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お祖母さんと謎の孫  作者: まきの・えり


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 2026年1月23日(金)のことだった。

 半分寝ながら、ずっと電子書籍のことを考えていた。

 アナゾンで電子書籍を出版できるらしい。しかも、無料で。

 いつ誰から、または、どこで知ったものか調べようと、日記用の下書きを調べても、不明だ。

 5歳の時から、日記とおこずかい帳をつけてきた。

 小学生になって、日記は日記、おこづかい帳は家計簿に変わった。

 主婦みたいな子供だ。

 読むことと書くことが好きな子供だった。

 5歳の幼児決断として、「作家になる」と密かに思った。ま、余談だ。

 下書きを見れば、2024年10月3日(木)から、日記が下書きだけになっている。

 それまでは、毎日、寝る前には、日記をパソコンの記録に打ち込んでいたが、ついに、下書きだけとなったようだ。

 面倒くさくなったようだ。いや、自分としては、一時的に休んで、また、一挙にパソコンに打ち込もうと思っていたが、その日は、未だに来ていない。

 アナゾンの電子書籍にするというのは、しかも、無料で、ものすごい朗報だった。

 早速、私の本を出版してくれた、香蘭社とマガジンカオスに連絡して、私の本を電子書籍にしていただけませんか? とお願いした。

 お願いした翌日か翌々日には、「そんな予定はありません」との返答があった。

 早い! 即決だ。

「早速のお返事、ありがとうございます。では、ほかで電子書籍にしても大丈夫ですね」

 この返事が欲しかった。

 私は、今から六年前に、「作家になろう」というサイトに、自分の小説達を避難させた。

 それまで自分の作品を載せていた、アフーのHPが突然閉じられることになり、もはやHPを作った頃の知識も熱情もどこかに行ってしまった私……

 新たに作ることも移行させることもできず、「作家になろう」という所に、一時避難させたつもりだった。

 そのまま六年間が過ぎてしまった、というわけだ。

 何をしていたかって?

 この十二年は、徒歩20分のジムで、ストリートダンスやフラダンス、ヨガをやっていた。

 そこが潰れてからは、徒歩15分のジムで、ベリーダンス、ヨガ、ダンス、フラダンスをやっていた。

 時々小説を書こうとはしたけれど、もはや一心同体状態のワープロも無く、PCでは、書いても続かなかった。

 前のジムでは、映画化や文庫化があったこともあって、私が作家だったと知っている人達もいたが、今では誰も知らない。

 

 そうそう。今年の1月23日のことだった。

 ついつい、昔語りをしてしまった。

 ピンポーンとインタフォンが鳴った。

 アナゾンだな、と思って、玄関のドアを開けた。

 そこには、アナゾンの宅配便の白猫ヤマトの制服を着た青年が立っていたが、荷物を持っていなかった。

 お互いに、ジッと顔を見ていた。

 青年は、かなり年齢は不詳だが、二十歳以下ではなく、三十歳以上ではないという感じだ。

 ハンサムというほどではないが、醜男というほどでもない。ま、どこにでもいる青年だ。

 背は、私よりは5センチは高い。160センチ余というところか。

「お邪魔します」と言うと、玄関で靴を脱いで、中に入ってきた。

 待てよ、白猫ヤマトと思うが、あっけに取られて、ことばが出ない。

「あ、あ、あ」と言うばかりだ。

「お祖母ちゃん、広いところに住んでたんやね」

 お婆ちゃん?

 言うにことかいて、お婆ちゃん?

「あ、あ、あなたにお婆ちゃんなんて、呼ばれる筋合いはないわ」

 やっとことばが出たが、言うのは、そこじゃないやろ。

「何言うてんの、お祖母ちゃん」

 あ、あ、頭の変な青年?

 わ、わ、私の頭が変になった?

 噂に聞いている認知症ってやつ?

「お父さんとお母さんが、様子を見に行って、て言うから来たんやんか」

「ああ」とやっと、私は、自分を取り戻した。

「部屋を間違えたんやね」気の毒に。

「何言うてんの、お祖母ちゃん。333なんていう数字、間違える訳がないやん。それに、表札にもしっかりと名前が書いてあるし」

 これは、もしかして、アナゾンの宅配便を装った強盗?

 または、なりすまし詐欺?

 でも、残念でした。

 うちには、詐欺されたり、強盗されるほどのお金は無いのよ。

 青年は、勝手に各部屋を開けて見ている。

「どこがいいかな」

「何してるのよ」と私は、やっと言った。

「どの部屋がいいか、探してんの」

「どういうつもりよ」ほんまに。

「僕も一人暮らしをした方がいいて、親が言うし。けど、突然一人暮らしをさせるのも心配やから、お祖母ちゃんの家に泊めてもらったらいいて言われて来たんやけど」

「あのね」と私は、噛んで含めるように言った。

「私には、子供はいてないし、ましてや、孫なんかいないのよ」

「えええ!」と青年は、本当に驚いたような声を出した。

「本気で言うてるん?」

「本気も何も、本当のことやし」

「ああ、そうなんや」と青年は、しばらく考え込んでいた。

「それやったら、こういうことで、手を打たへん? 実は、僕は未来から来た、お祖母ちゃんの孫。未来というても、平行未来で、お祖母ちゃんには、子供がいてる系の未来」

 そんなドラマか小説みたいな話があるもんか、とは思ったが、反論するのも面倒くさかった。

 それに、その平行未来というのに、微かな好奇心がわいた。作家のサガか。

 これは、小説のネタになるかもしれない、おいしい話なのかも。

「わかった」と私は、仕方なく(という感じを装って)言った。

「で、私は、その未来では、結婚してる訳やね」

「そうそう。そういうこと」

「ええと、あのう、私は、どういう人と結婚してる訳?」

「写真見る?」

 え!? 写真がある?!

「見る!」

 スマホの写真を見ると、わあ、十八の頃に好きだった、吉沢君が老けたら、こうなるだろう、という写真だった。

「そっちの世界では、そうなんやね」

「お祖父ちゃんは、もう亡くなってしまったけどね」

「えええ! 亡くなってしまったんか……」

「うん。お祖母ちゃんとすごく仲良しやったから、お祖母ちゃんはがっくりしてしもたよ」

「そうやろな。なんか分かるわ」


 ここから、謎の孫との同居生活が始まった訳だった。

 


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