間章 王国宰相ヌカリヤの視点
間章 とつく場合その次にくる人名の方の視点で話を書いております。
ところどころわかりにくい描写があると思いますが、ご容赦くださいませませ。
間章 王国宰相ヌカリヤの視点
「あんたたちの命を見逃してあげるから、私たちのことはこのまま放っておきなさい」
その言葉を聞いたとき、私はいま、この女はなんといったのか咄嗟に理解できなかった。
ルロー歴158年 キンダー王国にて王が亡くなられた。先代の王の名はリオルといった。
リオル様は王として、なにより貴族として不適であった。
病弱であり、戦場には数えるほどしか出たことがない。それだけでなく無駄に知識をひけらかし平民の暮らしの改善に重きを置き我々貴族を蔑ろにした。あまつさえどこの馬の骨ともわからぬ女を娶り、我が子を王妃にと推薦していた当時の貴族達はひどく恥をかかされたと怒りをあらわにしていた。
もとより先々代が急死したのをうけ、たまたま王位継承順が高かったために即位したリオル様に不満を持っていた者も多く、それが今回の件で爆発し革命へ至ったのは当然といえた。
「しかし兄上も愚かなものよ。民のために民のためにと様々な国策を行ったがどれもまっとうに実らなかった。それどころか民はそれを理解せず、自分たちの暮らしがよくならないのは王の治世がが悪いからだ、などど抜かしおる。所詮民などその程度の理解しかできんのだ」
リオル様の弟にして第2位の継承権を持つレオルド様がおっしゃられた。
「レオルド様もよくもまあおっしゃられる。それらの政策をことごとく圧力をかけて妨害し、民に噂としてながしたのはあなたではないですか」
「ふん、そもそも民なんぞいくらでも勝手に増えていくものだ。民の生活水準の向上、馬鹿らしい。そんなことに金をつぎ込むくらいなら、他国に攻め入るための軍備に回すのが正しい使い道だろうに」
私の言葉にレオルド様はそのように返された。もともと兄にあたるリオル様と比べ武勇に優れたレオルド様は、特に軍部から支持が圧倒的に高く、本来であればレオルド様の方が王に向いているという意見が多かった。そのためリオル様の遺言は決して受け入れられるものではなかったはずである。
「まあ確かにそうでございますな。あの平民女の戯れ言をそのまま信じて実行した、というところが、実際のところでしょうが」
「そうだ、ところであの平民女、居場所はわかったのか?」
「はい、どうやらこの先の謁見の間に篭城している用でございます。」
「ふん、ことごとく王家を馬鹿にしおる。俺が今後座る予定の王座があやつの血で汚されるのは見るに耐えん。ヌカリヤ、疾く制圧せよ」
「御意にございます、レオルド様、いえ陛下」
そういって私はレオルド様に一礼して、兵を伴って謁見の間へと急ぎ足を進めた。
「・・・平民が生んだ子風情がこの国の王になる、俺を差し置いて・・・許されてなるものか」
レオルド様のつぶやきを聞きながら・・・。
リオル様と妃の間には12歳になる子供が一人いる。リオル様がなくなる間際、その子供に王位を継がせることを家臣に告げた。それを聞いたレオルド様は激怒した。
そして不満を抱く他の家臣達をまとめあげ、革命をおこすこととした。実際に今までリオル様の政策のせいで煮え湯を飲まされてきた貴族も多く、レオルド様に組するものは軍部以外からも多数集まり、実際にことを起こしたのは今日の昼過ぎ、そこからは瞬く間にリオル様の派閥である者たちを拘束し、すでに9割方計画は遂行したといえる。あとは王妃と王子を捕らえれば革命は完成する。
学生時代よりレオルド様にお仕えしてきた私に取って、革命がなりレオルド様が王位に就くことは念願でもある。頑丈さだけが取り柄で戦のセンスのない私は何度もレオルド様にご迷惑をおかけしてきた。幸いにも政治に才能があった私は、剣を書に持ち替えてレオルド様を支えるべく研鑽を積んできた。そしてようやく若くして宰相に地位につくことができた。そして邪魔者が今日消え、晴れてレオルド様の時代がくることに期待を膨らませていた。
謁見の間の前についた私は扉の前に立つ将軍へと声をかけた。
「アーカンダー将軍、首尾はどうだ」
「これは宰相殿、ご足労お掛け致します」
「挨拶はよい。それよりもあの2人は間違いなくこの中にいるのだな?」
「ええ、この中に逃げ込むのを部下が確認しております。扉は残念ながら中から鍵がかけられており、外からの開錠ができぬよう、細工が施されております」
「そうか、では扉を破るよう部下に指示せよ」
「すでに指示し準備は終了しております。あとはレオルド様の命令があればすぐにでも扉を破り制圧してご覧に入れましょう」
「そうか、レオルド様は疾く制圧せよと仰せだ。将軍速やかに謁見の間に入り奴らを拘束せよ」
