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第18話 瓶底メガネのギルド受付嬢セリー

 村の中央の噴水広場を南へ下った直ぐの所、商業区のメインストリートにこの村のギルドが建てられている。

 ギルドは本来なら王都か大きな街にだけ存在し、小規模な街や村には本来ギルドは無いのだがやはりこの村だけは例外らしい。

 特にギルドには酒場やちょっとした武具の修理屋、治癒術師による小規模医療施設などが併設されているそうで、この村のギルドでもざっと600坪ほどの敷地面積は有りそうだ。


 ギルドに入って左手側が酒場、右手側が武具の修理屋と並んで治癒術師が常設されている医療場があり、入口のドアから真正面の奥がギルドの受付窓口となっている。

 ギルド内の酒場は朝から飲んだくれている冒険者達や、出発前の打ち合わせなんかを行うパーティーでそこそこ賑わっていた。

 俺達3人が真っ直ぐとギルドの受付窓口に向かっていると、酒場の方から手を振りながら近づいて来る一人の女性が居た。


 「やあ、マリリにマリスおはよう!」


 「ペティさん、おはようございます。」


 「おはよう、ペティ。」


 「へーえ、その人がマリリとマリスの噂の彼氏かい?」


 ペティと呼ばれたその女性は、腰をに手を当て少しニヤ着いた笑顔で俺の事をマジマジと眺めてきた。

 年齢は30前後と行ったところか、茶色を基調とした落ち着いたウェイトレス風の服装に白のフリフリが付いたエプロン、服と同系色の茶色い長い髪を後ろで一つに纏めてポニーテールにしている。

 俺よりは年下みたいだが、一見頼りになりそうなお姉さん風にも思える。


 「あー、初めまして。私は西明寺大地といいます。ちょっと訳あってマリリ達の所でお世話になってますが、別に彼氏と言う訳では・・・」


 「そ、そうですよ!ペティさん、何言ってるんですか!」


 マリリが顔を赤くしながら、慌てて続けた。


 「いやーだってよ、昨日マリリとマリスの2人に手を引かれながら、仲良さそうに通りを歩いていたのを見たって奴が何人も居たからさ。」


 「あ、あれは、その・・・」


 耳まで真っ赤にしながらモジモジと小声になるマリリの姿に、萌を感じられない男は居ないだろう。

 と、突然マリスが俺の左腕に抱きつき俺の顔を見上げウインクをする。


 「僕は大地が彼氏でも良いけどね!」


 それを見たマリリが頬を膨らませながら、俺の右腕の裾をきゅっと引っ張った。

 両手に花とは正しくこの事だと思いながらも、どうしたものかとペティに少し助けを求める様に視線を送ると、ペティはやれやれといった感じで呆れ混じりにため息を着いた。


 「朝からお熱いことで。さて、そろそろアタイは仕事に戻るよ。また後でな。」


 そう言うとペティは軽く手を振り酒場のカウンターの方へ戻って行った。

 このまま暫くマリリとマリスに掴まれたままで居たい気持ちもあるが、とりあえずギルド窓口へ向かうべく2人を促し向かった。


 「おはようございます、マリリさんマリスさん。その方が村長様のご紹介の大地様ですね。」


 窓口に着くと係の人と思われる女性が、慣れた感じの丁寧な口調で繰り出した。

 窓口といってもよく有るチケット売り場的な仕切りみたいなものが有るわけではなく、バーカウンターの様な作りになっていて係の人との距離は近い。

 まるで牛乳瓶の底の様なまん丸いメガネを掛けたショートボブの女性は、白いシャツのボタンを襟元まできっちりと締め、いかにも真面目といった印象だ。

 

 「おはよー、セリー。」


 「おはよう、セリーさん。こちらがその西明寺大地さんです。私達と同じ冒険者登録でお願いします。」


 「承りました。では、こちらにご記入を。」


 そう言いながらメガネの受付嬢、セリーがカウンター後ろの棚にある引き出しから1枚の紙を取り出しカウンターの上に置いた。

 記入すべく傍らのペンを取り紙に手を掛けた所で思わず手が止まる。


 字が読めない・・・


 何気に言葉が普通に通じてしまっていた為に油断してしまっていたのだが、そういえば文字に関しては読めない事をすっかり失念していた。

 用紙の雰囲気と会話の流れからして恐らくはギルドへの登録申込書だとは思うが、いくつか有る記入項目に記載された文字は勿論だが日本語でなければ英語でも無く、なんというか独特の文字でどの項目が何を記入するのか全く検討が付かなかった。

