急げ
「俺、戻らなきゃいけないんだ。」
「はぁ?」
浅谷は、呆れたような、素っ頓狂な声を上げる。
「あんた、何馬鹿なこと言ってんの。夢でも見てたんでしょ。ゲームの世界に囚われてたなんて、そんなことあるわけないじゃない。」
「いや、あったんだよ。確かに。」
「夢よ、夢。さぁ、早くお家に帰りましょ。」
「えっ、浅谷も来るの?」
「当たり前よ。お母さんにも、了承済みだわ。」
浅谷は腕を組んでくる。
緊張………違う違う!!してる場合じゃない!!!
本当に早く戻らなければ、
「でも、どうすればいいんだ?」
「何言ってんのよ。ほら、信号渡るわよ。」
信号の向こう側、黒い服、黒いハットをかぶり、杖をついた老人が俺のすぐそばを通り過ぎる。
カランカランと、何かが落ちた音がする。
指輪だ。
俺は拾いに戻る。
「おじいさん、落としましたよ。」
「あぁ、すまないね。親切な坊や。申し訳ないが、その指輪、君に受け取って欲しいんだ。」
「素空ー!信号変わるよー!」
「え、えぇ!?なんで、そんな受け取れませんよ!」
「よく見てごらん。」
俺は指輪をよく見る。
「っ!!?」
この指輪は………
「さぁ、行っておいで。またしばらくの別れになるだろうから、しっかり挨拶はしておくんだよ。」
「あ、ありがとうございます!!!」
俺は、ダッシュで浅谷のところに戻る。
「全く、人間は世話が焼ける。」
老人はまるで最初からいなかったかのように、霧のように消えた。
「くっ!?」
飛来するガーゴイル。
その数は万を超えた。
「防護光壁が持ちません!!!」
「浄化の門、破られました!!!地上からの侵入も許します!!!」
数、数、数……魔物の総力を向けられた攻撃に、
もはやなす術がなかった。
彼女達を除けば。
「炎と風、炎嵐!!!」
炎の巨大な竜巻が上空のガーゴイル達を巻き込み、数百体を倒した。
「雷と水、雷壁衝圧!!!」
巨大な水の壁が四方を囲み、特大の電流が流され発光したそれは、一瞬のうちに逃げ場なく、千体近くの魔物を飲み込んだ。
「神の光、そして闇の力よ!邪悪を包み!祓え!!!」
数千体、ガーゴイルを包んだ超特大の闇の球体に向けて、ヤテンは光の矢を放つ。
「浄化球、光来!!!」
闇の球体の爆散と共に、空全体が光に包まれ、周囲数千のガーゴイルも巻き込んだ。
「ルル!!!」
「はい!!」
ルルが今度は前にでる。
「インシデント/アクター!!」
ガーゴイルがお互いを攻撃し始める。
「ギガ・ゲシュバルト!!!」
固まったガーゴイル達が地上に落とされる。
「グングニル」
巨大な槍が上空に現れる。
「終わりだ!!!!」
地上に巨大な槍が降り下ろされる。
ゲシュバルトで動くことのできない地上の魔物達は、その都全体にまで轟く音の衝撃を、まともに喰らう。
もはや、地上に動ける魔物はいなかった。
「ふぅ………、ごめん。もう動けない。」
ルルは膝から崩れ落ちる。
ヤテンは急いで、ルルの体を受け止めた。
「よく頑張ったわ!!ゆっくり休んでいて。」
飛来する。一匹の魔物。
それは、王都で見たあの悪魔だった。
「マルギス………」
「久しぶりだな。」
四天王が、降り立つ。
かつて、世界をたった1人で落としかけた魔物は、
再びその侵略に乗り出した。




