@3
朝五時半。
かなり型の古くなった目覚ましが私の安眠を終わらせるべくジリリリと小うるさい音を立てた。
「ていっ。うるさい」
盾に真っ直ぐ針の並んだ時計のてっぺんを叩きつけるようにして音を止めると、ゆっくりと布団から這い出る様に起きだした。
今日は月曜日だ。
お母さんはもう起きているみたいで、一階からは時折食器のこすれる音と何か焼ける美味しそうな音が聞こえてくる。
学校の制服へとのんびり着替えを済ませると、一階へと続く階段を下りていく。まっすぐな階段は、一度転んだらそのまま下まで転げ落ちてしまいそうでそんなに好きじゃない。
「おはよー、お母さん」
リビングの扉を開け、キッチンにいるお母さんに起きたことを伝える。
「おはよー」
お母さんは私の方を向いて声を返しながらも手慣れた様子で卵焼きをひっくり返す。
いずれ私もやらなきゃいけないんだなぁ、やだなぁとか思いながら椅子に座り、朝ごはん用に用意されていた牛乳の入ったマグカップに口をつけながら朝食が出来るのをいつものように待っている。
いつもどおりの朝の一幕。
けれど、そんないつもどおりは唐突に終わりを告げた。
ピンポーン。
……誰だろう、まだ朝早いこんな時間に。
そう思いながら座っていると、もう一度呼び鈴のボタンが押された音が聞こえてきた。
二度目ってことはピンポンダッシュじゃなさそうだ。
「お母さん忙しいから夜夢が代わりに出て」
「えー……」
「えー、じゃなくて。あんたの弁当誰が作ってると思ってるのよ」
「美人の素敵なお母様でございます」
「そうよ。分かってるならお願いね」
ちぇ。お世辞もだめだったか。
私は寝起きのまだあんまりはっきりしてない頭で玄関へと向かう。ピンポンピンポン何度もうるさいなぁ。髪もとかしてないし、正直人前に出たくないんだけど。
「はいはい今でますよーっと」
がちゃり。と鍵をあけ、扉を開く。
「おはよー。今日からよろしくねー」
がりゃり。
私は扉を閉めて、併せて鍵もしっかりとかける。
おかしいな。昨日夢で見た顔と同じ顔が玄関先に立っていたんだけど。
「夢じゃないよ! 夢じゃないから! 夜夢ちゃん開けてー!」