 仮に感で記入するにしても、そもそもこっちの世界の人も日本語が読めないのは、例の薙刀に漢字で刻まれた文字がマリリ達に読めなかったので確認済みだ。

 

 「ここに大地さんの名前を記入しまして、こちらに性別と、現在の年齢ですね。」


 「ここは住所の欄だから、お姉ちゃんに書いてもらうといいよ。」


 どうやら俺が記入に困っているのを察知して、マリリとマリスが俺の両脇からひょいと顔を覗き込みサポートに入ってくれた。


 「お、おお、ありがとう。助かるよ。」


 2人のアドバイス通りに早速記入しようとペンを紙に当てたところで、今度は受付係のセリーから補足が入る。


 「大地さまの出身国の文字で記入して頂いて構いませんよ。ギルドの申込書には『ラング・コンバーション』の魔法が施されていますので、一文を書き終えると自動でこの世界の標準言語に書き換えられます。」


 「翻訳機能付きかー、それは凄いな。」


 「全ての項目に記入が終わりましたら、こちらの欄にこの朱肉をで拇印をお願い致します。」


 そう言いながらセリーは、カウンターの内から金の模様が施された朱肉の入った箱を取り出した。

 セリーの説明に寄ると、ギルド協会専用の特殊魔法が施されたこの朱肉で拇印を押すことにより、申込用紙に記入した本人として認識され申込用紙が有効になるのだとか。

 まるで会社の書類を思い出してしまう・・・流石に拇印と判子の違いは有るけれど。

 とはいえ『魔法』という不思議パワーが施されている事で、偽造や替え玉登録なんかを防ぐことが出来るらしくセキュリティー面では優れているなと少し関心した。


 3人に教えられるままにまずは名前を記入し終えると、文字にモザイクが掛ったように少し浮かび上がりこの世界の標準言語とやらに変化し再び紙に定着した。

 残りの項目を記入し終え最後に住所の欄はマリリに記入して貰うと、一旦セリーが申込み用紙を一通り確認しする。

 特に記載ミスも無いとの事で、先ほどセリーが取りだした特殊魔法が施された朱肉を右手の親指につけしっかりと押した。


 「では、お願い致します。」


 「承りました。このまま少々お待ち下さい。」


 セリーは改めてもう一度記入内容を確認すると、ギルド職員用の記入欄にサインを記入し、用紙を持ってカウンター奥の扉の中へ入った。

 2分も待たない内にセリーが手に免許証程の大きさの1枚のカードを盆の様な物に乗せ、再び俺たちの待つカウンターへ戻って来る。


 セリーの説明によると、ギルドに登録する事でギルド登録員の証しであるこのカード『ギルド員証』が発行され、これが身分証明書などの代わりにもなるとの事だ。

 またこのギルド員証を提示する事で、他の国のギルドでも特に制約など無く仕事の依頼を受ける事が出来、それに対しての報奨金も遜色なく支払われるらしい。

 逆にいうと、ギルドに登録しない限りギルドの仕事を請負う事は出来ないと言う事だ。


 またギルドには登録者専用の保険も有り、掛け金を支払う事で一定の補償を受ける事が出来るらしい。

 特に理由が無い限りは基本的に加入しといて損は無いらしく、入会金はマリリに支払って貰う形で入会した。

 それによりA4程の大きさの紙数枚に渡りビッシリと書かれた『保険約款』を受け取ったのだが、これはまた夜にでもマリリに読んでもらう事にした。

 それにしても魔法が当たり前なファンタジー異世界の割に、結構普通に文明している所がなんとも不思議な感じだが、それなりに人類の文明が発展していけば自然と同じような道をたどるのかも知れないなと1人妙に納得した。


 「登録も済みましたし手始めにと行きたいところですが、まずは大地さんの装備を整えないとですね。まずは私達の馴染みの武具屋さんに行きしょうか。」


 「そだねー、僕のこの前手入れに出した短刀も仕上がってるだろうし。じゃ、セリーまた後でね!」


 俺達はセリーに挨拶をし、ギルドを後にした。


今日はお仕事がお休みなので、変則で早朝に投稿させて頂きました。

日中ちょっと予定がありまして、次は夜中か深夜にアップ出来ると思います。

宜しくお願い致します。

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