どうやらこの屋敷、キャラの濃さが尋常じゃないらしい
お屋敷1日目です。
まだ瞼が重い。目を開けるのもしんどい。
寝返りを打ちながら、今日見た夢を思い出していた。
聖女として召喚されるって・・・。しかも私の方は同じ聖女でも求められている能力ではないとか。
夢なのになんで不遇なんだろうか。
いつも寝ているベッドよりもふかふかの感触に疑問に思い、重すぎる瞼を開けると、
あの日寝たそのままの天井とそのままのふかふかのベッド。
夢の続き、なんて現実逃避が出来るわけもなく、否が応でもこれが現実であると突きつけられた気分だった。
一度目が覚めてしまったら寝れない体質な私は二度寝することもできずに起き上がる。
まだぼんやりとする視界の中、薄暗い部屋、まだ日が落ちている状態であることが分かった。
何をどう解決するもわからないまま、とりあえずこの暗い部屋を明るくしようと照明を探す。
「いかがなさいましたでしょうか聖女様。」
「うわっ!!」
急に横から声が掛かって驚いて後ずさる。
そこには無表情でメイド服を着た私と同じくらいの見た目をした女の子がいた。
赤い髪色と赤い目。ちょっと変わった髪色をしているけれど、しっかり者な美人さんな感じ。
私は驚きからか綺麗な人を見たからなのか、ドキドキと脈を打つ胸に手を当て落ち着かせる。
「えっと、目が覚めてしまったので、ちょっと飲み物でもと、思いまして。」
私はきちんと笑えているだろうか、ひくひくと口角が引きつっているのが自分でもわかっていながら、彼女に笑いかけた。
「かしこまりました。すぐにお飲み物をご用意させていただきます。何分、聖女様に初めてお仕えしますので、恐れ入りますが、紅茶などは飲めますでしょうか。」
私の態度は大丈夫だった?不安に思いながらもメイドな彼女は30度程度きっちり腰から曲げて頭を下げ、再度私に問いかけた。
「んー、紅茶は飲めます。余り甘いものは好みません。できればミルクを入れていただくと嬉しいかなぁ。なんて。」
未だ表情の読めないメイドさんとどうにか会話をしようと努力した。
メイドさんは「かしこまりました。」とだけ言うと、一瞬で部屋の明かりを灯して部屋を出て行った。
聖女とはいえ、嫌われているのかな。
メイドさんの淡々とした対応に、なんだか急に不安になってくる。
歓迎されていない気がしているからだ。
冷たい風がメイドさんが出ていった扉からふわりと流れてきた。
そう思えば気が沈み、鬱々としてながら私はさっきまで横になっていたベッドに腰掛けた。
ぼうっと明かりのついた天井を見上げていると、メイドさんが帰ってきた。
「大変お待たせいたしました。」
そう言って暖かな紅茶を入れてくれた。
時間の感覚もわからない私だが、少しお腹がすいているのだけわかっていた。
小さなお腹の音がメイドさんにも聞こえるほどの音で鳴ると、メイドさんは白いお粥を差し出した。
金髪とかいるし、パンが主食だと思っていたけれど、ここは米が主食なのかな?
出されることはないと思っていたから、ちょっと嬉しくなった。
「聖女様は、よくこの穀物を米と言って大層お気に入りでしたので、こちらに来ていただいた日にこの穀物を召し上がっていただいております。
目が覚めたばかりで固形では少々食べずらいかと思い、柔らかくまでにた粥を作って参りました。冷めぬうちにどうぞお召し上がりください。」
どうやらこの国の、ではなく聖女様の主食だったらしい。
スープが入るであろう平なお皿に、クリーミーな香りがする。
紅茶を一口んでお粥を受け取ると、スプーンで一口食べた。
その瞬間に衝撃走る。
ま、ま、まずい・・・・。
米を何か別の物と勘違いして作られたみたいに甘い。
甘くてクリームの濃厚さもあり、あまりにも米とミスマッチしていた。
けれど、ここで残しては作ってくれた人に申し訳がない。
給仕台に置かれた紅茶と甘いお粥を交互に飲みながら完食した。
「ありがとうございます。まさかこの世界で私たちの主食が食べれるとは思いませんでした。」
込み上げてくる吐き気を何とか抑え、メイドさんに笑いかけた。
「・・・少々味に問題があったようでございますね。申し訳ございませんでした。」
メイドさんは再び私に頭を下げる。
「いえいえ、お腹すいていたのにわざわざ用意していただけただけで充分ありがたかったですし!
