙手をする。
「雷撃と大地さんの言う電気は同質の物、というよりは同じ物という解釈で良いのですよね?
ひょっとしたら大地さんは、そのスマホに入っているというバッテリーと言う物を作ろうとお考えという事ですか?」
「さすがセリーさん、鋭いですね。お察しの通りです。
バッテリー以外にも試してみたい物があるけどね。
とりあえずバッテリーが作れれば、今回のこのシャオさん依頼のスペシャルな荷馬車には勿論ながら、今後他にも色々と出来る事の幅が広がると思ってね。」
「「「なるほど!」」」
マリリ、マリス、セリー共にポンと手を叩き感心する。
「ふむ、発想は良いが調整が難しい雷撃の魔法を、どうやって自在に操るのだ?」
流石ミトン。
職人の視点とでも言うべきか、現実的な問題点を突いて来る。
「一応、それについても考えてはいます。
ただ俺自身が魔法に関する知識が乏しい所があるから、ある実験をしたいんだ。」
「実験???ですか?」
「ああ、それが上手くいくなら魔法を使えなくても誰でも、自在に電気を操る事が出来るかも知れない。」
俺がそういうと、4人とも一様に驚いた顔をしていた。
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