天間明の一日目 その6
『人の死は変えられない』
それは薄々、明も気づいていた。
そのときの記憶は失われてしまったが、明は両親の事故死を予知していたはずだからだ。
どう行動したか覚えていないが結局、両親と姉は事故で死んでしまっている。
ただ明は「五十鈴しか助けられへんかった」と事故直後に言っていたらしい。
その言葉を素直に受け止めると、妹の五十鈴は予知では死ぬはずだったのに助かったということになる。
大丈夫。
助けられる。
子供の頃の俺とは違う。
家族を救えなかったのは、まだ力も知恵もなかった六歳の頃の俺だ。
大丈夫。絶対に大丈夫。
明は自分に言い聞かせるように、何度も大丈夫とつぶやいた。
疲れたら軽く、身体を動かし、また瞑想の真似事のように座禅を組む。
少しずつ時計の針は進んでいった。
待ち合わせの時間が近づいてきたので、明はゆっくりとさらしを巻き直す。
出来上がったお腹を拳で叩くと、石のように硬く感じた。
気合を入れて立ち上がると、明はヨガライク吉祥寺店へ行くことにした。
待ち合わせの時間の十五分前には着きそうなのに、興奮のためか早歩きになってしまう。
結局、ヨガライクの前で十五分待って、ケイが出てきた。
ケイはスカートだけ縞の模様がある白のワンピースと言う服装だった。
「へえ、ケイさんってワンピース着るんだ。よく考えたらヨガウェア着ているところしかみてないもんなあ」
そう言いながら、明はケイの可愛らしさに内心ドキドキだった。
ヨガウェアを着ているときのケイは凛々しい感じがするが、ワンピースだと凛々しさが消え、その分可愛らしさがアップしている。
「お待たせしちゃいました?」
「いや、時間通りやで。お腹減ってない? 飯食いながら話そうか」
緊張のためか、どうも口調が関西弁になっている。
出来るだけ標準語を話したいのだが、どうも今日は無理そうだ。
「はい。お腹はペコペコです」
明は五十鈴が気に入っているタコライス屋に行くことにした。
ひとまず頭からケイへの想いを排除し、気を引き締める。
今日の自分はボディーガードなのだ。




