第40話 ちょっと邪魔くさいタイプかもしれない・・・
マリリが一度フィール・リアクションを展開し、周囲500メートルに敵影が無い事の確認が取れたので、行商達と一緒にいるマリスに合図を送る。
取りあえずの一安心が分かったので、俺は剣に付着したケルバウルフの血を振り払い鞘に納めた。
本来ならば剣の血しっかりと拭き取っておかないと後々に腐食の原因になるのだが、俺の鞘には魔法石が装飾されており、それに清浄効果の魔法をマリリが施してくれているので、肉片が大量に付着している等の余程の汚れでもない限り浄化してくれるのだ。
行商達の元に居るマリスは、負傷した冒険者に回復魔法を掛け治療を始めている。
俺とマリリも改めて周囲を見渡し肉眼で安全を確認しながらマリス達の元へ駆け寄ったが、どうやら即命に関わるような致命傷は無い様だった。
とは言え、傷は深くとても戦える状態で無いのは確かだ。
マリリとマリスは手慣れた感じで分担し、手際良く冒険者達の治療を済ませた。
さすが2人とも、医療魔法士としてもギルドに登録しているだけの事は有る。
ちなみ医療魔法士としてのランクはマリリが冒険者ランククと同じプラチナクラス、マリスはゴールドクラスらしい。
普段、肉弾戦を得意とするマリスも魔法士としてもかなりの使い手なのだが、やはりマリリの方がその上を行っている。
その分、肉弾戦的な戦闘はマリリよりもマリスの方が上なのだ。
「2人ともお疲れさま。」
「これで取りあえずは一安心ですね。」
「はー疲れたー。」
回復魔法による負傷した冒険者全員の治療が終わり、俺達3人は手ごろな岩に軽く腰を降ろす。
「この度は助けて頂きありがとうございました。冒険者として依頼を受けていながら依頼人を危険に晒してしまったばかりか、同業者の方にまでご迷惑をお掛けしてしまい情けない限りです。怪我の治療までして頂き、感謝の限りです。自分は今回依頼を受けました冒険者代表のスコッパ・カークと申します。」
スコッパ・カークと名乗るリーダー格の男は、そう言いながら深々と頭を下げた。
恐らく50歳手前といった感じのその男は、短髪に奇麗に整えられたちょび髭で、例えるならまるで英国紳士の様な印象だ。
リーダーであるスコッパに続き、後ろに横一列に並んだスコッパの仲間3名も合わせて深々と頭を下げた。
どちらかと言うと俺の勝手なイメージでは男性の冒険者はちょっと荒れた様なイメージが有ったが、こういう誠実な冒険者チームも居る事に少しの驚きと安心感を感じた。
そして先入観はいけないと反省。
「頭をお上げ下さい。困った時はお互い様ですよ。同じ冒険者同士、助け合いの精神が大切だと私は思いますから。あ、私は西明寺大地といいます。大地とお呼び下さい。」
「か、かたじけない・・・」
途端、スコッパとその仲間達、アルべとカチートは目を潤ませ手の甲で拭う。
なんかカチートに至っては、ハンカチの様な布で涙を拭いている。
「え?え?ど、どうしました?」
俺はその光景に驚き声をかけた。
マリリもマリスも同様に頭上にクエスチョンマークが浮かんでいるらしく、どうしたものかと困った表情をしている。
「いえ、あなた様方・・・大地様方のお心の優しさに我々、感極まってしまいまして。」
「へ?あ、あぁ、そ、そうですか・・・そんな当然の事ですし。」
すると、おんおんと声を上げて泣き出すスコッパ。
あぁ、これは泣き上戸というよりも強烈個性な人達だと少し呆れつつ、俺達3人はやれやれと言った感じで顔を合わせた。
ちょっと邪魔くさいタイプかもしれないが性格は悪い訳では無い様なので、異世界故に色んな人達が居るなと自分を納得させた。
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