深夜の出来事
「うぅーん、もう食べれない……」
テントの中から寝言が聞こえる。
女の子2人がテントということで、俺は外で見張りをすることになった。
「ふぁ〜、流石に眠たくなってきたな。」
ふいに、
ガサッ、と草むらから音がした。
「なんだ!!?」
「ピー!」
見ると、そこには小動物がいた。
ウサギにちっこい角の生えたやつだ。
「はぁ……」
だが、こいつではない。
隙を窺っていたのだろう。
後ろから走ってくる音がする。
殺気だ。
「やぁーー!!!!」
俺は体を翻し、奇襲を避けた。
「なっ!?」
そいつは、ズザーっと頭から倒れる。
「何者だ?」
見た感じ、ゴブリンだろうか?
「き、貴様、魔王様の言っていた勇者だな!!
覚悟しろ!!!」
「はぁ、やめておいたほうがいいよ。」
「だまれ!!!うおおぉぉーー!!!!」
俺はそいつの振りかざしたナイフを持つ手を掴む。
「ぐっ!?」
「ここら辺でやめておいたらどうだ?これ以上荒立てないなら、見逃してやるから。」
「何を!?なめんなよ!!!」
そいつは、ナイフを離すと、足で蹴り上げ、俺の顎を狙った。
「おっと、危ねぇ。」
「ちっ!?」
最後の攻撃をかわされたからか、動揺して、汗が滲んでいる。
「くっ、殺せ。素手でお前に敵わないことは、分かっている。」
「お前はこのまま離したら、また俺たちを襲いにくるのか?」
「……あぁ、そうだ。何度でもお前らを殺しにくる。」
「そうか。」
俺は拳を振り上げる。
そいつは、ビクッと震える。
「父ちゃん!!!」
草むらから、小さなツノの生えた子どもが出てきた。
「なっ!?な、なんでこんなところに!!!」
「お父さん、心配になってついてきちゃったの。そしたら、ゆうしゃ?って人に攻撃して……すいません。勇者さん、お父さんを許してください。」
「あ、あぁ。」
俺は手を離す。
そいつは一目散に、子どもの元に駆けた。
そして、肩を掴んで強く揺さぶる。
「なんできた!!!絶対に家にお母さんといるように言っただろう!!!!」
「だって、なんだかお父さんの顔こわかった。嫌な予感がしたから、ついてきちゃったの。」
「うっ、うぅぅ。」
そいつの肩が震える。
涙で、ぐしゃぐしゃになった顔をこちらに向け、頭を地につけた。
「勇者様、どうか、どうかお許し下さい。今になって、家族が、自分の命が惜しくなった。生きていくために、仕方がなかったんです。どうか、今回は見逃していただけませんか?」
「あぁ、もちろんだ。もう悪いことはするなよ。」
「はい。これからは、慎ましく家族と暮らしていこうと思います。」
「……生きていくためにって、さっき言ってたけど、何か困ってることがあるんだったら、聞くぜ。できることがあるかもしれない。」
「そ、そんなっ!?そんなこと許されません。私たちは魔族で、あなた方は勇者なのですから。」
「そっか。じゃあ、これ。」
「これは……?」
「小銭袋だ。ちょっとしか入ってねぇけど、腹の足しにしてくれ。」
子どももそいつも見るからに痩せ細っていた。
きっと、明日食にありつけるかもわからないような状態なのだろう。そして……
「やっぱり、俺たちを倒したら何かもらえるとかあるのか?」
「えぇ、魔王城に招待され伯爵の地位を得ることができ、生涯の安泰を保証されます。」
「そ、そっか。」
そういう感じか。なんかやっぱり、各々の魔物にも事情があるんだな。
「じゃあ、2度と襲ってくるなよ!!夜とか、ほんとびっくりするからな!!ほんとに、ほんとに、くるなよ!!!父ちゃんと、幸せに暮らすんだぞー!!」
「はーい!ゆうしゃさん、ありがとー!!!」
「本当に、ありがとうございました。」
そいつは深々と頭を下げて、去っていった。
「相変わらずだね。素空くんは。」
「んっ?」
後ろからルルの声が聞こえた。
どうやら目を覚まして、起きてきたようだった。
「ごめん!うるさかった?」
「いいえ、見ていてさすが私の好きになった人だなぁって。」
「い、いや、そんな……」
俺は恥ずかしくなって、顔を手で軽く覆い隠す。
「あなたなら、きっとこの世界を救えるわ。勇者様。」
「……あぁ、救ってみせるよ。」
テントの中、私はベットの中で考えごとをしていた。
(エルフってね、耳がいいのよー。)
一応、丸聞こえである。
素空は相も変わらずといった様子だった。
「魔物に優しい勇者様かー。」
魔物は狡猾なものが多い。私がちゃんと見ていないと、いつ寝首をかかれてもおかしくない。
「私がしっかりとしないとね。」
布団をぐっと、頭に押し上げ、再び眠りについた。




