第4話 はみゅ、初めての戦利品です!
「ちゃんとスキルツリーを解放してて偉いぞっ! ……にしても、さっきのテクニックスキルは何? あたしのところまで攻撃が飛んできたんだけど。しかも無敵貫通だったし」
はじゅは、驚き半分、呆れ半分といった表情でそう言った。
はみゅはきょとんとした顔で首を傾げる。
「え? 私、スキルツリーは触ってないよ?」
「えっ?」
「この弓のスキルツリーを開いたら、ルートが一つしかなくて、しかも最初から全部解放されてたの。だから、使用可能スキルの方を見て使っただけだよ」
「……えぇ?」
はじゅは目をぱちぱちと瞬かせた。
「ルートが一つしかない装備は珍しくないけど、最初から全部解放されてるなんて聞いたことないよ……。今の初心者ガチャって、そこまで親切なの?」
「うん! 初心者にも優しいね!」
満面の笑みで答えるはみゅに、はじゅは苦笑いを浮かべる。
「ありがとう、はじゅちゃん。このゲームに誘ってくれて!」
はみゅは数年ぶりに、心の底から楽しそうな笑顔を見せた。
その眩しい笑顔に、はじゅの胸がドキリと高鳴る。
「……っ」
頬が熱くなるのを感じ、慌てて視線を逸らした。
「ほ、ほら! ボス討伐の報酬の宝箱が出てるよ! 早く受け取って!」
「ほんとだ! 行ってくるね!」
はみゅは小走りで宝箱のもとへ向かった。
グレートゴブリンがいた場所には、木製の宝箱がひとつぽつんと置かれている。
その前にしゃがみ込み、両手を合わせて目を輝かせた。
「中にはどんなお宝が入っているのかな? 楽しみだなぁ」
ゆっくりと蓋を開け、中身を確認する。
しかし次の瞬間、はみゅは微妙な表情を浮かべた。
「う、うーん……これは反応に困るなぁ」
中に入っていたのは、お金の『1000ドリー』と『グレートゴブリンの毛皮』、そして『グレートゴブリンのお面』などの素材アイテムだった。
いつの間にか隣に腰を下ろしたはじゅが、くすりと笑う。
「レベル70のはみゅには、今さら使い道はないかもしれないけど、いい練習にはなったでしょ?」
「うん! 攻撃をかわして、隙を見て攻撃。ちゃんと覚えたよ!」
「よろしい!」
はみゅは戦利品の中から『グレートゴブリンのお面』を手に取り、不思議そうに眺めた。
「それで、これってどうやって持って帰るの?」
「メニューの『カード化』を選んで、アイテムに近づけるとカードにできるよ。そのあと『カードを登録』で『マイ登録』しないと自分のものにならないから、そこだけ注意ね」
「分かった! やってみる!」
はみゅは言われた通りに操作し、お面をカード化した。
「できたー!」
手の中には、グレートゴブリンのお面が描かれたカードが収まっていた。
「じゃあ今度は、そのカードを取り出してみよう」
「うん!」
はみゅは所持品画面を開き、カードを長押しして上へスライドさせる。
すると、手の中にお面が実体化した。
「わぁ! 本当に出てきた!」
「そうそう、上手い上手い!」
はじゅは満足そうに頷く。
「カードのまま取り出したいときは、『カードのまま取り出す』を選べばOKだよ」
「便利だねぇ」
「貸して?」
「はい」
はみゅからカードを受け取ったはじゅは、自分のバッグにしまおうとした。
しかし、カードはすぐにぽんっと弾き出されてしまう。
「わっ」
「この通り、持ち主以外のバッグには収納できないの」
「へぇ〜! しっかりしてるんだね!」
はみゅは感心したように目を丸くした。
そして、はじゅが持っているバッグに視線を向ける。
「そのバッグ、すっごく可愛いね!」
はじゅが嬉しそうに胸を張った。
「でしょでしょー! イベントを頑張って手に入れたんだよ!」
黒を基調としたバッグには、ピンク色のリボンがあしらわれている。
可愛らしさと高級感を兼ね備えたデザインだった。
「このリボンを押すとカード化して、横のポケットに収納されるの」
「すごーい!」
「まったく同じものは復刻しないと手に入らないけど、似たようなバッグなら街で買えるよ」
そう言って、はじゅはにっこりと笑う。
「今度、はみゅにも買ってあげるね」
「わーい! ありがとう、はじゅちゃん! 楽しみにしてる!」
無邪気に喜ぶはみゅを見て、はじゅの頬が自然と緩んだ。
「えへへ。あたしも、はみゅと買い物するの楽しみにしてる」
はじゅは時間を確認すると、少し申し訳なさそうな表情になる。
「ごめんね。これからギルドバトルの時間なんだ。今日はここまでにしよう」
「うん! 疲れたけど、すっごく楽しかったよ!」
はみゅはにこっと笑った。
「改めて、このゲームに誘ってくれてありがとう」
その言葉に、はじゅも優しく微笑む。
「どういたしまして。また現実でね!」
「うん! またね!」
はじゅの姿が光に包まれ、ふっと消えていく。
それを見送ったはみゅは、名残惜しそうに周囲を見渡した。
「……楽しかったなぁ」
ぽつりと呟いた。
現実ではなかなか味わえなかった、誰かと一緒に遊ぶ楽しさ。
「次はどんな体験ができるかな〜」
そんな期待を胸に、はみゅは静かにログアウトした。




