第6話 研究所
すみません、本編行くまでにもう1話挟みます。
白衣を着た女性は黒髪のウェーブがかかったロングヘアーに黒縁の眼鏡をしていた。
眼鏡の奥に見えるぱっちりとした大きい黒い瞳はブラックホールの様に吸い込まれそうになる程の魅力を感じる。
何だこの子は…
思わず、もう一度研究所の文字も見た。
いや、間違いなく特異研究所となっているが…
見た目が女の子にしか見えない。
そう見えたのには幾つか理由がある。
その理由の一つ目は140cmもないであろう身長。
二つ目は幼く見える童顔。
三つ目は着ている白衣も大きいのか袖から手が出ていない。
それに加えて白衣が地面に付いていて端が汚れている。
それらを理由に誰がどう見ても女の子にしか見えないのだ。
「君は誰だ?」
「私は嵐クロハよ、嵐って呼ばれるのは嫌いだからクロハって呼んで。因みに昨日の食事会にもいたのだけど気付いてなかったの?」
まさかあの中にいたのか。
全然気付かなかった…
だんまりする様子を見てクロハは気付いてなかった事に呆れた顔をする。
「すまんな…」
「まぁ、いいわ。貴方のサポート役で副所長の立場だから今日から覚えといて欲しいわ。」
「わかった、覚えておこう。それでクロハは何しに来たんだ?」
「え?会長からアルカド所長に案内を頼まれたの聞いてないの?」
「案内は聞いたが誰が案内するかは聞いてないな。」
「そう…会長はたまに肝心な事を言い忘れるから困ったものだわ。」
クロハは辛辣な顔つきをする。
「まぁ、それは置いといてようこそファクターラボへ。これからよろしくお願いするわ。」
「あぁ、よろしく頼む。」
お互いに握手を交わした。
「それでこの壁なんだが…」
「そういえば、この壁の話をしてたわね。この黒い壁は、炭化ホウ素で作られているの。」
「ほぅ、あの防弾チョッキや戦車の装甲にも使われている化合物か。」
「そうよ、さすがね。」
これくらい知ってて当たり前だが、感心されるのも悪くはないな。
そう思いながらもその感情を顔に出す事はせず凛とした表情を続ける。
「まぁ、元教授だからな。それぐらいは知っている。」
「何で炭化ホウ素を使っているかなのだけど…」
「あぁ、大体は想像がつくが私には意味ない気がするがな。ある程度なら大丈夫かもしれんが…」
「それはそうなのだけど会長から貴方の能力を聞いてたから、一応出来るだけ頑丈な壁を要望した結果がこれだったのよ。でも建てた結果、外から中が見えない様になったって事くらいしか今は用途がないのよね。」
「使い道があるならいいと思うが、最悪壁の外に逃げ出そうものなら私の能力で大人しくさせるから問題ないが…」
「それはお願いするわ!それじゃあ研究所内を案内しましょうか。」
「わかった、行こうか。」
中に入ろうと歩き出した時、後ろから声がする。
「すみませんアルカド所長、私は入れないのでこれで失礼します。また、終わった頃に来ますので。」
「あぁ…」
そう言って、運転手の男が車に戻って行った。
「彼は行けないのか?」
「それはそうよ。研究所内は秘匿されてるもの、研究の関係者以外立ち入り禁止よ!」
「そうか、それは安心した。これで研究に没頭出来るからな。」
そして、2人で研究所に入ることにした。
自動ドアを通って入ると、目の前には受付があった。
横並びにある2つの受付に女性がそれぞれ一人ずつ座っている。
「早速だけど、受付で中に入る為にこのカードを提出してもらっていいかしら。」
クロハからクレジットカードくらいの大きさのカードを渡された。
「これは何だ?」
「それは入る為に必要な研究者カードよ。それを受付に渡さないとそこにあるゲートを通れないの。」
クロハは受付の横にある物に指を差した。
そこには透明ガラスパネルを採用したゲートが横並びに2つあった。
ゲートの中は部屋の様になっていて人が一人入れるくらいの広さで扉が外側と内側にあり、透明ガラスで囲われている。
「何だあのゲートは見た事ないが…」
「あれは最新のセキュリティゲートよ。後でやってみれば分かるわよ。」
