偏差値?4 タルタロス 半魔の女 後編
7000字。残酷な描写に注意してください。
次の日の夜、少女はまた現れた。
「ここが辺境伯の屋敷ね……。ま、正面からじゃムリだ。」
屋敷の周りを歩いて人気の無い場所を探した。
「ここからいこう。」
タルタロスは鎖を塀にあて、円を描いた。するとぽっかりと穴が開いた。
その穴を通り、中に入った。
「へぇ。結構立派だな。さすがだな。」
国境付近の辺境伯邸だから、なのだろう。要塞のようにゴツい建物だ。
「えーと、伯爵はどこにいるのかな?」
鎖をぶらぶら振りながら歩いていく。
「誰だキサマは。」
後ろから槍をつきつけられる。警備の兵士だ。
タルタロスは両手を挙げる。
「もう見つかったのか。早いね。」
「誰だと聞いている。余計なことは話すな。」
槍をぐっとおしつけられる。
「はいはい。ぼくはタルタロス。ちょっと伯爵様に用があってね。どこにいるか教えてくれないかな?」
「だまれ!!お前みたいな怪しいやつに教える訳がないだろう!」
「残念だなぁ」
タルタロスはそういうやいなや両手を勢いよく振り下げた。
鎖が手のひらから出て兵士の体と槍を縛り付けた。
「なっ!…………ぐっ……」
タルタロスは笑顔で問いかける。
「これで教えてくれないかな?」
「ふっふん!教えるものか!自分で探したらいいだろう!」
「ふ~~ん」
タルタロスは鎖をぐいっとひっぱる。
槍が砕け、消えた。
「ひいぃっ! 鉄の槍が………」
タルタロスはニッコリと笑うと
「ぼくの鎖は特別でね? ものを奪うことができるんだ。今槍をこの世から奪ったよ。人間もね、同じようにできるんだ♪次は……」
少し狂気を感じる。
「わ、わかった。言う。教えよう。だから命だけは……」
「ふ~ん。この時間には寝室ね……ありがとう!助かったよ。」
「ふぉういはひはひて」
兵士は動けないほどボコボコに殴られた。
この屋敷は本館と別館に分かれている。タルタロスは本館に向かう。
「いたぞ!侵入者だ!」
「うん?」
兵士たちがわらわらとわいてでてくる。松明を持って走ってくる者もいた。
「おかしいな。あの一人をボコってからそんなに時間は経っていないはず。」
兵士たちは捕まえようとするがタルタロスはヒラリとかわしなから鎖を振り回し突破する。
兵士たちは鎧を着ているので顔や腕を狙い鎖ではたいていく。
「ぐっ!」
「おっ」
「あっ」
「うっ」
人振りで4人ほど気絶させられるがなにぶん数が多い。剣や槍を鎖で対処しきれない。
「へっへっへ!大人しく捕まりやがれ!」
タルタロスの服が掴まれた。
「はぁ~あ」
ため息をつくとタルタロスは斜め下に向けて何本も鎖を放つ。
「なっ なんだ!?」
鎖は兵士たちの足に絡み付き、一気に持ち上げ、兵士たちは逆さまにされる。
「せーの!」
「「「「「うわあぁぁぁ!」」」」
空中でブンブン回してから、二十人ほどを地面に叩きつけた。
「ぼくは伯爵に会いたいだけなのに、邪魔だなぁ」
兵士のほとんどは気絶した。もしくはケガで動けなくなった。
「っと。これで大体片付いたかな?」
タルタロスは本館に向かった。
後ろには100人ほどが倒れていた。
本館の鍵を破壊し、入ると兵士や召し使いたちが妨害してきた。
が、タルタロスは鎖で流しながら進んでいく。
(おかしいな。いくら辺境伯爵の屋敷とはいえ警備が厳しいし連携がとれている。まるでぼくが来るのがわかっていたかのような………)
倒した召し使いたちから寝室の場所を強引に聞きだし、寝室へ走る。
(もしかしたら辺境伯爵は逃げたかもしれない。ここまで騒いだんだ。……まあとりあえず行ってみようか)
寝室の近くに来ると誰もいなかった。
ドアには鍵が掛かっていなかった。
タルタロスがゆっくりとドアを開けると、中は暗かった。
何かが足につまづいた。
「ん?」
タルタロスが魔法で灯りをともすと
「………ふむ。」
老人の死体があった。服装からして執事だろう。首から出血している。まだ暖かいのでついさっき、殺されたのだろう。
「これは……」
タルタロスが詳しく調べようとした時、
「ようこそ我が屋敷へ」
暗闇から声がすると天井の灯りに火がついた。寝室にしては大きな照明だが、部屋がとても明るくなった。
窓際にあるベッドの上に貴族らしい男が座り、縄で縛られた女がいた。。
「これはこれは……スレトランド辺境伯爵。そして………イザベラ」
そこにいたのはこの館の主、辺境伯とその妾でここにはいないはずのイザベラだった。
