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第20話 損して得取れ

 店の中には色々な剣や槍、マリリ達の家に飾ったあったような薙刀に良く似た武器のグレイブやら鎖鎌の様な武器、防具は軽微なアーマーからフルプレートメイルに盾類など、様々な物が所狭しと並べられている。

 見る限り誰も居ない様だったが、カウンター奥のドアが閉じられた部屋の方からガタガタと物音が聞こえていた。


 「ミトンさーん、こんにちわー!マリリとマリスです。」


 「おー、マリリちゃんにマリスちゃん、いらっしゃい。」


 そう言いながら奥の部屋のドアがゆっくりと開き、奥からその声の主が現れ、それと同時に俺の淡い期待は無残にも打ちのめされた。

 低く野太い声と共に現れたのは、いかにもガチムチと言う言葉がこれ以上に無い程しっくりと当てはまる、身長190センチは有ろうかスキンヘッドの屈強な爺さんが現れた。

 村長といいこの武具屋の店主といい、この世界のガチムチなおっさんにはスキンヘッドが流行っているのだろうか。

 名前との余りのギャップに俺が絶句していると、スキンヘッドの爺さん・ミトンが顎に手を当てながらマジマジと俺を見つめる。

 

 「はじめまして、西明寺大地です。よ、宜しくお願いします。」


 「ワシの名はミトン・ミント。この武具屋ミトンの店主じゃ、宜しくな。しかしまぁ、お主がマリリちゃんとマリスちゃんの彼氏か。なるほどのぉ。」


 「ちょ、ちょっと、ミトンさん!何言ってるんですか!?大地さんは、か、彼氏とかじゃ・・・はぅぅ」


 間髪入れずマリリがミトンにツッコミを入れるが、耳まで真っ赤にし両手で顔を隠して恥ずかしがる所が、なんとも可愛い過ぎる。

 萌えという物を体現するとしたら、正しくマリリそのものだろう。


 「僕は大地が彼氏でいいよー。」


 ギルドの時と同じ様に、そう言いながらマリスは俺の腕にしがみつき、コロコロとした笑顔で見上げている。

 そこまでハッキリと何度も言われたら、本当に期待をしてしまう。

 マリリとは対照的だが、これはこれで年下の後輩的な可愛さが堪らなく良い。

 まぁ後輩と言うには年が離れすぎているが、そこは異世界なので余り気にしなくて良いかと自分勝手にそう結論付けた。


 「ほっほ、仲のいい事で。大地よマリリちゃんとマリスちゃんを泣かせたらワシが許さんぞ。」


 「はい!幸せに・・・て、なんでそうなるんですか!」


 そんな漫才みたいなやり取りをしつつ、取り敢えずの初心者向け初期装備という事でミトンが武具のコーディネートをしてくれた。

 代金はマリリに立て替えて貰って、ギルドでの収入が安定しだしたらお世話になっている分の家賃も含めてマリリに返そうと考えていたのだが、2人の紹介であり駆け出し冒険者誕生の祝いだという事でミトンからのプレゼントとなった。

 最初は申し訳なく断ろうとしたが、ミトンの気遣いを無下にするのは失礼に値すると判断し言葉に甘える事にした。


 金属製の胸当てに肘から手首当たりまでの両腕のアーマー、下位魔法ならある程度防げるという膝丈ほどのマントを防具として頂いた。

 武器に関しては『まずは剣というものに慣れる事だな』というミトンの教えに従い、刃渡り80センチ程の両刃の剣を装備する事となった。

 極一般的な西洋風の剣だ。

 戦いを重ねていくうちに自分の戦闘スタイルや必要とする武器が出て来るだろうから、その時また改めて作ってくれるとの事だ。


 この魔法を防げるというマントはそこそこ貴重なマジックアイテムらしくそうそう入手が出来る物では無いとの事なのだが、ミトン曰く『稼げるようになったら、その時は武具の1つでも買ってくれりゃいいよ。若いのが変な気使うな。』との事だった。

 この気前の良さも、人気の秘訣の一つなんだろうなと妙に納得した。


 俗にいう『損して得取れ』というヤツだな。


 ただ足元だけは、元々から履いていた仕事用の安全ブーツのままだ。

 これに関してはミトンが興味津々で、これだけしっかりした作りでありながら柔軟性があり、外側は革製ながらも内側はクッション性の良い素材になっており、それらがここまで丁寧な縫製で仕上げられているというのは職人の技だと絶賛していた。

 実際の所、馴染みの商社から購入された、会社支給の至って普通の安全ブーツなんだが・・・。


 特にミトンが驚いていたのが、紐式ではなくマジックテープ式になっている所、靴底が厚いウレタンゴム製で衝撃を和らげると同時に滑り止めの溝加工が成されている所、そして爪先を落下物などから保護する為の樹脂芯が入っている所だ。

 どうにかこれを再現できないかと、首を捻っていた。


 『銃』についても、それに似たような武器が有るのかの確認を取りたかったのだが、マリスの事を考え今回は止めておいた。

 その時は、また改めて一人で来ようかと思う。

 

 その後、マリスが刃研ぎに出していた短刀をミトンから受け取り、少し他の店にも寄り色々と買い物と軽い昼食をを済ませ、俺達は再びギルドへ向かった。


いつも読んで下さり、ありがとうございます。

可能であればもう1話、今日中に投稿したいと思います。


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