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第22話 出発の朝

 「「「おはようございます!」」」


 俺達3人はまだ陽も登りきらぬ時間から朝食を済ませ、集合時間の10分前にこの村の正門前に到着した。

 正門を入って直ぐの所は、今回の俺達の様に待ち合わせ場所にする事がよくあるので、馬車や人が多少集まれるように開けている作りになっている。 

 今回の依頼の路工人の方4名は既に到着していて、交換用の新しい柵材や他に道工具類を積んだ2輪トレーラー付きの幌付き荷馬車も1台用意されていた。


 「「すみません、お待たせしてしまって。」」


 マリリと調度、声が重なる。


 「なーに俺達もさっき来た所だから気にすんな。俺は頭のドーザーだ、それよりも今日は宜しくな。」


 路工人達の中でもっとも恰幅が良く、頭にねじり鉢巻きをした50代後半位の男性が手を差し出した。

 俺は咄嗟に手を出し握手を交わす。


 「私は西明寺大地といいます。こちらはマリリ、もう一方がマリス。本日はどうぞ宜しくお願い致します。」


 異世界での初仕事とあってか力が入り、自然と社会人モードのスイッチがオンになってしまう。

 

 「みなさんお揃いの様ですね。」


 すると聞き覚えのある女性の声と共に荷馬車の影から1人現れた。


 「おはようございます、セリーさん。」 「おはよー、セリー。」


 「おはようございます、マリリさん、マリスさん、大地様も。どうですか準備の方は。」


 現れた女性はギルド受付係のセリーだった。

 ギルドカウンターで見た時と同じような白色のシャツの上から黒地のピッチリとしたジャケットを羽織り、その胸元と背中にはギルド職員で有る事を表すギルドの紋章が金の糸で大きく刺繍されている。

 また下はジャケットと同じく黒で纏められており、まるで女性用スーツでも着ているかのようだった。

 そして腰にはレイピアと呼ばれる細身の剣と、小物入れと思われるポーチを携えていた。 


 「おはようございます。お蔭さまで・・・って、ひょっとしてセリーさんも一緒に???」


 「はい。今回の案件もそうですが、路工人の方の仕事はその殆どが公共事業、又はそれに準ずるものとなります。その場合の依頼元は王都やギルド自体、街や村となり、報奨金もギルドを通してそれら依頼元から路工人の方々と、護衛を務める冒険者の方々それぞれに支払われます。」


 「ふむ、なるほど。」


 「そういった案件では手続きの関係上、多少の例外は有りますが、ギルド職員が確認者として同行する事が義務付けられています。そこで今回は私が確認者として同行の指示を受けたと言う事です。ちなみに今回の案件の依頼元は王都となります。」


 「そうでしたか。差し詰め例えるなら、セリーさんは工事元請の立会い者、俺達3人と路工人の方々はそれぞれ下請けという事になるのか。なるほど、ちゃんと考えられた仕組みだな。」


 「ええ、そういう事になりますね。」


 確かに、王都が地方のそういった公共事業にまで直接着手するとなると手間や費用もそれなりに掛るが、管理も大変になるな。

 ならギルドにある程度の期限を設けた上で『依頼』と言う形で発注を行う事で、無駄なコストがカットでき、更にはイレギュラーにも柔軟に対応が出来るってもんだな。

 おまけに経済を潤す事にも貢献できる・・・なかなかこの異世界、侮れないな。


 東の空には太陽が昇り始め、辺りが朝焼け色に染まる。


 「そろそろ明るくなって来ましたし、出発しましょうか!」


 マリリがきり出すとセリーが正門の監視担当者に合図を送り、正門がゆっくりと開いた。

 少し大きめの幌付きの荷馬車の中にセリー、ドーザー親方とその部下2名、そして俺とマリリが背後を警戒出来る様に後ろ側に乗り込む。

 馬の操舵はもう1名の路工人が行い、その横にマリスが座り前方及び側面の警戒を行う形を取った。

 柵材や道工具類は、幌車に連結された木製の2輪トレーラーに積まれている。


 俺達一行は村の正門を出て、目的地であるザラ山脈の森・・・俺がこの世界に転移させられた最初のあの森へ向かうのだった。


いつもお読み頂きありがとうございます。

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