その前にはゴリラの様なガタイをした黒スーツの男が左右に立っている。
「あの人達は何をしてるんだ?」
「あれは、会長が新事業のために雇った人達で貴方のBGよ。今は暇だから警備をさせているの、後で紹介するわね。」
そうか、私のBGか…
それなら能力を後で与えるのもいいな。
しかし、クロハに貰ったこのカード私の写真が載ってるがいつ撮ったんだ…
…
まぁ、気にしても仕方がないか。
「黙ってどうしたの?」
「…いや、何でもない。」
「その間は何でもない事はないでしょ。」
「まぁ、そうだな…」
「なら教えてくれたっていいじゃない。それとも私には言えない事なの?」
「いや、単に私のBGなら能力を使ってみてもいいだろうと思っただけなんだが。」
「あら、いいじゃない。私も気になるから貴方の研究室で後で試してみましょう。私も見学してもいいでしょ?」
「それは構わない。」
それを聞いて、クロハの表情に笑顔が増えた。
「フフッ、楽しみが増えたわね。早速だけど、そのカードを受付に渡してみてちょうだい。」
「これを渡せばいいのだな。」
「そうよ。」
受付に貰ったカードを渡した。
「はい、お預かりします。」
そう言うと、お姉さんが機械にカードを差し込んだ。
すると、横にあるゲートが稼働してセキュリティゲートの入口が開く。
「これはお返ししますね。では、あちらにお入り下さい。」
カードを返却されると、ゲートに入るように言われた。
「あそこに入ればいいのか?」
「そうよ。入ってみれば分かるから!」
受付のお姉さんに聞いたのにクロハが答えた。
声から察するに急かされているのが分かる。
早く入って感想を聞きたいのだろうか…
これ以上何か言っても同じような事しか言わないだろうと思い、ゲートの部屋に入った。
どうしたらいいか聞こうと後ろを振り返ると入口が閉まっていくのが見える。
「おい!これ本当に大丈夫なのか?」
慌ててクロハに問いかけるがクロハは笑いながらグッドポーズをしている。
笑い声が聞こえないと言うことはこっちの声も聞こえてないと思った方がよさそうだ…
不安でしかないが、前を向きパネルを見ると[5秒間ここを見て下さい]という文字が映し出されていた。
その指示通りにパネルを見ると、パネルに自分の顔が反映される。
それが出たと同時に上から急に赤いレーザーの光が出てきた。
その光は、頭から徐々に下に降りていき首まで到達するとまた上に上がっていくのを繰り返した。
もしや、顔の部分の分析をしているのだろうか…
光が消えると、反対の扉が開いた。
なるほど、このゲートは本人の顔認証の為のものか。
確かにこれがあれば関係者しか入れなさそうだ。
理解した所でゲートの部屋を出て、受付の方を見るとクロハがいない。
さっきまで居たのにどこ行ったんだ?
その時、自分が通ったゲートの作動音が消えた。
しかし、まだ同じ音が鳴っている。
ん?
音のする方を見ると横のゲートが稼働しているではないか。
中を見るとクロハが顔認証をしていた。
とりあえず、クロハが出てくるのを待つ事にする。
待っていると何やらゲート先から騒がしい声が聞こえて来た。
「おい、止めろ!」
「うるせぇっ!付いてくるんじゃねぇっ!」
「何処に行くつもりだ!主任に待機と言われているだろ!」
「そんなの天才の俺には関係ない…どけっ!」
「うっ…」
何だ今のは!?
「中々身勝手な奴がいるな…」
独り言がつい出てしまったが後ろから返事をする様に誰かが話しかけてきた。
「そうね。性格関係なく優秀な研究者を集めたせいでロクでもない人も入ってるから困ったものね。」
「クロハか、終わったのか?」
「ええ、それでゲートはどうだった?」
クロハがゲートから出てきて早速感想を聞いてくる。
「あぁ、凄かった。」
「えっ、それだけなの?」
「凄かったが、ああいったのは専門外でな…」
「あら、そうなの…教授って言っても知らない事もあるのね。」
何故か言い方に棘があるが知らないものは知らないから仕方がない。
続
※修正欄
実験室を研究室に直しました。




