第16話 全く、これだから異世界は最高だぜ!
今回は少し骨休め的に、コミカルな回を2000字程度に纏めてみました。
マリスちゃんも年頃の女の子ですから・・・
異世界で迎える初めての朝は想像していたよりも遥かに平和で、心安らぐ落ち着いた朝・・・では無かった。
「だいちー!起っきろー!!」
「ぐふぁ!・・・」
目覚めと同時に、いや正しくはマリスのフライングボディアタックにより異世界で初めての朝を迎えた。
あろう事か、朝に起こる生理現象により固みを帯びた男性のデリケートな部分に見事なまでにマリスの膝がジャストミートし、掛布団の上からだったとは言え悶絶が止まらない状態だ。
「マ、マリス・・・さん、こ、この起こし方は・・ご、ご勘弁・・を」
布団の中で急所を押え横向きながら、必死に訴えた。
「にゃはは!そんなに効いた?ごめんごめんお姉ちゃん程じゃないけど、僕もヒール出来るから見せて。」
けらけら笑いながら、俺を跨いで仁王立ちしたマリスに布団を一気に捲り取られた。
「あ、ちょっ!」
止める間もなく布団をはぎ取られた俺は、まだ痛む急所を押えたままのなかなか情けない恰好を晒されてしまった。
「いやー、ごめん、ごめ・・・」
一瞬気にしていない様にも思えたマリスだが、どうやら状況を察したらしく両手で布団を持ち仁王立ちのまま固まった。
その視線は真っ直ぐと俺の痛恨の一撃を喰らった場所を見つめている。
「あ、いやこれは、不可抗力・・・」
むしろ被害者か。
悶絶のまま答えると、マリスははっと我に返り俺と目が合った途端一気に耳まで真っ赤にし、手に持った布団で自分の顔を隠しぺたんと尻餅を着いた。
なんとか痛みが和らいできた俺は態勢を整え、布団で顔を隠したマリスに向かい胡坐座りでそのままベッドの上に座った。
なんと声を掛けたら良いものやらと考えていると、マリスがゆっくりと布団を降し、恥ずかしそうに俺を見つめるその姿は、まるで恥じらう年頃の女の子のそれだ。
マリスは普段マリリとは対照的に活発で一人称も『僕』なのでついつい可愛い弟みたいなイメージを持ってしまうが、よく見ると、いやよく見ないまでもマリリと姉妹だけあって、相当な美少女だ。
もし日本で街中を歩いていれば、普通の男ならばほってはおけないだろう。
ナンパとスカウトの嵐に見舞われる事、間違いなしだ。
そんなまだ14歳の女の子と、朝っぱらからベッドの上で向かい合っている。
陽は登っているがカーテンを閉めているので部屋の中はまだ少し薄暗く、隙間から入る僅かな陽の光がマリスの鮮やかな金色の髪を照らし、マリスが少し動くとその光が胸元を照らす。
昨日来ていた冒険者的な服装とは違いネグリジェの様な寝間着姿のマリスは、アラフォーのおっさんには眩しすぎる物がある。
こんなシチュエーションに冷静を保っていられる自信など皆無に等しく、色々と反応してしまいそうになる。
「あ、あの・・・だいち・・ご、ごめんね。」
耳まで真っ赤にしたマリスが俺と目が合った途端に恥ずかしそうに目線を落とすが、落とした先がマリス赤面のその原因物らしく余計にわたわたしている。
普段は活発で元気を絵に描いたような男の子勝りな性格だが、こんな可愛い一面を見せられてはコロっと行ってしまいそうだ。
これが俗に言うギャップ萌えってヤツか。
「「あの!」」
「ん、マリスからどうぞ。」
二人の声が重なり、俺はマリスに先を譲った。
「ぼ、僕のせいで、い、痛くしちゃって・・と、とにかくヒールかけるね。」
もう限界と言わんばかりの震え声でその原因物に小刻みに震える手をかざし、ヒールを唱える。
顔を見上げたかと思うと目が合った途端、恥ずかしそうに俯くその瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる様に思える。
マリスの手とそれが淡い緑色の光に包まれ、やがて痛みが消えていく。
この光景、冷静に考え・・・なくてもかなりヤバいな。
痛みは消えたがまだマリスのヒールは続いているのだが、俺はある異変を感じ取っていた。
ヒールによる効果なのか、それとも14歳の僕っ娘美少女がそれに手をかざしている事を意識してなのか、寝起きだという事もあって元気になってきてしまった。
「マ、マリス、もう大丈夫、治ったから、ありがとう。」
俺はマリスの手を両手でそっと握り、ゆっくりとそれから遠ざけた。
「え、あ、うん。もういいの?」
潤んだ瞳でそんな事を言われたら理性なんて一瞬で吹っ飛びそうになるが、それはきっとバッドエンド直行だと己に言い聞かせ必死に欲望を掻き消した。
俺はもう一度マリスに礼を言った後、すぐ着替えてから食卓に向うからと言って先にマリスに食卓へ向かわせた。
「ふーっ、ヤバかった・・実にヤバかった。」
寸での所で、元気の先に有る次のステージへ足を踏み入れてしまう前に抑える事に成功した俺は、ゆっくりと呼吸を整えつつ貸してもらった寝間着・・といっても簡素な布の服だが・・を脱ぎ自分の服に着替えた。
「全く、これだから異世界は最高だぜ!」
思わず心の声が漏れてしまう。
さっきまでの事を思い出し再びそれが熱くなりかけた所で、なんとか素数を数えて取り敢えず堪えた。
「あー、ダメだダメだ、大地!しっかりしろ!」
俺は両手で頬を叩き喝をいれると、部屋の扉を開け食卓へと向かった。
本日2話目の投稿です。
お読み頂きありがとうございます。