第一章 第二話「そこにはロリがいた」
最後の工程である歯磨きを終え、玄関に向かう。
「それじゃあ、いってくる」
「いってらっしゃい、雨宮ちゃん」
「………お母さんも雨宮でしょうが」
「ふふっ。お父さんと結婚する前のお母さんは雪下だったのよ?」
「はいはい、そうですか。感動して涙が止まらないよ」
カバンを持ってリビングから廊下へ出ようとした瞬間、馬鹿みたいな声量とともに、勢いよく扉が開いた。
「凛〜! この偉大なるお父さんが、一ついいことを教えてやろう!!」
「うるっさ。会話をスキップ、会話をスキップ」
「実はな! カタツムリは歯が2万本以上あるんだぞ! それでな!」
「会話をスキップ」
お父さんを無理矢理押し除けて廊下に出ながら振り返る。
「本当に偉大なら、学校に行こうとする娘をくだらない雑学で引き止めないと思うよ」
「ぐふぅ……っ! り、凛……それは今後禁止カードとする……!!」
「それなら言われないようにして」
大袈裟によろけたお父さんを一瞥し、玄関へと歩き出す。
そして、ようやく玄関に辿り着いた。
スマホを見ながら靴を履き、扉を開けて外に出る。これも日常だ。
「ぅ、さぶぃ……」
嫌な時代になったものだ。本来ならまだ秋のはずなのにとても寒い。体感では北極だ。
家から近いバス停まで歩く……のが、いつもの流れだ。
「………………はぁ……」
だが今日は、とても不運かつ不愉快なことに、ひび割れた道路の補修工事をしているらしい。
実に不本意ながら、遠回りすることになってしまった。寒い上に遠回りなんて、今日は厄日か何かなのだろうか。
「あぁ、そういえば」
ちょうどいい。遠回りにはなったものの、ネットで噂の"■■■小学校"とやらがあったらしい土地の近くを通る。
そこは以前と変わらなかった。
生い茂る背の低い雑草。こんなに寒いのに、朝っぱらから井戸端会議をしている近所のおばさんたち。
「はぁ〜、やっぱり小学校なんて元からないでしょ。なぁんで、こうも騙されちゃうかなあ」
その時、突然、視界が暗転した。
何が起こったのかは分からない。
何も見えない。聞こえない。感じない。
まるで、世界のすべてが私を無視して透過しているかのように。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「お姉ちゃん、生きてる?」
目を覚ますと、視界全体に「ロリ」があった。