「承知しました」
そういって将軍は部下に指示を出し、扉の前には魔術兵士が並び詠唱を開始した。
「「「ファイヤーボール」」」
複数の声とともに詠唱を完成させる言葉が発せられ、人の頭ほどある複数の火球が扉へ放たれた。
扉に火球がぶつかるや否や閃光とともに大きな爆音があたりに響き、爆煙が辺りを覆う。
「ウインドストーム」
最初の詠唱に参加しなかった魔術兵士が新たな魔術を唱え、爆煙を吹き飛ばす。煙の晴れた先には
吹き飛ばされた扉の残骸が飛び散り、中へ続く大穴が開けられていた。
そしてその先、王座の間にあの女の姿を認めた私は将軍らを伴って中へと足を進めた。
「さて、そろそろ隠れん坊派は終わりでよろしいですかな、レーミラ様」
私は身の程を弁えずに王座に腰をかける女に声をかけた。
「そうね、そろそろ終わりにしようと思っていたところよ」
王座にいる女はそういってゆっくり立ち上がった。確か年は40前だったと記憶しているが、20代といわれても差し支えないほど、若々しい女だった。長い黒髪を後ろでまとめ、姿は普段のドレス姿ではなく、要所を守る革製の鎧を身に纏い、腰には2本の剣を吊るしていた。謁見の間には女以外の姿はなく、どこかに隠れている様子もなかった。
「そうでしたか、ご理解が早くて助かりますね。ところで殿下はどちらにおられますかな?隠れん坊は終わりということですので、そろそろ出てきていただけると助かります。奥の部屋にいらっしゃるのですか? それと王座に座って我々を待つとは。いくら王妃とはいささか不遜でないですかな? しかもそのような格好で」
「息子? それなら奥の部屋にいるわよ。ちょっと身支度をさせてたところ。いやーもう少しで来るかなと思って最後にちょっと格好つけて見ようと思って王座に腰掛けて待ってみたんだけど、座りにくいわねこのイス。防具をつけているとはいえ、座りにくいのなんの。クッションは薄いし背中はまっすぐそり過ぎ。しかも板も硬い素材だからお尻も背中も痛くなるわ、取り替えた方がいいんじゃない、これ?」
「・・・無礼もそこまでいくとあきれてものがいえませんな。その王座はこの国が始まって以来歴代の王が使用した由緒正しき・・・」
「あ〜だからか、納得したわ」
私の話を遮って女は勝手に何かに納得したようにつぶやいた。
「なにが納得されたのですかな」
「いや歴代の王様が使ってたってこと」
「それが何か?」
「え、だって臭いのよ、このイス。なんか犬小屋の毛布みたいな匂いがするから。歴代の王が座ってきたなら何となく汗とか体臭がしみ込んでも納得かなって。」
「・・・・・・・・・・・」
あまりの暴言に私は言葉を失った。しかし隣にいた将軍は対照的に怒りをあらわにした。
「貴様!! 歴代の王を犬などと罵るか!! レオルド様は捕らえよと仰せになったが、捕らえるまでもない。今すぐその首叩き切って犬の餌にしてくれよう!! 全隊抜剣せよ!! その愚かで頭の狂った女を切り捨てよ!!」
「「「「はっ!!」」」」
将軍の指示で兵士が剣を抜く。10名ほどが王座の前にいる女を囲み、魔術兵士らが詠唱を開始した。
「あらら、結構血の気が多いというか、熱情的というか・・・まあ仕方がないか」
そういって女は王座から数歩前へ進み、両脇から剣を抜く。
「とりあえず聞く耳あるかわからないけど一言いっておくわね」
そして、言い放った。
「あんたたちの命を見逃してあげるから、私たちのことはこのまま放っておきなさい」
「ほざけ!!!」
将軍の怒号が響く。それを合図として兵が女へ殺到した。
女は平然と歩を進めながら・・・兵士の輪を平然と歩いて抜けた。
「・・・へっ?」
私は自分が見た光景が理解できなかった。今、兵士たちは間違いなく女に向かっていった。
それなのに何故女は無事なのか。何故兵士たちは女を切っていないのか。
訳が分からず兵士たちを再度見て・・・周りを囲んでいた兵士達の首がないことに気がついた。
「・・・あっ?」
将軍の声が聞こえた。隣にいたアーカンダー将軍に反射的に視線を向けた。そのとき女は将軍の目の前にいて、既に右手の剣を上から下に切りぬいていた。
将軍の体が左右にずれていくなか、返り血を浴びて呆然としていた思考が再度働こうとしたとき、既に将軍の死体の前に女の姿はなく、後ろを振り返り見れば血をまき散らしながら倒れる魔術兵士の姿があった。そして自らの首筋に当てられた剣先の冷たさを認識した。
「な・・・な・・・っ」
「はい、動かない。このまま、このまま。」
まるで子供をあやすように女は私の首筋に左手に持った剣を当て、右手の剣を血ぶりし鞘に納めた。
「とりあえずもう少ししたら貴方の大好きなレオルド様が来るみたいだからそれまで待機ね。」