多分夜も遅いですよね、それなのに来ていただけて助かりました。
・・・・私は今まで仕えられるなんてこともなかったので、もし仕えるのが嫌なら大丈夫ですからね。」
ずっと無表情なメイドさん。私に仕えるのが嫌なら離れることを打診した。
「・・・いえ。私はただお仕えするだけです。そこに余計な感情は不要ですので。聖女様が私を不要だと思うのであれば、致し方ありませんが。」
ずっと硬いまま、メイドさんは機械的に答えた。
まさか、これが彼女の普通なの?
気にし続けていたら私が気をすり減らすだけだ。もう彼女はこれが普通とします、
これが彼女の個性です!!
そう思うものの、そう簡単には割り切れない。
「貴方に対し不満はありません、えっと、」
「ジュードです。」
「ジュードさん。今後ともよろしくお願いします。」
「はい。」
これで少しは仲良くできた、訳でもないが、さっきの気まずさはなくなっていた。
にしてもジュードなんて、男の子っぽい名前だなぁ。
「ジュードさんってなんだか格好いい名前ですね。」
私は彼女をほめるつもりで話しかけた。
「そうでしょうか。男につける名前としてはありきたりな気がしますが。」
何か問題でも?と言いたげな顔で首を傾げた。
「まぁ確かに男の子には、・・・・え?男??」
まさかね。こんな美人で声も・・・・言われてみれば女の子よりかは少し低いくらいでそんな男の子だなんて、まさかね?
男の娘と書いておとこのこと読むみたいな、そんなわけ、
「はい。一応騎士をやっております。」
このメイド、ただのメイドじゃなく騎士でしかも男の人だった。
「・・・言われてみれば確かに格好いいですもんね。うん。見惚れてしまうほどに、」
言われてみないと、男だと分からない。それくらいこの人の綺麗さは尋常じゃない。髪がサラサラとボブカットで切り揃えられている髪。
そしてスカートが似合いすぎている。出来る事なら騎士としてちゃんとした姿も見てみたい。
「・・・おほめ頂きありがとうございます。聖女様も大変美しくてらっしゃいます。申し訳ございません。混乱させるつもりはなかったのですが、今手が空いているのは私しかおらず、男が女性の部屋に入るのもどうかと思い、このような格好で入らせていただきました。」
ジュードさんは頭をまた下げた。なんかずっと頭を下げさせている。申し訳がない。
「お気遣いありがとうございますジュードさん。もしまた手が空いてる人が居なくてその格好をしなければならないとしても、私は気にしませんので、騎士の格好で大丈夫です。」
好きでもないのに女装してくるのはつらいだろう。そう思っていたのだけど、
「いえ、この格好は趣味です。昼間であれば仕方なく騎士の格好をせねばなりませんが、こういう急な対応にはこの格好が出来ますので。お気遣いなく。」
まさかの好き好んでやっていたパターンだった。
「・・・・もしジュードさんが嫌じゃないなら、昼もこの格好でいてください。聖女である私がそうお願いしたと言えば、向こうも無下にはできないでしょうし。」
騎士と言えば、勇ましい男性がなるイメージだった。恐らくそれはどこも変わらない、強さの象徴でもあるからだ。
ジュードさんは初めて表情を崩し、驚きを見せた。
「・・・・よろしいので?」
念を押すように確認するジュードさんに私はこくりと一度頷いた。
「聖女様が仰るのであればそのように。・・・もう一つ言わせていただければ、コレも趣味です。」
さりげなくまんまのメイドを希望してきた。
「で、ではジュードさんが今後近辺警護と給仕。メインは警護になりますが、普段から給仕として動いてください。こうなれば、なんでも聖女の名で通します。」
「御意に。」
ジュードさんはそういうと、紅茶やお粥の皿を下げ部屋を後にした。
男性のメイド、・・・メイド?ができました。
ちょっとだけ驚きで疲れたけれど、まだ眠気はこない。
ちょっと本でも読んで時間をつぶすのもいいかな。
居なくなったばかりのジュードさんを再召喚するのは忍びないけれど、ずっとぼうっとしてるのも暇すぎて疲れてしまう。
私はベッドから立ち上がると、入り口のドアまで歩いて行った。
扉に手を掛けると、扉越しから声が聞こえた。
「何か御用でしょうか。」
ドアノブに手を掛けただけで動かしてもいないのにジュードさんの声が聞こえてきた。
