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助けて下さいっ!王女様が私の旦那様を狙ってくるんですっ!  作者: まるねこ


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 気が付くと、私は自分のベッドで寝ていた。


「……ここは?」

「シシュカ様! 良かったっ!」

「マティ、私、どうしたんだっけ?」


 リターは急いで伯爵家に戻ったのよね。


 私は安堵したところまでは記憶が残っているんだけど、どうもそこで力が抜けて意識を失ったみたい。


「お医者様からは当分の間、絶対安静を言いつけられております」

「お腹の子供は?」

「無事だそうです。ですが、これ以上無理をするとお子が流れる危険があると言われました」

「分かったわ。お医者さんがいいと言うまでちゃんとベッドで寝ているわ」


 マティは目を真っ赤にしながら話をしている。

 心配をかけてしまったわ。


「マティ、例の彼は?」

「サーディル商会のファーティさんのことですか? もちろんエドが彼から報告書を受け取っております。ファーティさんもシシュカ様のことを心配しておられましたよ」

「そう、良かった。念のために来てもらっておいてよかったわ」


 サラ様たちのお茶会の後、どうしようか迷っていたけれど、やっぱり何かあるといけないと思って公的な記録として書類を作ることができる商会から人をお願いしていたの。


 従者に姿を変え、付いてきてもらって正解だった。


 まさかリアーヌ王女があんなことをするなんて思ってもみなかったわ。


「マティ、エドを呼んでちょうだい」

「畏まりました」


 しばらくすると、エドが部屋へと入ってきた。


「シシュカ様、お呼びでしょうか」

「エド、心配かけてごめんなさい。私は今のところ大丈夫よ。お腹の痛みも治まっているわ」

「よかった」

「エド、ファーティの報告書を読んだと思うけれど、サミ・キルッキ男爵子息にお礼を出しておいて」


「畏まりました」

「それと、ジルは今日も帰ってこないの?」

「はい。残念ながらそのように聞いております」

「エド、大丈夫かな。私、不安なの。このままジルに伝えられずにいるのは。でも、ちゃんとジルに会って伝えたいのに」


「シシュカ様、手紙を書いてはいかがですか?」

「でも、リアーヌ王女のことを考えると、ちゃんと届いているか心配だわ」

「私が旦那様の書類と一緒にジルベール様に直接お渡しします」

「……分かったわ」


 ふと、窓の外を見ると、日も暮れかかっている。


「手紙は明日の方がいいかしら?」

「昼間なら邪魔する人も出てきます。この時間帯なら王宮で働く者も減りますから邪魔する人もおらず、渡しやすいと思います」

「そっか。エド、ごめんね。今からすぐに書くわ」

「あまり無理しないようにお願いします」


 私はマティから便箋を受け取り、すぐに手紙を書き始めた。


 ベッドの上で書くのはちょっと大変だったけれど、仕方がないよね。絶対安静なんだもの。


「では今から責任をもって私がジルベール様にお届けします」

「エド、お願いね」


 エドは私の手紙を受け取り、すぐに部屋を出て行った。


「シシュカ様、お食事をお持ちしました」

「マティ、ありがとう。そこに置いておいて。今日は一人でいたいからもう下がっていいわ」

「……畏まりました。シシュカ様、あまり無理をしないでくださいね」

「そうね」


 マティの気遣いも今は辛く感じる。


 静かに扉が閉められた。


 広い部屋にぽつんと一人。


 私は重い気持ちを絞り出すようにゆっくりと息を吐く。今まで感じたことのない心細さに涙が溢れてきた。


 ジルに会いたい。


 今、どうしているの? 

 リアーヌ王女の言っていたことは本当なの?


 小さい頃からずっとジルと一緒に過ごしていたし、私もジルのことが好きだし、ジルも私のことが好きだってずっと言っていたのに……。


 くるしいよぉ。

 ジル、ジルに会いたいのに。

 会ってちゃんと話をしたいのに。


 もうエドはジルに手紙を渡したかしら。

 ジルは返事をくれるかしら。


 涙を拭い、エドの帰りを待った。


 すっかり夜も更けて辺りは真っ暗だ。

 従者たちも寝静まり、物音ひとつしない。


 ランプの明かりが細々と私を照らし出していると、扉をノックする音が聞こえた。


「シシュカ様、まだ起きていらっしゃいますか?」


 エドの声だ。私はそっと起き上がった。


「起きているわ。入ってちょうだい」


 エドは静かに入ってきたが、手には見覚えのある手紙が見える。


「シシュカ様、すみません」

「どうしたのエド。何かあったの?」

「それが、とても言いづらいことなのですが……」

「なあに?」


「王宮に出向き、シシュカ様の手紙をジルベール様にお渡しはできました。ですが、ジルベール様がシシュカ様の手紙を読もうとした時に王女様に呼ばれたのです。ジルベール様はそのまま王女宮まで行ってしまわれました。


 私はお返事をいただくため仕事部屋でお待ちしていたのですが、王女の従者が来て『ベルロア伯爵子息様は本日はお戻りになりません。お引き取り願います』と告げられ、帰るよう指示されました。


 その際、机に置かれたシシュカ様の手紙に気づき、手紙を持っていこうとしていたので慌てて取り返して部屋をでました。ジルベール様の返事を受け取ることができずすみませんでした」

「……いいの。エド、遅くまでありがとう。もう休んでいいわ」

「畏まりました」


 こんな時間に王女様に呼ばれて帰ってこない。


 ジルが王女様と夜を過ごしているというの?


 嘘よ。

 嘘だと言って欲しい。


 だって、ずっとジルは私以外興味がないっていっていたのに……。


 ううん。ジルはきっとそんなことはないと思う。

 もしかして王女様に無理やり付き合わされているの?


 でも、もしかして、ほんのわずかでも可能性があるとしたら……。


 疑心暗鬼になり、私の心がぐちゃぐちゃになって息が短くなる。苦しい。


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