白金と銀 6
首都ハイランド
人口50万人都市で、議会や最高裁判所、総督府などがあるものの、緑豊かな比較的新しい都市だ。
実は、キララ市の方が歴史は古い。
150年前、当時の総督と議会が、キララ市からハイランドへ遷都を決定した。政治はハイランドへ、経済はキララへ、というマニュー国家プロジェクトの一環だ。
地方から様々な人たちが、政治目的にハイランドへは訪れるが、地元との関わり合いはほとんどない。キララは経済活動のため、世界中から人が訪れ、人口は公称1000万人だ。
マギーは、家族と離れるにあたり、一人でもずっと仕事があることを条件に場所探しをした。その結果、キララへ移ったのだが、この頃は海外転職もいいかな、と思い始めた。社内でも外国人はいるが、自分とそんなに違いがあるとは思えない。
親は反対するだろうか。
マギーはCVをにらみつつ、少しだけ考えた。
反対しそうだが、それを気にしても始まらない。ハイランドへは戻る気もないのだし。
そうだ、少し情報収集をしなければ。
ネイザン・ジョーンズ副社長について、どういった経営理念を持っているのか。
今日、人数や経費などの基礎データを提出したが、マギーも確かにキララ紡績は販売費用がかかりすぎていると感じたのだ。
しかし、トモミが無駄な費用をかけたとは思えなかったので、経理人事から販売管理のデータを貰ってみた。すると、明らかに元社長の取引先への費用が高い。
しかも最新商品を取り扱っている所ばかり。
どうしてこうなったのかは法務総務に任せるとして、マギーは取り敢えず、ネイトの『リストラ』案に必要な基礎データを取り出し、メールで報告した。
受け取った、との確認メールが来たが、それよりも明日の引き継ぎのためのリッキーとアラン部門長を朝9時半から、経理も噛むために、ケイト部長も午後2時から押さえないといけないし、リッキーは総務法務室のアレックス副室長と先に打ち合わせをしなければならず、諸々の準備をしていたので、ネイトとは何も話さずに帰宅時間となったのだ。




