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沈黙は金 雄弁はプラチナ  作者: 中田あえみ
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キャリアプラン 7

取り敢えずもう遅いので、リッキーとマギーは退社することにした。もう夜9時だ。こんなに居残ったのは、本当に久しぶり、いや、キララ紡績に来て、初めてかも知れない。


リフト(エレベーター)が中々来ない。もう9時だというのに、このビルの中でいったいどれくらいの会社が、居残り残業しているというのだろう。


リッキーも「中々来ませんね……」とつぶやき、携帯で彼氏に連絡し始めた。もう付き合って10年になるとかで、学生時代からの付き合いだという。

実は、オフィスの中はまだ明るい。IT部門の人間たちと、経理関連の人たちはまだ残っている。ネイトはこれらも任される、という事は、マギー自身も明日からは巻き込まれるのだろう。


チン


ようやくリフトが来たが、中はほとんどいっぱいだった。皆さん、遅くまでご苦労様です、マギーとリッキーは目が点になった。

キララ紡績の入ったビルは、いわゆる自社ビルだが、自社で使う階をのぞき、他の階は他社に貸し出している。男性だけでなく女性も複数名おり、昨今は女性も責任を任され、仕事での残業も珍しくなくなったのだな、とマギーは改めて思った。


現在45歳の自分が、まだ20代そこそこで働き始めたころは、女性の管理職といえば課長職が精いっぱいで、しかも、既婚者となったら、もう昇進の可能性はほとんどなかった。いつか夫の転勤についていくかもしれないし、家事は基本女性がやるためどうしても残業や出張は難しい。子供が出来たら、長期の産休でブランクも出来る。結婚したら、仕事は片手間となっても仕方ない。人間のエネルギーというものは制限があるし、時間も1日24時間しかない。どれを優先していくのか、取捨選択が求められるのが現実だった。


だから、マギーは秘書職に満足していた。

秘書ならば、最悪派遣社員として仕事を続けられるし、上級秘書として秘書検定も準1級を持っている。自分は童顔に見えるし、外資系勤務の経験も積んだので、外国人上司のアシストも出来るはず。高い給与は望めないが、その分切られる事も少ない……


……はずだった。しかし、世の中はマギーが考えるより早く変化した。


まず、女性の管理職が珍しくなくなった。課長職は当たり前、部長や社長になる女性すら出てくる。男性も産休を取れる有様。しかも、マニュー国は7年前、フィリピンやインドネシアと雇用条約を結び、家政婦、看護士や給仕員など、ある技能のある人間に3年間の雇用ビザを与えてマニューに呼び込み始めた。


既婚女性が、家の外で働ける環境を整え始めたのだ。

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