「・・・・少し本を読みたいのです。内容としては癒しの光についての本、それからそのほかに私に使えそうな本とかいくつか持ってきてくれると嬉しいです。」
扉越しにそういうと、
「かしこまりました。」
と声が聞こえた。いなくなった感じはしない。足音、物音一つしない。
そんなすぐには戻ってこないだろうと思い、ベッドから少し離れた所にある机と椅子に向かう。
その椅子に座ってジュードさんが戻ってくるのを待つ。
彼が戻ってくるのには時間はかからなかった。まるでこうなることを予測して用意したんじゃないかと思うくらいの速さだ。
失礼しますと再度入ったときには。両手にジュードさんが見えなくなるほど高く積み上げられた無数の本があった。
その本を足で器用に持ってきた給仕台に乗せ、コロコロと押しながら持ってきた。
最初から乗っけて持ってくるという選択肢はなかったのかな。
ジュードさんは私の近くまで本を持ってくると、一番上に乗っけてある本を手に取って私に差し出した。
「こちらが癒しの魔法の書です。後は聖女様が使えそうな魔法もいくつかお持ちしました。こちらの本は全て国家機密と言っても過言ではない貴重な資料ですので、私の監視下でお読みいただく必要がございます。
その点予めご了承ください。」
そんな重要な本を使えない聖女様に持ってくるのもどうかと思うのだけれど!それ以前にその本の量は一体なんだ!!国家機密!?そんなモノ気楽に読めるかい!!何基準で持ってきてるのこの人!!
「か、監視はべつにいいのですが、何故そんな重要なものをこちらに・・・?寝れないときに読むものではないと思うのですが・・・。」
ずっしりと重みのある本をしっかりと落とさないように抱きしめる。
「寝れないときには難しい本を読めば寝れると聞いております。この国で眠った方がマシだと思えるほど難しい本はこれらのようなものしかありませんでした。」
高く積みあがった本を見上げ、ジュードさんは不思議そうにまた首を傾げた。
一体どこ情報なのそれ!!機密とされている本を寝るための道具に使うなんてどこの勇者よ!!
「国王様は常にそのようにしておりました。」
まさかの国王様か!!ちょっと!!何でも信じる様な純粋な子にそんなこと教えればそりゃこんな本持ってくるよね!!
でも機密とされるくらい重要なら、癒しの光、ジュードさんは魔法って言っていたけれど、それの使い方がわかるってことだよね。
沸々と言葉にできない不満が込み上げてきたが、ジュードさんは悪く無い。悪いのはあの爽やかに笑っている国王様だ。
そう言い聞かせて小さく息を吐くと、
「もし何か飲みたくなった時はまた紅茶を入れてくれますか?」
それしか言えず、私は抱きしめている本を机の上に置くと1ページ捲っては読み、1ページ捲っては読み始めた。
結構の厚みがあったので、読み終えるのには時間が掛かったし、十分な読みごたえがあった。
私は小説よりも、専門書などを読むほうが好きで、時たま描写される「まるで天から授かった奇跡の様に」などの表現を見つけては、どうしても一度脳が停止してしまった。
けれど、癒しの魔法についてはなんとなくだけど理解できた。
癒しの魔法、簡単に言えば、怪我などを元の状態に戻す事ができる。もっと言えば、疲労感なども改善でき、時には不治の病すら治せるほどの力があるらしい。
魔法の凄さに感動を覚えたころには、魔法に対しての興味が出始めていた。
一つ読み終えるごとにそっと置かれる本。
そしてその時に毎回出される暖かな紅茶。それを一口飲んでまた読み出すを繰り返していくうちに、4つの本を読み終えていた。
癒しの魔法の書ともう一人が持つとされている浄化の魔法の書、それから水と火の魔法の書。
癒しの魔法を何となく理解していたおかげで他の3つの書を読み終えるのにはそう時間はかからなかった。
けれど4冊も読めば、暗かった部屋が徐々に明るさを取り戻し、気が付けば日の光が窓から差し込んでいた。
「聖女様ぁ~!!もぉあれからずぅっと本読んでいたんですかぁ??聖女様ってば真面目なのね!!」
急に横から声が掛かってきた。
ジュードさんとは打って変わって、とてもハイテンションな人が来たなと声のする方を見ると、
ジュードさんがいた。
正式には騎士姿のジュードさんだ。
「・・・・誰ですか?」
あんな溌溂とした話し方、ジュードさんはしない!!そんな可愛らしいしぐさでこちらを見ない!!
