白金と銀 5
「それでは早速資料を揃えます」
マギーは答えて、一礼したが、ネイトは続けた。
「管理部門長の兼任が決まったので、その引継ぎは明日だそうだ。マギー、あなたも同席してくれ。後でメールが来るので、それを転送しておくから」
「……アラン部門長は?」
思わず口が開いてしまったマギーにも、淡々とネイトは、
「総務法務室室長だ」
「分かりました。失礼します」
マギーはぐったりして席に戻ると、そのメールが転送されていて、スケジュールをリッキーと調整しておくように、とのメッセージもついている。
仕事ぶりは今のところ問題はない。マギーはネイトの評価を心の中で始めた。
ネイトも、マギーの評価をしていた。心の中で。
……反対しなかった。いや、顔色一つ変えなかった、リストラの話を聞いて。
過去、工場長になった時から、多少の人事調整はやってきたが、周囲は必ず何らかの反応を示した。
しかし、スミス社長と近いはずの、マギーは、この新任の指示に何も異議を唱えなかった。年上女性の部下だから、多少扱いにくくもなるかと思ったが、今のところは何もない。いいことだ。
今日はユミとコンサートに行く日だな。明日は遅くなりそうだから、今日しっかり会っておかないといけないな。そうネイトは思いつつ、自分の携帯端末でカレンダーを確認した。
5年という約束が、10年に延びた。兄は、造船部門の拡大が楽しいらしい。ここに着任する前に「お前も勝手に自由にやっていいぞ」と言われてしまった。
勝手?今更?
そしてその兄の言葉を、その通りに信じる自分でもない。弟として、ジョーンズ家を支えるのが、自分の役割である。自分の意思など何もない。なくていい。
ふと、部屋の外のマギーとリッキーを見て、ネイトは思った。
マギーも……自分の役割だからと割り切って、自分の意思など持たないで、会社にいるんだろうか……。
だから、何だと言うのだ。




