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五十鈴と景子の会話 その1

五十鈴は輝を抱っこしながら、ケイさんがヨガライク吉祥寺店から出るのを待っていた。


夕日をバックに帰っているサラリーマンの邪魔にならないように、ビルの壁に沿って立つ。


ビルの一階にある耳鼻科は繁盛しているようで、開いた自動ドアから見える待合室は人でいっぱいだった。


昨日、お兄ちゃんから予知を見たと教えられた。


お兄ちゃんがずっと取り戻したがっていた力だし、そのことを素直に喜びたいと思う。


でもそれと共に不安にも思う。


予知の力をなぜお兄ちゃんはずっと取り戻したがっているのか、不思議だった。


予知の力があったって結局私たちの両親と鈴音姉ちゃんは交通事故で死んでしまった。


なら予知の力なんてあってもあまり意味はないじゃないかと思う。


よく知らないのだけどおじちゃんは予知の力で莫大な財産を築いていたらしい。


だから私とおにいちゃんは遺産が沢山入るらしいのだけど、それは考えないことにしている。


お金なんてなくっても私は幸せだ。


太郎さんも輝もいる。


お兄ちゃんも近所に引っ越してきたし、これからどんどん楽しくなると思うんだ。


もっともっと幸せになれると思う。


でも私は気がついてしまった。


天間家の予知の秘密に。


お兄ちゃんは記憶がないって言っているけど、本当はどうなのだろうか? 


あまり私に嘘をついているとは思わないけど、これだけはどうかわからない。


私に出来ることはそんなに思いつかなかった。


このままだとお兄ちゃんは行ってしまうかもしれない。


私はそれを止めたいと思う。


でもそれが本当に正しいのかわからないのだ。


だから私はささやかな抵抗しか出来ない。


お兄ちゃんに幸せになってもらいたい。


そして、行くことを躊躇ってもらいたい。


お兄ちゃんが助けたケイって人の顔はわからなかった。


でもヨガのインストラクターをしているらしいので、スラッとした人だと思う。


それに予知して命を助けるほどお兄ちゃんにとって大切な人なのだから、きっと美人だと思う。


輝をあやしながら待っていると、ビルから二人の女性が出てきた。


女性にしてはがっしりとした体格の人と、もう一人は芸能人かなと思うほど綺麗な人だった。


もう一人の人には失礼な話かも知れないけど、パッと見て、どちらがケイさんかすぐにわかった。


私の美化したイメージより少し上をいっていたのでビックリしたくらいだ。


お兄ちゃんも隅に置けないね。


こんなに良い女性を見つけているのに何も言わないんだもの。


見ていると、ケイさんとネイルアートが派手な女性はビルの前で分かれて歩いていく。


ケイさんは女性にしては歩くのが早いので、駆け足で追いかける。


駆け足で揺れるのが楽しいのか、輝が嬉しそうにダアダアと叫んでいた。


やっと追いついたので、ケイさんの肩を叩いた。


ケイさんは凄く速く振り向いて、驚いた顔をしていた。


なぜか拳を握っている。


ここまで美人だと身を守るために敏感になっているのかも。


ナンパとか沢山されそうだものね。


私は天間明の妹だと自己紹介して、話をするためにスターバックスに移動した。


席に着くと、輝を膝に乗せながらどう話そうか考えた。


でもよくよく考えてみればこんな話を信じてくれるはずない。


焦ってつい行動をしてしまったけど、ちょっと判断ミスをしたかも。


でもここまで来たら話すしかないかな。信じてくれても、信じてくれなくてもいい。


私はこのことを誰かに話したかったのだ。


「あのケイさんは、兄の話を信じていますか? 予知ができるって話ですけど」


私はケイさんの顔色を窺った。


もしお兄ちゃんの予知の話すら信じていなかったら、この話をするのはよそう。


だって私の話はそれより少し現実離れしているから。


「はい、信じてますよ。明さんにはお世話になってます」

 

ケイさんの言葉はごく自然で何の躊躇いもなかった。


この人は本当にお兄ちゃんを信じてくれているのだなと嬉しくなる。


そして、明さんと言うときのちょっとした声色の違いを感じる。


ケイさんも、もしかしたらお兄ちゃんのことを好きかも知れない。


「これからちょっと信じられない話をしますけど、冗談ではないので真剣に聞いてもらっていいですか?」

 

私がそう言うとケイさんはクスッと笑っていた。


「ああ、ごめんなさい。明さんも同じようなことを言っていたのを思い出して。そのときに予知の話をしてくれたんです。楽しい話でしたし、私は初めから信じてましたよ」

 

そう言ってケイさんはにっこりと笑っていた。


今日は化粧を全くしていないようなのに、こんなに綺麗なんだもの。


お兄ちゃんがメロメロになるのも仕方ないね。


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