第10話 森の中が続きます
東京。
「…本当に、タヌキと思われんのか?」
シンプルなグレーのパーカーと白いズボンの又之介は、おびえている。
「…人間さん、いすぎやねん」
イエローのパーカーの北太も、おびえている。
東京の駅前は、人の行き来が激しく、油断していると道行く人と肩がぶつかる。
『堂々とする必要はない。化けタヌキなど人間さんは、信じたりしないぞ』
長い髪をポニーテールにしたあじぽこ様は、サングラス越しに腕時計を見ている。
『時間通りに来たようだ』
「油本工業の常松です。よろしくお願いします」
スーツ姿のキツネ顔の男の人。
『ああ、よろしく頼む』
あじぽこ様は、又之介と北太をうながす。
「大爆笑カルテットの又之介や」
「同じく、北太やねん」
二人で、自己紹介をする。
ドキドキが止まらない二人。
今日は、夢を見に来た。
第10話 森の中が続きます
油本工業。
キツネの王様。キツ造。
キツ造社長が、経営するお笑い事務所。
「ここでは、オオワライの森の動物たちの願いを叶える慈善活動をしていますコンコン」
扇子で、頭を叩く。
「今回のお願いは、テレビ出演ですコンコン?」
「そうや!」
「テレビやねん!」
又之介と北太は、身を乗り出す。
森の霊力は、無限大。
オオワライの森の化けキツネたちは、人間さんの都市部で、会社を持っている。
そこで、夢を見ることができる。
抹茶テレビ局。
お笑い番組収録現場。
人間さんの姿は、無い。森の霊力の力。
スポットライトが当たる。
「新人お笑いコンビの登場や」
「大爆笑カルテットやねん」
「コンビなのにカルテットや」
「何でやねん」
「見てくれて、ありがとさん」
「ありがとうやねん」
無人の観客席。
次の瞬間。観客席に動物たちが現れる。
あはは。あはは。あはは。
ぱちぱちぱちぱち…。
動物たちの拍手が鳴りやまない。
ウケてる。皆んな、笑顔。
大爆笑カルテットは、森の人気者なのだ。
それと同時に、スポットライトが消える。
『もう、いいか?又之介。北太』
「満足や」
「十分満足したやねん」
『では、森属性の霊力を解くぞ』
あじぽこ様の言葉によって、東京の街が消える。
オオワライの森の中。
タヌキツネ洞窟の中に一瞬で戻った。
「オレたちは、森の人気者ってことや」
「ボクたち、森のお笑いが合ってるやねん」
『今のは、全て“夢”だからな』
ポニーテールをとく、あじぽこ様。漆黒の長い髪を伸ばす。
人間さんとの、女の娘ぽんずとの、お別れのお詫びに大人の動物たちが見せてくれた。
人間さんの都会の夢。
「これが、大人の動物たちのお詫びかい」
「人間さんの女の娘とのお別れは、すぐに忘れるやねん」
又之介と北太は、笑い合った。
タヌキツネ洞窟。笑劇場の楽屋。
「皆んな、戻ったで」
「何の話してるやねん」
又之介と北太が楽屋に行くと、木津ブラザーズとゴンチャンが、楽しそうに話し合っていた。
「タヌキツネ大賞を毎日、開くのどうですう」
「競うですよ…」
木津ブラザーズが、挑戦状を叩きつける。
「ワシも、毎日を一発ギャグ勝負にするのじゃ」
ゴンチャンが、豪快に笑っている。
売り子のポンデュオ。
根菜ず。
ダブルボックス。他…。
小さな笑劇場には、たくさんのお笑いタヌキとキツネが笑いを楽しんで披露している。
皆んな仲間。同じお笑いを愛する仲間なのだ。
まだまだ、森の動物たちは、お笑いを志す。
お笑いを観客席で見る。
『お笑いは、楽しいか。又之介』
あじぽこ様が聞いてくる。
「楽しいに決まってるやろ。なあ、北太」
「楽しいやねん。又之介」
大爆笑カルテットは、グッと握手する。
まだまだ、笑いの修行中。
これからも、全力投球で行く。
「オレらの夢は、森の皆んなの笑顔や」
大笑町。オオワライの森。
タヌキツネ洞窟の中に、小さな笑劇場がある。
お笑いが大好きな森の動物たちの笑い声は止まらない。
人間さんの記憶には、消された森の中の世界。
森の中は、いつまでも閉鎖的なままなのだ。
笑顔のままで夢を追う。楽しく、明るく、元気良く。




