策略
システムエラー
システム変更
プレイヤーの不死性を解除
プレイヤーのリスポーンを解除
魔物のレベルを最大に
プレイヤーの特殊スキルを解除
エラーNo.1296プレイヤーのスキル、解除できませんでした。
禁止事項468に抵触、、権限を一時停止します。
「まずいわ。」
「どうしたの?」
ルルの顔が、青ざめている。
どうしたのだろうか。
「魔王が私から奪った権限を使って、システムの変更を行なっている。これでは、死人がでる。」
ルルの手が見えないくらいの速度で、空中を叩き、現れたスクリーンを弾いていく。
「最終権限を発動。………成功。不死生を再起。最終システムブロックを形成、権限を完全に独立させる。」
もはや、何が起こっているのか分からないが、ルルが懸命に俺たちのために頑張ってくれていることはわかる。
「よし。これでもう手を出せない。」
「ど、どうだった?」
「システムの波に漂う意識、それはこの世界とあっちの世界を繋ぐシンクロベース、それがこの高度な仮想現実のなかに、命を繋ぐことを実現している。そして、それが壊されれば元の世界で意識はもう戻らない。つまり、死を意味する。」
「死……って…….」
「でも、大丈夫。最終権限を使って、完全なシステムブロックをかけた。これで、もう誰も手を出せない。それどころか、この世界に外的に干渉できるものは誰1人いなくなった。こちらの世界からも、あちらの世界からも。完全な世界の形成がなされた。」
「な、なるほど……」
「つまり、ここからは実力勝負。魔王軍との一騎打ちってわけ。」
「なるほど!!分かったぜ!!!要するに勝ちゃいいんだな!!!」
「この世界を作ったって、俄にはまだ信じきれていなかったけど……本当なのね。」
「亡くなった人って生き返るの?」
俺と、ルルは後ろを振り返る。
そこには、少し目を虚にした、ヤテンさんがいた。
「……ごめんなさい。この世界で生まれて、この世界で亡くなった人に関しては、干渉はできない。時間は元には戻らないの。ごめんなさい。」
「そ、そう。……変なこと言ってごめんね!!ほらほら、行きましょう!」
ヤテンさんは、俺とルルの背中を叩いて笑顔で前に駆けていくのだった。
その背中はどこか寂しげだった。
その後も、ルルはスクリーンを動かしていた。
「よかった。システムトラップはすでに発動している。魔物が力を使って、市民を襲うことはできない。プレイヤー以外の勢力と敵対するときには、レベルが反転する。これで、迂闊なことはできないはず。」
「ルル、大丈夫か?何が俺たちにできることはないか?」
「ごめん。ありがとう。大丈夫だと思う。」
ルルは大きく溜息をついて、言った。
「魔王に権限が移った瞬間に、もっと警戒すべきだった。なんの知識もないまま、そこまでシステムを操ることができるなんて、全く想定外だった。でも、平均を大きく逸脱するような無理なシステム変更はそれなりのリスクを伴うように設定していたことが、功を奏した。完全な隔絶は世界の歪みを引き起こすけれど、調整の範囲内でなんとかなったみたい。」
「なるほどな……まだよく分かんないけど、ルルはこの世界のために頑張ってくれたんだな。」
「よく分からないけれど、ありがとう。」
「えぇ、ごめんなさい。少し疲れたみたい。休んでもいい?」
「もちろん!」
「もちろんよ!」
ヤテンさんが張ってくれたテントの中で、俺たちは話し合っていた。
「ふむ。素空の言うことも一理あるな。」
「そうだ。なんかレベルが反転したって、魔物のレベルが最大まで上がったっていうんなら、プレイヤーじゃない市民がめちゃくちゃ強くなるんじゃないか?そしたら、強くなったみんなで攻め込めばいいんじゃ……。」
「……ことはそう簡単ではないよ。」
気づけば、テントのお布団の上で寝ていたルルは起き上がってこちらを見据えていた。
「市民が魔物に圧勝してしまったとして、果たして平和が訪れると思うかい?」
「……まぁ、魔物が可哀想なことになりそうだな。」
「そうだ。人はみなが善人というわけではない。むしろ、これまでの恨みや、禍根から魔物の根絶を図るだろう。そうすれば、悪いことをしていない善良な魔物まで過剰な排斥を受けることになる。また、魔物と人間のハーフも多く存在するが、そう言った人々も多く迫害を受けるだろう。」
「確かに……私たちエルフも例外とは言えないだろう。比較的善良なものが多いとは言え、全く迫害から逃れられるとは言えないな。」
「じゃあ、やっぱり俺たちが頑張るしかないんだな。」
「あぁ、それにどうやら素空のアビリティスキルだけ保護されたようだ。他のプレイヤーは、外界からのものだと見分けられた瞬間に、抵抗もできないまま捕えられるか抹殺されるだろうな。」
「抹殺……殺されても大丈夫なんだよな?」
「あぁ、シンクロベースに意識が保護される。私が外に出ることができれば、時間はかかるが助けられるはずだ。」
「そうか、よかった。それにしても、どうして俺の、スキルだけ無事だったんだ?」
「そ、それは………」
ルルが顔を赤くする。
ヤテンさんは話す。
「素空が特別だからよ。ルルは特別にあなたの力を守ってくれてたんじゃない?」
「そ、そうだったんだな。ありがとう、ルル。」
「いや、と、ともかくだ。希望は繋がった。市民が魔物に強く出れるようになったとは言え、魔物も代償さえ払えば相手が即死するような強力なスキルを多く抱えている。つまり、市民と魔物の争いが始まれば、血みどろの戦いになる。」
「俺たちが止めるのは、魔物だけじゃなく、市民もってことだな。」
「そう。私たちが勇者として、魔物や人々のみんなを導かねばならない。それが唯一、この世界が救われる方法よ。」
「はぁ……なかなか大変なことになったわね。よし!じゃあ、ともかくご飯にしましょう!もう夜も遅いわ。」
「そうだな。」
「えぇ。」
ザッと、
影が忍び寄る。
「魔王様、私めが大金星をあげて見せます!ヒヒッ……ヒヒヒッ………!」