遂にトラックが出来た
生活指導室前に到着。中に先生の気配。ええい、悩んでいても仕方ない。相談するって決めたんだし・・・でもなぁ・・・信じてもらえるかなぁ・・・当たって砕けてみるか。
「失礼しまぁす。」
「はい。待ってましたよ。」
「早速ですが、シャンプーや化粧水の他にも生活が便利になる発明品がいっぱいあるって言ったら・・・信じて貰えますか?例えば、熱い部屋が涼しくなる箱とか、物資を大量に運ぶ馬のいらない乗り物とか、魔力が余っているので作るのは簡単なのですが、国のお偉い方々に囲われるのは嫌なので今まで作らなかったんですが・・・。魔力石を自分で限界まで作って、翌朝まで寝ると魔力総量が増えるので、最近はそれを繰り返していました。それでも頭に浮かぶアイデアを作らないのは、勿体ない気がして・・・。」
「・・・ちょっと待って・・・それは簡単に・・・出来る物なの?」
「はい。フラウ先生もご存知の私のイメージ魔法を使えば、簡単に物質化できます。では、試しに部屋が涼しくなる箱を作りますね」
イメージ魔法と練成で眩い錬成光が部屋全体を包み込む
「はい、できました。魔力石をここに入れて、スイッチを押します。」
「おぉ、涼しい風が出てますね。」
「お部屋が快適になるので、お金持ちの人たちが飛びつく商品だと思うんです。あとトラックは大きくてここでは再現できないので、先生も一緒に外にお願いします。」
「ええ、わかりました。外に行きましょう。」
「修練場で良いですかね?『練成』今度は修練場に錬成光が輝きます、今回は4トントラックです。もっと大きい物も作れますけど今日はこのサイズで。では、中に入ってみてください。ここをこうして引っ張って開けて乗ります。乗ったらドアを閉めてください。そして大事な事です。左上にあるベルトを右下の留め具にはめて体を固定してください。そうしたら、ここに魔力石を入れ鍵を回します。」
ブルルン、ブルルン、唸りをあげるエンジン。魔力石が動力なので排気ガスは出ません。エコですね。
「走ります。」
「ちょっと待って下さい!!動くんですかこれ?!」
「動きます。馬より早く走ります。」
アクセルを踏み込み、わざと少し乱暴な運転をします。こんな事も出来るんですアピールをします。八の字でぐるぐるしたり、バックをしたり、少し修練場がが荒れちゃったけど。気にしな~い。
「これに戦争用の物資を乗せたり人の輸送も出来ます。国の偉い人から見れば、使い道が戦争に勝つための道具にしかならない気がするんです。降りるときは、ここを引っ張るとドアが開きます。目立つとどんな噂が流れるか分かりませんので、今回このトラックは、破壊しますね。」
『爆散』
「さっきは使い忘れましたが、トラックの中の温度も自由に変えられます。・・・ボーっとしてますが、先生はどう思います?戦争に使われると思いますか?商人が使う分には構わないのですが、戦争の道具になるのは嫌なのです。」
「大丈夫ですよ!!素晴らしい発明です。我が国は大国です。周りの国は資源も乏しく、王都からの援助で成り立っています。無理に攻め込む理由がありません。確かに戦争に使おうとする偉い人もいるかもしれません。ですが、今の王様、というより今までの王様は、皆平和主義者です。近隣諸国にも援助をしています。それにリーサさんのお父様は、Sランク冒険者ではありませんか。その娘に不埒な真似をしたら国がどうなるか分かりません。」
「Sランク冒険者ってそんなに凄いんですか?」
「この世界で5人しかいません。」
「リーサさんはまだ幼く、他の国の事や冒険者の地位など知らない事が多すぎますね。現在の王国周辺で先ほどの大きな馬車を兵器として使うとしたら、モンスターの暴走に対して、国の騎士団が応戦するくらいのものです。このは世界は、隣国との諍いはありません。あるとすれば、先ほど言ったモンスターが溢れることくらいです。そのモンスターの暴走もここ数百年起きていません。ですので、リーサさんは自分の思った通りに生きて、大丈夫ですよ。リーサさんは心配だったのですね。幼くて知らないことが多くて、それなのに自分には才能がありそれがどう扱われるか、自分は異端者なのではないかと・・・。」
「はい。私は自分が周りと違うことを恐れていました。迫害されるんじゃないかと・・・。」
「分かりました。今から王城に向かいましょう!!」
「へっ???」
「リーサさんの心配事を減らしましょう。私も伊達に長生きしていません。王城に知りあいくらいいるのですよ。さっ、善は急げです。今から行きますよ。上手くすれば王城で食事もできるかもしれませんよ?」
「えっ????」
「さぁさぁ、行きますよ。」
そして、フラウ先生に言われるがまま王城に来てしまいました。でもまさか、あんな展開になるとは・・・王城について門番の方にフラウ先生が何か伝えたら、中に入れてもらえました。
「王城ってこんなに簡単に入れるものなんですか?」
「まさか、流石に王様がお住まいの場所ですから簡単には入れませんよ。言ったでしょ。知り合いがいるって。」
「はぁ・・・それでも、簡単すぎませんか?」
「私も王都が運営する学校の教師ですからね。何回か王城にも来ているんですよ。」
「はぁ、そんなものですか?」
そのままフラウ先生と王城の中を歩きます。行く先々で先生に挨拶をする騎士の人たち、それに軽く挨拶を交わすだけのフラウ先生・・・。暫く行くと豪華な扉の前に来ました。周りには護衛の騎士が数人立っています。その人達に挨拶をすると、扉のわきに立っていた騎士が扉を開けてくれます。中には豪華な椅子に座って、こちらを見ている人がいます。凄い気まずいです。でもフラウ先生は気にせず、どんどん中に入っていきます。そして、先生は見るからに偉そうに座っている人に対して、とんでもないことを口走りました。
「お久し振りです。お父様。」
へっ?何て言った?今なんて言った?お父様?つまり父親?ちょっと待て。いったん整理しよう。私は王城に行こう。と、言われ王城の門をくぐり、豪華な居室の中に居て、先生がお父様と言った。ここまではOK。でも見るからに偉そうなあの人は王様???それともそれに付き添う方?
