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「ッッ!!」


しかしいつまで経っても痛みは襲って来なかった。

恐る恐る目を開けると、私の前には一人の男が立っていた。凛とした佇まいの、長身の男。 


私の首が繋がっているのは、彼がドルシェの刃を弾き返してくれたかららしい。


「あ、あなたは……」


「お初にお目にかかります。ミレイユ・エスティアナ嬢」


男はそう言うと、剣を納めて私の前に跪いた。

鮮やかなローズグレーの髪に、抜けるような空色の瞳。そしてなにより、胸に輝く飛竜の国章。

この人は──


「私はシルヴィア帝国が第一皇子、ランフォード・L・シルヴィアと申します」


ランフォード・L・シルヴィア。

男はそう名乗ると胸に手を添えて深く首を垂れた。


シルヴィアとは隣在する帝国の名前である。

その、第一皇子。つまりは。


「シルヴィアの皇太子殿下!?」


「はい! お見知りおきいただいて光栄です!」


「い、いや……」


お見知りおきもなにも。

隣国の皇太子を知らない馬鹿はいない。

ミレイユも噂程度であるが彼のことを知っていた。

曰く、シルヴィアの皇太子は武術の達人である。

曰く、それ故シルヴィアの皇太子はかなりの曲者である。

と。


「な、なぜシルヴィアの皇太子がミレイユ(その女)を庇う!?」


「ん? あぁ、君はたしかタイリスの弟の……理由はどうあれ、第二皇子ともあろう者が女性に剣を向けるなど感心しないな」


「う、うるさい! そこをどけ!! 僕はその女を殺してやるんだッ!!」


「ふむ。そうか。ならば致し方ありませんね」


「ぐぁ……ッ!?」


ランフォードは剣を振り上げて向かってくるドルシェの鳩尾に一切無駄のない動作で拳を叩き込んだ。

綺麗な右ストレートである。

ランフォードの突きをもろに受けたドルシェはそのまま壁まで吹っ飛んで、それからピクリとも動かなくなった。

し、死んでないよね……?


「ミレイユ嬢!」


「は、はひ」


「さきの快進撃、感服いたしました。よもや皇太子暗殺を事前に見抜き、見事下手人を裁いてみせるとは……並の令嬢に成せる術ではございません」

 

「あ、ありがとうございます……?」


「私は貴女のような美しく!強かで!そして何より聡明な女性を探し求めておりました!」


そう言うとランフォードは私の手を取り強く握り込んだ。

にこにこと輝かしいばかりの笑顔である。

しかしなぜだろう。どことなく胡散臭さと底知れぬ恐怖を感じてしまうのは。

後者はおそらく武器を持った人間を素手で叩きのめすを目の当たりにしたからだろう。絶対に敵に回したくない男だった。

潜在的恐怖で私はガタガタ震える。

ランフォードはそれに気づいているのかいないのか、一層強く私の手を握るとそのまま手の甲に唇を落とした。

わぁ、ぷるぷる! じゃなくて。




「ミレイユ嬢、お願いでございます。私と結婚して、シルヴィアの国母になってくれませんか?」


「はぁ!?」

おしまい!


お付き合いいただきありがとうございました!

また機会があれば続きを書こうと思います!

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