何が起こったのかまるで理解が追いつかなかったが、一つだけ確かなことは女が将軍以下兵士達を皆殺しにしたことはわかった。
「な、な、何者・・・なん・・だ、おまえは・・・」
自制をかけ声を出せたことは自分で自分をほめてやりたい位だった。時間が経つにつてゆっくりと起きたことが認識できてくる。そして私の命がとてつもなく細い灯火のようにいつ消えてもおかしくないことがわかってしまった。
「一応王妃様になるのかな。まあ今日でおしまいになるけど」
お前のような王妃がいてたまるか、そう反論が思いついたが、声には出なかった。
じわじわと恐怖が体を支配していく。股間を生暖かい液体が濡らす。それを皮切りにどっと身体のいたるところから汗が流れ落ちていく。涙があふれよだれも口から垂れていく。
一生分の時間が過ぎたような錯覚を覚えたとき、レオルド様の声が聞こえた。
「これはいったい何事だ!!」
兵を引き連れレオルド様が謁見の間に入ってきた。将軍や兵士の死体を見て、剣を突きつけられた私を確認したレオルド様は言った。
「ほう、かつては傭兵をしていたと兄上から聞いてはいたが、まさかこれほどとは思わなんだ。将軍は最近内地の任務が多く実戦からはなれていのは事実だが、こうも見事に切り捨てるとはな・・・。」
周りの惨状を見て、女がどれほど腕が立つかがわかったのだろう。しかしそれを見て冷静にレオルド様は女に降伏を勧告した。
「ただがそれもここまでだ。すぐにヌカリヤ宰相を解放せよ。どれほど腕が立とうと、まさか城中の兵を相手にできる訳ではあるまい」
その落ち着いた言葉に身体を支配していた恐怖が和らぐのを感じた。ああ助かったと思った。
「レオル「いいわよ、はい」ッドさ、ぼげっ!!」
とんでもない力で尻を蹴り飛ばされ体が宙に浮く。いい知れぬ浮遊感の中、突然の奇行に驚き呆然とするレオルド様の姿と一瞬でレオルド様との間合いをつめ、首元付近の服を掴む女の姿が見えた。
次の瞬間、レオルド様が投げ飛ばされ、私に激突した。
「げぼっ!!」
どっすん
強い衝突後に私の身体は王座の前まで転がっていた。ここまでされても気絶できない自らの無駄な頑丈さを嘆きつつ、ふと見れば女がレオルド様に剣を突きつけていた。
「とりあえず王位とかこちらはいっさい興味ないから、私たちのことは放っておいてもらえる? そうしたら貴方達にはいっさい干渉しないから」
女が言う。
「く・・・ふざけおって・・・そのようなこと脅しになるとでも思うか!! この俺を手にかければ、貴様らは一生追われる身だ。それも理解できぬか!!」
レオルド様がひるまずに女にいいかした。
「者ども、俺にかまわずこの女を囲め!! 決して逃げる隙を与えるな!!」
その言葉を聞き、硬直していた兵士達は女を包囲した。そのレオルド様の姿に勇気づけられた私は必死で立ち上がり、兵士のもとへ歩み寄った。
「さあ、立場がわかったのならとっととこの剣を引け!! いまなら前王妃という立場でもって温命は助けてやろう」
「・・・はあ、仕方がない」
そういって女は剣を引き、
「そうだ、はじめからそうすればよかったのだ。それを貴様は「えい!!」ぐぉぉあ!!!」
まるで断末魔のような叫びが謁見の間に響き渡った。
何が起こったのか、それはレオルド様の状態を見れば明らかだった。
女の右足が・・・レオルド様の股間を踏み抜いていた。
私は唖然とした。
兵士達も言葉がなかった。
レオルド様は泡を吹いて白めになっていた。
そして女はやり遂げたようにさわやかな笑顔で額の汗を拭うような動作をした
「な、な、な、何をしている!?」
「ナニをつぶしてるのだけど?」
私の叫びに女は平然と答えた。
「な、何故に・・・そんな!?」
動揺する私に女は返す。
「さて質問です。確かレオルド様にはまだ子供がおられないとお聞きしておりますが、それは正しいでしょうか?」
「え、・・・あ・・・確かにいないが・・・」
レオルド様には確かにお子がいない。一度お生まれになったが、病死している。反射的に女の質問に答えた後、女が何を言いたいのか理解し、呆然とした。
「このままにすると・・・国家断絶ね。あら大変。はやく治療しないと間に合わない」
「き、き、貴様というやつは〜・・・う!?」
怒鳴り散らす私の眼前に剣が突きつけられる。その動作は速く私はもとより周りの兵士すら反応できなかった。
「あんたたちの命とレオルド陛下(仮)の○×△を見逃してあげるから、私たちのことはこのまま放っておきなさい」
そういわれ、もはや声の出せない私たちを見て女はとどめの言葉を言い放った。
「それともあんたたちのぶら下がってるのを切り落とそうか?」
そういわれて我々は・・・降伏した。
ルロー歴158年のことである。
基本ギャグです。
次は人物紹介をのせる予定です。