「フラウ、久しぶりだな。最近は顔を見せぬから、心配しておったのだぞ。」
「申し訳ありませんお父様。学校で才能に溢れた生徒を見つけたもので、そちらにかかりきりになっていました。」
「そうか。それでは仕方ないな。それで、才能溢れる生徒とは後ろでポカーンと口を開けている娘か?」
「フフフ。そうです。状況が飲み込めずに、口をポカーンと開けている生徒です。リーサさん、この方はこの国の王『エゼルレッド』王です。」
へっ?やっぱり王様そしてフラウ先生はその娘?王女様?ああ、挨拶しないと・・・何て言ったらいいんだ?
「お初にお目にかかります。リーサと申します。」
もう無理!!頭がパンクしそう!!
「リーサさん、この国は寿命の長いエルフが治めているのよ。そして説明していなくてごめんなさいね。私も王家の人間なの。だから戦争の心配はいらない。と、言ったのよ。お父様は戦争をするような方じゃないから。」
「なんだ、その生徒は戦争の心配をしていたのか?」
「まだ5歳なので、知らない事が多いのです。」
「ほぉ、5歳で才能あふれる生徒とは・・・フラウが気にかけるのも分かる気がするな。リーサと言ったか、気にするな。我が国は戦争なぞせん。むしろモンスターの方が脅威じゃ。だから国営で、冒険者育成学校なぞ作っておるのだ。才能が溢れているなら、冒険者になってこの国を支えてくれ。」
「はいっ!!」
「お父様、リーサのお父様はSランク冒険者のヘンデル様ですわ。」
「そうか、ヘンデルの娘か。あそこは確か、嫁もAランク冒険者だったな。」
「そうです。父も母も元冒険者です。私が大きくなるまではと、今は鍛冶師を営んでおります。」
「そうか。今は鍛冶師か。早く冒険者に復帰してもらいたいものだな。」
「申し訳ありません。私の為に貴重な戦力を・・・。」
「なに、気にするな。子供は宝だからな。大きくなるまでは、危険な事はできんさ。」
「お父様、今日はリーサの能力をお見せしたくて王城まで参りました。」
そうなの先生?私何も聞いてないよ?
「リーサさん、先ほどの大きな馬車を作れる魔力は残ってる?」
「はい。問題ありません。」
「あれがあれば他の国への援助もしやすくなります。」
「そうですね。戦争が無いのなら物資の援助には、かなり役立ちます。」
「ここで出すわけにはいかないので、どこか広い場所に行かないと・・・。お父様、修練場をお借りしてもよろしいですか?」
「ああ、別に構わんが、何をするのだ?」
「それは見てからのお楽しみですわ。一緒に修練場へお願いします。」
「わかった。では行くか。」
「さっ、リーサさんも行きますわよ。」
王城の修練場は学校の修練場の何倍もあり、トラックのスピードもかなり出せそう。どうせなら王様に隣に乗ってもらって実感して貰った方が良いかもしれない。
「まずは『練成』でトラックを出して。王様、これに一緒に乗ってください。」
「ああ、構わんぞ。その方が実績が分かり易いからな!!」
「では、ここを引いてください。ドアを開けます。そしてここに足を乗せて乗ります。乗ったらドアを閉めますね。」
「ああ、分かった。」
「そして左上のベルトを右下の留め具にはめてください。体を固定します。ここに魔力石を入れると動くことができます。動力は、魔力石です。馬の馬力の代わりになります。」
「なるほど、それでは魔力石で動くのか。」
「はい。鍵を回してエンジンを掛ければ発進です。」
ブルルン、ブルルン。
「おお、音が鳴っているな。そして振動も・・・。」
「では、動きます。まずはゆっくりと、そしてだんだんスピードを出します。」
「わかった。任せるぞ。」
その後スピード上げたり、八の字でぐるぐる回ったり、バックしたりと色々な運転をしてその度に王様は喜んでいました。