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【悲報】婚約者の病弱な妹は本当に病弱でした。  作者: マンムート


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8/8

8 これはマジだ!


 リキシャ4台をつらねて、ビントン侯爵邸へ向かう。


 大した時間もかからず、到着。


 さすが侯爵邸だけあって、でかい!


 ってかさ、婚約者の家なのに、ほとんど来たことがないってさ、この婚約、終わってない?


「はぁぁ……ドキドキしてきた……」


 ついに、存在しているかも不明だった婚約者の病弱な義妹に体面するのだ!


「マリー。落ち着きなさい」


「マリー?」


「何を寝ぼけたことを。貴女の名前ですわ」


「え……あ!」


 そうだったそうだった。


 今のわたしは、一学年のマリアンヌだった!


「だ、だいじょうぶだよサラ。ドキドキしてるだけだから」


「サラ? 誰のことですの? わたくしはソルボンヌでしてよ」


「あ……そ、そうだった。じゃなくて、そうでしたわ、おほほ」


 ヤマザル令嬢を先頭に、正門へぞろぞろと向かう。


 既に話は通してあるのか、何も誰何されずに正門を突破。


 ちょっと拍子抜け。


 ヤマザル令嬢が顔パスなのはいいとしても、わたしたちが誰かくらいは確認しないの?


「辺境伯家の娘であることが、すでに保証ですもの」


 サラに疑問を見抜かれた!


「だけどさ、なーんか変じゃん。わたしにはあんなに頑なに会わせようとしなかったのにさ」


「……確かにそうですわね。」


 そんなことを話している間にも、ヤマザル令嬢は、案内もされていないのに、ずんずん進んでいたが、ふと立ち止まった。


「サビーはあそこにいるよ! 2階の右から4番目の窓のところに!」


 カーテンが閉まっている。


「陽にあたるのがよくないんだって。だからいつも締め切り」


「……」


 市場でばくばく食べていた女が? 



 わたしらが玄関から入ると、侍女がうやうやし出迎えてくれた。


「わたしは、ビントン令嬢つきのクラリスと申します。では、ご案内いたします」


 今度は彼女を先頭に、巨大なお屋敷を進んでいく。


 流石は侯爵家。でかい。


 ……にしては、ちょっと、ここって殺風景じゃん?


 廊下を幾つも曲がっても、景色が単調だ。廊下窓扉廊下窓扉廊下窓扉。


 確かにでかい。でも、なんというか、飾っているものがなさすぎ?


 まぁ、うちみたいに、骨董品がこれみよがしに飾られまくってるのも、アレだけど。


「……いろいろあるのでしょう」


 とサラが言う。


「あー、いろいろね。了解」


 ぶっちゃけ、金がないのだ。


 うちの国のお貴族様たちは、えらそうな割には金がない。


 なんでも昔、貴族が勢いがよくて、王家は手を焼いていて。


 んで、いろいろな方法で貴族の手足を縛ったんだそうだ。


 細かい官職をいっぱい作って、上下を作って、プライドを刺激させて争わせたり。


 商売は、民を指導するような高貴な者たちが、すべきことではない。みたいなことを宣言して。


 実質的に商売を禁じたり。


 そうなると、農民からのあがりや、鉱山資源の採掘だけで、貴族は食っていくことになる。


 商業の規模がちいさかったころは、それでもよかったのだけど。


 で、気づいた時には、富が富を生んだりする時代になっていて、商売してない貴族は大変なことに


 今ではなしくずしに、商売してもいいことになってるけど……意識は簡単には変えられない。


 ようやく侍女さんが立ち止まった。


 ノックをして「お嬢さま、客人をお連れしました」


 そういって扉を開く。


 ふわり、と薬品のにおいがした。


 病人がいる部屋の香りだ。


 ベッドには、あおざめた白いはだの女の子が、埋もれるようにして寝ていた。


 枕元に広がる長いつややかな黒髪。青みを帯びた大きな瞳。


 細身な、というより、かぼそい。わたしでも片手で折れそう。やらんけど。


 ヤマザル令嬢が、繊細な美少女の耳元で


「サビー! きたよー!」


「……」


 うすく血の気の失せた唇がふるふると震えて、かすかな声が応える。


 気配みたいな声で、何を言ってるか判らない。


「今日はねー。わたしの婚約者のジェリーを連れて来た! あと、友達も! ソボロとマリモ!」


 誰だよそれ。


 マリアージュとソロボンヌでしょ。


 貧乏画家も挨拶した。


「オリビアの婚約者のジェラルド・バランダインと申します」


「……」


「ほら、ふたりともこっちへ来て! こっちがそぼろで、あっちがマリモ!」


 だから誰だよそれ。


 サラは、伏せる美少女の枕元へ静かに近寄ると、


「第一学年のソルボンヌ・アンカーと申します」


「……」


「ええ、ソボロではありませんわ。そして、こちらが」


 わたしも、美少女の枕元へ、なるべくそっと近づく。


「マリモではなくて、マリアンヌ・ダコスタと申します。よろしくね」


「……サビーナ・ビントンともうします」


 これだけ近づくと、気配のようだった声が、ようやく聞こえた。



 まじかで、うわさの義妹を見ていやでも悟った。


 透けそうに青みを帯びた白い肌。


 血の気のうせた薄いくちびる。


 白い肌のせいで、黒い瞳が黒真珠のようにすら輝いて見える。


 パジャマで隠されてはいるが、骨が浮き出しそうに細い細いからだ。



 これ、ムリ、だわ。


 これ、マジ、病弱だわ!


 市場で、ばくばく買い食いはできんわこのひと!







 












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