第44話 成る程ね。じゃぁその話、乗ってみるか!
馬車が治ったのなら長居は無用という事で、俺達と行商一向及びスコッパ達はそれぞれの馬車に分かれクムリ村へと向かっている。
修理が終わって出発前にも、例の魔法のカードを使いギルドで待機しているセリーには連絡済みだ。
その時の連絡には俺が預かった分のカードを使ってみた。
カードには二通りの使い方が有る。
まず1つはペン又はペンに類似した文字が書ける物で記入する方法。
極端な話、血文字でも可能らしい。
このカードにはラングコンバーションの魔法も併用されているそうなので、俺が日本語で記入しても自動翻訳されるらしい。
2つめの方法は発声による使用方法。
カードを手に持ち一部を額に当て、飛ばしたいメッセージを念じながらに声に発する事で出来る。
俺はどちらの方法を実際に試すかで迷ったが、今回は取り敢えず発声による方法を試した。
異世界であるこの世界で未だに普通に言葉が通じている謎はそのままだが、取り敢えず日本語で考え声に出した場合、このリモートメッセージカードはそれを認識できるのかという疑問が有った。
試した所、馬車の修理前に行った連絡の際に、マリリが使用した時と同様にカードが消滅した。
とりあえずは、正常に作用してくれたのだと思う。
残念ながらその審議は、ギルドに戻りセリーに確認するまで正しい結果は分からない。
クムリ村に向かう俺たちはまず、先頭に俺とマリリ・マリスが乗る馬車、2番目に行商達シャオが乗る馬車、最後尾となる3番目にスコッパ達の馬車と言う隊列を組んだ。
行商の馬車を真ん中に挟むことで、万が一前後から襲撃を食らっても初激はなんとかなるだろうと考えた。
更に念の為、行商達の馬車にはスコッパも乗り込んでもらっている。
故に3番目の馬車にはスコッパの部下2名のみが乗っている
一般的な街道はそこそこ横幅に余裕を持って設計されている。
勿論、場所によっては狭くなったり逆により広くなる所もあるが、平均的に日本の道路で言う所の3車線分程の幅が有る。
これはそこそこ大き目の馬車でも、余裕を持ってすれ違える様に考慮されているらしい。
インフラもそれなりに考えられている様だ。
「なぁ、マリリ、マリス、どう思う?シャオさんの提案。シャオさんの言う『仕事のパートナー』ってのがどれ程の規模の事を指しているのか今一つ想像出来ないが、特にデメリットは無い・・・というか良い話なんじゃ無いかと思うのだが。」
「そうですね・・・鍛冶職人と言ってもその幅は広いですが、全体的に需要に対して供給が追い付いていないと聞きますし、仕事の幅がとても広がると思いますよ。」
「僕も良いと思うよー。それに指名依頼の場合、成功報酬に指名代が上乗せされるから普通以来よりも報酬金が高くなるよ。だよね?おねーちゃん。」
「ええ、マリスの言う通りです。依頼者側のギルドへの支払額も当然その分高くは成るのですが、それで確実な成功と出来映えが有る程度見込めるなら釣り合うという風に聞いています。」
「成る程ね。じゃぁその話乗ってみるか。」
レープ商会は曽祖父の代から続き創業100年を超える老舗の商会で、シャオ代表が4代目に当たるそうだ。
老舗といっても商会規模としてはそれほど大きくは無いらしく、どちらかと言えば少数精鋭の経営方針らしい。
但し、業界内での顔の幅は広く、他の行商では用意できない希少なマジックアイテムでも入手が可能だとか。
他にもオーダーメイドの武具製作にも対応してくれ、その出来の良さが冒険者の中でも人気らしい。
国王からも気に入られているらしく、定期的に王城へも出入りしており、以前にマリリとマリスがシャオから冒険者護衛として指名依頼を受け一緒に王城へ行った事もあるそうだ。
前にマリリが持っていた、『真似して製作作って貰った』と言っていた、ステンレス製の水筒はその際に王城で見たものらしい。
俺はシャオからの提案を受ける事を決意した。
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