天間明の一日目 その5
頭の中でいろいろな状況を想像する。
ともかくどんな人であれ、手の届く位置まで近づかないようにするべきだろう。
子供ではないとは思うが、襲ってくる人は誰なのかまったくわからない。
不審者とすれ違うのも避けるべきだ。
そんなことを明が考えているときに、携帯電話が鳴った。
相手を確認してから電話を取る。電話はおばあちゃんからだった。
「もしもし」
「もしもし、明かい? 元気にしてるかい?」
「元気やで。おばあちゃんは元気?」
「ああ、今日もスポーツジムのプールで遊んできたよ。明の言うとおりええ所やな。友達もようけできたよ」
「それは良かった。そうそう、おばあちゃん。久しぶりに予知夢見たよ」
「そうかい、そうかい。それは良かったね。おじちゃんも天国で喜んでいると思うよ。それで、どんな予知夢だい?」
「友達が死ぬ夢。だから何とかそれを食い止めようと思う」
「そうかい。でも、人の生き死には変えられんと、おじいちゃんは言ってたで。失敗してもそれは明のせいじゃないよ」
「おじいちゃんが? そうなん?」
そんな話は初耳だった。
「ああ。昔、友人を救うことが出来なかったんやて。それが深い後悔になったんやろうな。おじいちゃんは人の死は予知できんようになったらしい」
おじいちゃんは人の死は予知できないという話は前におばあちゃんに聞いていた。
おじいちゃんも予知の力を持っていると知ったとき、明は激しく怒った。
何で実の娘夫婦と孫娘の事故死を防がなかったのかと思ったからだ。
明の様子を見て、おばあちゃんはそのときにそっと明に教えてくれたのだ。
だからおじいちゃんを怒らんといてなと。
「何かほしいものはないかい? お金は大丈夫かい?」
「大丈夫だよ。まだ働いていたときの貯金があるから」
「そうかい、そうかい。何か入用になったら遠慮なく言うんだよ」
それから明は少し世間話をして、おばあちゃんとの電話を終えた。
電話を畳みの上に置き、座禅を組んで座った。
背筋を立て、呼吸の通り道をなめらかにする。
瞑想をするなら何も考えない努力が必要だが、そこまで心を落ち着けて集中できる状態ではなかった。
自然と頭の中でいろいろなことを考えてしまう。




