1プロローグ
宜しくお願いします!
―とある小さな庭の片隅で。
「隣国へ従者として連れていける男をいくつか見繕い、連れてまいりました」
「私の好みを分かっているじゃない。彼と、彼にするわ」
「さすが、お目が高い」
私はふと端にいるやせ細った男に目が留まった。
「……彼は?」
「ああ、あいつですか。使い物にならないんで、荷物持ちをするために付けているんです」
「そうなの?」
私は不思議に思ったけれど、なんとなく彼が気になった。うつろな目。絶望し、抵抗することも止めたような表情をしている。
「名前は?」
「おい、答えろ」
「……アーロン……で、す……」
首輪を引かれ、彼は消え入りそうな声で答えた。
「いいわ。アーロンもちょうだい」
「!? 本当にいいのですか? こやつは確かに顔はいいですが、それ以外、愚図で使い物にならないのですが」
「顔が良ければそれでいいわ。暴れないでしょう?」
「畏まりました」
商人は一瞬驚いたような表情をしたけれど、ぱっと笑顔になり、契約書を出してきた。私はもちろんすぐに書類にサインをし、商人は受け取った。
「貴方達、これからよろしくね」
麗しい男に囲まれ、これからの私はより一層、晴れやかな気持ちで過ごせるわ。
――〇
「ジル、いってらっしゃい」
「……行ってくる」
険しい表情をした夫を見送り、私は息を吐いた。
「奥様、顔色が優れないようですが、大丈夫ですか?」
心配した執事のエドが声を掛けてきた。
「ええ、エド。問題ないわ。少し疲れてしまっただけだもの」
「無理をせずお部屋でおくつろぎください」
「……そうね。今日はゆっくりするわ」
私は侍女のマティを連れて自室に戻った。私はソファへ座り、レースを編み始める。
「シシュカお嬢様、少し休まれてはいかがですか」
「大丈夫よ。こうしてゆっくりとしているし」
「無理しないでくださいね。ジルベール様が心配しますよ」
「もうっ、マティったら。大丈夫なのに。でも今日はマティのいう通りにするわ」
特に悪いところはないんだけどね。
ジルが心配しちゃうといけないし、朝も早いからもう少し寝てから動くことにするわ。
こうして私はベッドに入り、二度寝を楽しむことにした。
紹介が遅れました。私の名前はシシュカ・ベルロア。十九歳。元マレス子爵令嬢よ。ふわふわな金の巻き毛に茶色いどんぐりの瞳で家族からは可愛いと言われているわ。食べることが大好きでちょっとぽっちゃりなのは多めに見て欲しい。
三ヶ月前に結婚した私の旦那様の名前はジルベール・ベルロア。次期伯爵なの。お義父様は領地にいて、ここ王都のタウンハウスに私たち夫婦で住んでいるの。
ジルとはベルロア領とマレス領が隣同士だったこともあって、幼い頃から仲良しでそのまま結婚した感じよ?
ジルはね、背が高くってちょっと焦げ茶色した髪に切れ長の目元にはほくろがある。
彼は細身で今にも倒れちゃうんじゃないかってほど心配になるんだけど、とってもかっこいいの。学生だったころはよく令嬢たちから告白されていたわ。泣き虫なところも私は可愛いと思っているのよ?
ジルとは幼い頃から家族ぐるみの付き合いで家族の仲もいいの。今、ジルは王宮で文官として働いている。今日も面倒そうな表情で王宮に出勤していったわ。
――カタンッ。
天気もよく開け放たれていた窓からふわりと風が入り、揺れたカーテンにペン立てが当たり、倒れた。
「ん? いい風ね。そろそろ起きようかな」
「シシュカ様、改めておはようございます」
侍女のマティがドレスの準備をしてくれている。マティは私の侍女で幼い頃から私の世話をしてくれているの。とっても心配性なのだけれど、優秀な侍女よ。
「今日は天気もいいし、中庭に出るわ」
「畏まりました」
私はドレスに着替えて中庭へと向かう。今の季節は穏やかで日差しも柔らかい。ガゼボで心地よい風に包まれて花を愛でて過ごすのが至福の時間なのよね。
いつものように私はガゼボに向かい、花の香を楽しんでいると、エドが書類を持ってきた。
「シシュカ様、お手紙が来ております」
久々の新作投稿でドキドキしております。




