第4話 謎の男
「少しいいか?」
そう言い、男が近寄って来た。
「私に何か用か…?」
「あんた、アルカド教授だよな。」
男は目にかけていた薄黄色のレンズの黒縁サングラスを胸ポケットにしまった。
なにやら、真剣な顔をしていた。
「そうだが……いや、もう教授ではないな。」
「どういう事だ?」
「お前には関係ない事だ。」
「まぁ、何だっていいが教授でないとしたら今フリーって事だよな?」
「それがどうした…」
「それなら話が早い。俺と仕事しないか?」
何だこの男は…
いきなり仕事しないかだと…
唐突すぎて話にならん。
それに私に何の仕事をさせる気だ。
「…」
「悪い悪い。いきなりすぎるよな?でも俺、知ってるんだよなぁ?」
そう言いながら、右手で髪の毛を掻き分ける。
「な、何を知っていると言うんだ…」
「今日、山の上にある建物でって言えば分かるか?」
何っ!?
…いや、鍵は掛けていた。窓もない。
建物内には誰も居なかったはず…
こいつ、本当に知ってるのか?
「見てたのか?」
「俺自身は見てないけどな。」
「では誰が見てたと言うんだ?」
「それは企業秘密ってやつだ。」
こいつ、一体何者なんだ…
「お前はそれを知ってどうする?」
「どうするも何もこうしてスカウトしてるだろ?それにあんたの能力って最高だと思わないか?」
「何が言いたいんだ?」
「いや、あんたの能力を使った良い仕事があってな?一緒にBG兼闘技場の会社を作らないか?」
「BG兼闘技場だと…」
「あぁ、その能力で進化した生物を使って表はBG会社裏では地下で賭博闘技場をするんだ。」
「賭博…」
「あぁ、あんたギャンブル好きなんだろ?それに闇金に借金してるそうじゃないか。もし、この仕事を引き受けてくれるのであれば借金全額俺が出してやるよ。それに賭博で儲けた金の1割を渡してもいい。」
「何だと!?」
「俺にとってそのくらい余裕さ。どうする?引き受けてくれるか?」
「少し考えさせてくれ…」
眉間に皺を寄せて悩んだ。
この仕事は私にとって悪くはない、むしろ良い。
しかし、この仕事をしたら最後裏社会で生きていかなければならないだろう。
どうすればいい…
「おいおい、そんな悩まなくたっていいじゃないか。あんたは一年以内に強い奴を作らなければならないはずだろ?」
「そこまで知っているのか…」
「この仕事をすれば次々と能力者が作れるし、そいつらを闘技場で戦わせて勝ち続けた強い奴を渡せばいい。」
「それはそうだが、この仕事悪い連中が絡んではないのか?」
「悪い連中ってのはそっち方面って事だよな?」
「そうだ。」
「裏賭博なんだから当たり前だろう。俺達だけじゃこの仕事は回らねぇーからな。そんな簡単に甘い汁だけは吸えねーからな覚悟を決めてくれ。」
そう言われて、何もしない訳ではないが…と頭の中で思いながらも決心をした。
「わかった…その仕事、引き受けよう。」
「それはよかった。借金はこっちでやるからあんた…っと、これから一緒に働く仲だ。あんたの事はアルカド所長と呼ぼう。」
「勝手に呼んでくれ。……いや待て、所長とはどう言う事だ?」
「アルカド所長には、俺が作った研究所で能力者を作ってもらうからな。そこのトップを任せるから所長だな。」
「そうか、私が所長か…それも悪くない。お前の事は何で呼んだらいい?」
「俺か?そうだなぁ、Kとでも呼んでくれ。それじゃぁ、アルカド所長の新しい門出に乾杯しに行こう。」
「それはそっちの奢りって事でいいのか?」
「当たり前だ。俺がそんなケチな男に見えるか?」
「そうか、ならいいんだ。」
「少し待っててくれ。」
そう言うとKはスマートフォンを手に取り、部下に電話した。
待っていると、1分程で一台車が走って来た。
ん?何だあの車は…
派手な色をした車が近寄って来る。
…と思ったら、此方に向かって来て目の前で止まった。
気付いたら口を開けたまま、車を見ていた。
