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第2章 9話 メリルの誘い

アップして早々ですが、改行ミスと誤字を修正致しました。

 「・・・・・ん。」


 ふと目が覚めた。


 真夜中、カーテンを閉め切った部屋の中は暗闇一色だ。

 カーテンを少し開けると月明かりにベッドが照らされる。

 俺は枕元に置いてある腕時計を手に取り時間を確かめた。


 深夜1時。


 こいつはこの異世界に来てからも、ありがたい事に特に問題無く稼働し続けている。

 何気にこの異世界にも時計は存在しており、1日が24時間と元居た世界と同じ事から、時計の読み方も驚いた事に同じだ。

 

 流石にデジタル式の物は存在しない様だが、いわゆる針時計式で余程高級な物で無い限り秒針は備わっていないらしいが、短い針が1時間刻み、長い針が1分刻みと、全く同じだ。


 ただ『腕時計』という形式の物は無い様で、掛け時計かストラップ的な紐がついた懐中時計のような形だ。

 仕組みに関しては詳しくは確認していないが、単なる機械式では無く魔法石が原動力になっているのだとか。


 スマホの方は電源を切ったまま、この部屋に隠してある。


 ここクムリ村に来てからも、当然だが電波もGPSも入らないのは確認済みだ。

 この異世界にとって、明らかにオーバーテクノロジーであるスマホはトラブルを招きかねない原因になるだろうと判断したからだ。


 最初この家に来た時に、マリリとマリスにはスマホを見せた。

 2人共かなり驚いていたが、ちょっと触ってみたいという2人のリクエストに応えたところ、2人で自撮りをしてはしゃいでいたのがなんとも微笑ましかった。

 ああやって見てるとホント2人共、10代の女の子だなと思う。


 ただ隠しているだけなら盗難の恐れも懸念されるので、鍵付きの丈夫な箱に入れた上でマリリとマリスにそれぞれ施錠魔法を2重に掛けて貰った。

 これを解こうと思えばプラチナクラス以上のランクの魔法士ですら解除するのは難しいらしい。


 マリリもマリスもかなり残念がっていたが、仕方が無い。




 この異世界の夜は静かだ。

 ギルド周辺にある酒場は何件か開いているが、基本静かで屋外で騒ぐような輩も居ない。


 カーテンを全開にして窓を開けると夜風が気持ち良い。

 今日は綺麗な満月だ。

 

 少し小腹が空いたので、机の上の籠に盛ってある小振りなりんごを手に取り一口齧る。

 美味い。

 見た目もそうだが、味も正しくりんごそのものだ。


 「少し外の空気を吸いに行くか」


 誰に言うでもなく俺は呟き外着に着替えると、静かに部屋を出た。


 廊下はシンと静まり返っており、マリリもマリスもまだまだ眠っている様だ。

 余程、疲れていたのだろう。

 俺は2人を起こさない様、なるべく足音を立てない様に静かに1階へ降りる。


 「武器は・・・いらないか。村の中をちょっと散歩するだけだし。」


 玄関で履きなれた安全ブーツを履き外へ出ると、そっと扉の鍵を閉める。

 ファンタジーの世界だと外国の様に家の中でも靴を履いたままかと思っていたが、そこらへんはその家に寄りきりらしい。

 ここ俺達が住む家は、日本の様に玄関で靴を脱ぐ様になっている。

 日本人としてはやはりその方が落ち着くので、非常にありがたい。


 玄関ドアは鍵の形状は簡素ではあるが、一応施錠出来る様になっている。

 まるで宝箱の鍵の様な銅製のカギは、紐を通して首から下げているとまるでそういうデザインの首飾りの様で凄く可愛らしい。

 仕事の都合によっては別行動の日もあるので、俺もスペアの鍵を貰っているのだ。


 静まりかえった住宅街をゆっくりと歩く。

 夜光石による街路灯と月明かりのお蔭で、特に夜道に不自由を感じる事は無い。

 程なくして噴水のある中央広場に着く。


 昼間は分からないがこの噴水の中には夜光石が沈められていて、夜になると夜光石の淡い光がまるでイルミネーションの様に幻想的な雰囲気を醸し出している。


 俺は噴水の淵に腰を掛け、満天の星空を仰ぐ。

 日本じゃ相当田舎まで行かないと、ここまで澄んだ星空を見る事は出来ないだろう。




 目を閉じて夜の静寂を楽しんでいると、不意に声を掛けられた。

 俺のすぐ目の前には、ネコミミとふわふわシッポが特徴的な14歳の女の子が立っていた。

 この村の警備隊・獣人小隊長のメリル・アラザンだ。


 「やあ、メリル。おつかれさま。正門警備の帰り?」


 「そだよー、大地はこんな所で1人でどうしたの?」


 ザウルの所で剣技の教えを受けている時に偶にメリルも同席していたので、ちょこちょこ話す仲にはなっていた。

 最初は俺の方が年上ってのも有って「さん」付けで呼ばれていたが、今はマリスが呼ぶのと同じように名前だけで呼ばれる様になった。


 「ちょっと目が覚めちゃってね、気分転換に散歩だよ。」


 「ふーん、そっか。」


 そう言いながら、メリルが俺の横に腰を下ろす。

 雰囲気的には『ちょこん!』といった効果音が似合いそうだ。


 メリル達のような獣人は様々な種族があるらしく、その種族によって能力が異なるらしい。

 メリルは猫科に属し、スピード・反射神経・体の柔軟さに優れる。

 だが力に関しては普通の人間より少し強い程度との事だ。

 

 見た目も種族により傾向があり、メリルの様に見た目がほとんど人間・・・というか、まるでコスプレした人間の様な種族も居れば、リザードマン種族の様に2足歩行で知能も普通に良いが、見た目だけがワニそのものと言った感じの種族もいる。


 「ふにゃ!?大地、な、なにするのにゃ!?」


 「あぁごめん、シッポが余りにも可愛くてついつい」


 真横でゆらゆら揺れるシッポが余りにも可愛くて思わず掴んでみた。

 見た目通りモフモフでさわり心地良い。

 余りに気持ちいいので、両手で撫でてみた。


 「い、いつまで触ってるのにゃ・・・大地・・えっちにゃ。」


 「へ?あ、いや、そういうつもりじゃないんだけど、ついついごめん。」


 別にやましい気持ちなど無くなんとなく猫を撫でる感覚で撫でてみたのだが、ダメだったのか。

 猫科人にとってシッポ撫でるのはデリケートな事なのかも知れないと、少し反省。


 「ね、大地、まだ時間ある?」


 「ん?ああ、大丈夫だけど、どうした?」


 「ちょっとイイ所あるんだけど、一緒に行こうにゃ!」


 そういうとメリルは立ち上がり、俺の手を引っ張る。


 俺はメリルに手を引かれるまま、後をついて行った。


いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。

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