初対面でのそのテンションに引いていると、ジュードさんもどきは驚いた後、頬を染めて照れた。
「やだ、もうバレてしまったの?やだつまんないのー。せぇーっかくジュードが騎士の衣装貸してくれたのにぃー。もう騎士ごっこは終わりかあ。
ドーモ、ジュードのお姉さんこと!!リカルドちゃんでっす!!本来はメイドとしてこのお屋敷にお仕えするつもりでした!!
でもでもぉ、昨日騎士の試験を無事クリア~できなかった僕は!!ジュードの目を盗んで騎士衣装を手に入れたのでした!!どーお??僕って今格好いい??」
必要最低限しか話さないジュードさんとの差が凄すぎて話が入ってこない。
「き、騎士の格好が好きなのであれば、それで大丈夫ですよ?じ、ジュードさんもメイドとして勤めるようお願いしてますし。」
とりあえずジュードさん同様好きにしてくれと伝える。もう驚かないよ。騎士がメイドでメイドが騎士でも。
「聖女様って変わってますねぇ。普通は世間体を気にして許さないと思ったのですが。でもでもそれくらい自由の方が僕は好き!!誠心誠意!!僕とジュードは聖女様にお仕えするのです!!聖女様お名前なぁに?いてっ!!」
ぐいぐい来る彼女?彼?を止めたのは、メイド服のジュードさんでした。
「メイド風情が聖女様に何を馴れ馴れしく話しかけているのだ馬鹿者。そんなんだから騎士になれんのだ。
いくら剣術が俺より出来ていたとて、その軟派な態度では受からん。
・・・我が身内が失礼をしました。この者には言って聞かせますのでお許しください。」
殴られた頭を擦りながらぺろりと舌を出すリカルドさんに冷たい眼差しで見ているジュードさん。
私は笑うしかなかった。
「聖女様、朝食の用意ができてございます。ご案内させていただきますのでまずはこちらにお着換えください。」
そう言ってジュードさんは私の服に手を掛けた。
「ストップストップ!!流石に着替えは自分でできます!!」
私は慌ててジュードさんの手を払った。不思議そうに首をかしげているけれど、ジュードさん男だよね!?格好が好きなだけで、男の子だよね!!
そんな私の心境を察したのか、リカルドさんは人差し指を立ててノンノン、とジュードさんとの間に入る。
「いくらジュードがメイドでも、君は男の子だろう?嫁入り前の女の子の肌を見るなんて、失礼にもほどがあるよん。
ここはメイドもできるナイトに任せて!着替え終わったらそのまま行くから、扉の前で待っててよジュード。
・・・・ほいじゃ聖女様!お着換えしましょうねぇ~!!」
私が着るであろうフリフリのドレスを持ってクルクルと回ってジュードさんが部屋を出るのを見てから私の服に手を掛けた。
女の子ならいいか。なんて思いながらも、服くらいはいくらなんでも自分で着れる慌てて拒否しようとしたが、
「聖女様、これはメイドに与えらえた仕事の一つです。いくら聖女様にお立場があっても、それを拒むということは、私たちをお気に召さなかった、と言っているようなもの。
ここで自分で着られては、僕たちはお役御免になってしまいます。」
と言われてしまったので、私は成すがままに女の子に服を脱がされ、綺麗にドレスを着せられました。
ジュードさんと顔が似すぎているのも相まって、とても恥ずかしい思いをしました。
そして私は思い知ることになる。まだまだこの屋敷、キャラの濃さは今始まったばかりなのだということを・・・・!!
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
連載初日から感想をいただけて、それを励みに今パソコンに向かっているところです。
少しでも楽しみに思っていただけるのなら、頑張って更新していきたいと思っておりますので、
今後もよろしくお願いします。