ある意味凄い車だ…
こんな車見た事がない。
その車は黒を主張としたSUV車で所々に金色でグラデーションされていて派手だった。
「何だ、この車は?」
「どうだ俺の車!かっこいいだろ?特別仕様車でカスタムしてるからな。さぁ、行くぞっ!」
Kは自慢したくて堪らない様子で興奮して早口で話して来る。
そう言われても、私にとってこの車はチンピラみたいで乗りづらい。
しかし、乗らざるおえない状況だったので我慢して車に乗る事にした。
「おい、いつものとこに向かってくれ!」
「分かりました。」
Kは部下に命令を下すと、車を発進させた。
数分経って疲れていたのか、寝てしまった。
…20分後
車が止まった。
「到着しました。」
その声でハッと目が覚める。
「よく眠れたか?」
「あ、あぁ…」
部下の言葉にKがドアを開ける。
私も反対側から外に出た。
辺りを見渡すと、どうやら繁華街に来たみたいだ。
日が落ちて空が暗くなっているのに対して5階建以上の建物が幾つも聳え立ち、店の光やネオンの光、大型液晶画面等あらゆる光で繁華街は昼間の様に明るい。
「アルカド所長、こっちだ。」
Kの後に付いて行く。
街中を少し歩くと、とあるビルの地下に進む階段を降りて行く。
すると、降りた先に赤いスーツを着た男が二人、ドアの前に立っていた。
ドアの上には看板がある。
看板には大きい横文字で【赤虎華】と書かれていた。赤と華は赤色で虎の文字だけは黄色で周りの壁には、虎の絵と雷紋が描かれていた。
どうやら、お店に着いた様だ。
看板から察するに中華料理だろうか…
あまり中華は食べて来なかったせいか微妙だ。
Kはお店にそのまま歩いて行く。
その後を付いて行くと、2人の男はスッと両側に避けて頭を下げた。
付いて行ってるだけだがなんだか気分がいい。
お店に入ると、Kは受付を素通りして勝手に奥に入って行く。
「お、おい!受付は?」
「大丈夫だから付いて来い。」
まるで部屋が分かってるかのように迷う事なく歩いていく。
すると、ある部屋の前まで来た。
そこには赤虎の間と書かれていた。
「ここだ。乾杯の席は既に準備出来てるはずだから入るか。」
「あぁ…いつの間に連絡したんだ?」
「車で寝てる間にな…」
「それにしても、2人にしては少し広そうな部屋だな。」
「ん?誰が2人って言ったんだ?」
「2人ではないのか?」
「まぁ、入ってみれば分かるさ。」
部屋のの前には2つの段があった。
Kはその下で靴を脱いで段を上がる。
その後を同様に続いて私も上がった。
Kが引き戸を引いて中に入る。
後に付いて入ると、そこにはズラーっと手前と奥に横一列ずつ人が座っていた。
「「「お疲れ様ですっ!!」」」
一斉に立ち、こっちに向かって挨拶をしてきた。
おぉ…
体育会系の挨拶並みで驚いた。
何人いるだろうか、男女混合で男の方が多い。
ざっと見ただけで20人はいる。
Kが上座の空いてる席に向かうと、その隣に空いてる席があったので付いて行った。
そして、Kが座ると周りの人も座り出したので自分も座る。
目の前にはサイコロステーキの様な大きめに切られたチャーシューが入った炒飯を始め、トロッとしたチリソースが浸されているエビチリ、大きいフカヒレが丸々入ったフカヒレスープ、鮑のオイスターソース煮が机に並べられていた。
「皆、お疲れっ!乾杯の前に紹介しよう。この隣にいるのは我がグループの要になる研究所の所長をしてもらうアルカド所長だ。アルカド所長、一言頼む。」
ん?聞き間違いか?今アルカドと聞こえたが…何か言うとか何も聞いてないぞ?
…
まぁ、仕方ない…
「ァ、ゔ、ゔん、ア、アルカドだ。これから一緒に働く事になったからよろしく頼む。」
すると、無表情で誰も反論せずに拍手が部屋中に響いた。
少し喉が乾燥して出にくかったがなんとか言えた。
しかし、なんだこの違和感は…
皆の表情からして何かに恐れている様なそんな感じがした。
続