「いやぁお見事だ。 護衛の兵士と召し使いたちを簡単に倒してしまうとは! 」
タルタロスはわざと丁寧に返した。
「夜分遅くに失礼します。ぼくはタルタロス。伯爵にお伝えしたいことがあって参った次第ですが、これはどういうことですかな?説明していただけると嬉しいのですが 」
伯爵は髭を撫でると
「ふーむ 入り口に死体があっても驚かない。そしてその鎖。やはり本物なのだな……いや、失礼。あの者は私の執事だ。私に騒がしいからにげろとうるさいのでな。つい殺してしまった。あの兵士たちは私がよんだ。タルタロス、君が来るというのは知っていたのでね。 」
伯爵は不気味に笑った。
「ご説明、ありがとうございます。そういうことでしたか。そしてあなたの隣にいるイザベラ。なぜ縛られているのですか?」
「連れ帰って欲しくないからさ。君がここに来たのは私にそのことを伝えに、だろう?暴れようとしたので少し乱暴だが縛っている。あ、ちなみにだが君が来るのは彼女から聞いたわけではない 」
「?」
伯爵はくくくっと笑った。
「まだ、わかんないかなぁ?タルタロス!」
辺境伯は高らかに笑うと服が破け、2メートルを越えるほど大きくなり、背中に大きな黒い翼が生え、顔が変わった。
黒い、悪魔の顔に。
「我が名はキューズ!! 最高の快楽を求める悪魔だ!」
「やっぱりね。本当の辺境伯爵はどうしたんだ!」
悪魔キューズは鼻で笑うと
「ハッ!そんなもの、とっくの昔に殺したに決まっているじゃないか!この貴族という地位は快楽に必要だからな。 そしてこのイザベラは私の妻にするつもりだ」
「妻?」
「そう、彼女は美しい!今の人間の女よりも私の妻にふさわしいだろう! そして、それを邪魔するならば、私は貴様を排除しなければならない。 どうした?」
タルタロスは考え込んだ。
キューズ、キューズ………
「キューズか、お前、冥界から脱走した悪魔兵の一人だな?」
「そうだが?冥界では中隊長になったがそれほど快楽を得られなかったのでな。」
タルタロスは鎖を出した。
「ならぼくは君を捕らえなければならない!監獄長として!そしてイザベラも返してもらう!」
「ふん!やはりそういうと思ったよ!ハァッ!」
キューズは火の玉をタルタロスに投げつける。
タルタロスが放った鎖は火の玉を貫通し、キューズの方へ飛んだ。
が、鎖はベッドのシーツを巻いたキューズの手に弾かれた。
「知っているぞ、貴様の鎖は触れると何かを奪うってな。なら間接的に弾けばいい 」
「チッ」
タルタロスが鎖を戻そうとすると
「そして貴様が接近戦に弱いってのもな!」
キューズは鎖をぐいっと引っ張る。
「!」
タルタロスは体ごと引っ張られ空中に投げ出された。
「軽いな、くらえ!」
タルタロスは蹴られ、殴られた。
キユーズは片手で鎖を持ちながらタルタロスを蹴り飛ばし、また鎖を引っ張りまるでサッカーのリフティングのように蹴り続けた。
「ほれ!」
タルタロスはぼろ布のように捨てられた。
服は所々やぶれ、血がにじんでいた。
「ハーッハッハッハ!!まさか監獄長が女だったとはな。髪が長いのでおかしいと思っていたが男用の服でごまかしていたのか。ま、今は血で汚くて色気など微塵もかんじられないが。」
「ふ~よっこらせ。」
タルタロスは血まみれのままむくりと起き上がった。
パンパンと服についた埃を払った。
「なっまだ動けるのか?骨も折ったはず……」
「お前のぼくに関する情報はどこから聞いたんだ?」
首や肩をポキポキと音をたてながら歩く。
「ぼくが女なのはタルタロスに居たらすぐわかることだ。 それに、ぼくに物理攻撃は効かない。」
「何っ!」
近づいてくるタルタロスにむかってキューズは連続で火の玉を投げつける。
しかし鎖が勝手に動いて貫いた。
「グレイプニル」
「 ? なんのことだ?」
縄で縛られているイザベラがハッと気づく。
グレイプニルはタルタロスが持っている鎖の名前だ。
「ぼくの本当の名前さ。この鎖の名前でもある。今ぼくは人間の姿をしているが、本当の姿はこの鎖さ。」
タルタロスの雰囲気が、変わった。
キューズはタルタロスの迫力に少し怯んだ。
「くっ……」
「大狼フェンリルを縛っていた鎖さ。お前ごときがちぎれるはずがないだろう?」
「何が言いたい!!」
「ぼくには物理攻撃が効かないってことを言っているのさ。魔法も炎ごときなんともない。」
「だからどうしたのだ!血が出ているではないか!」
キューズはタルタロスにとびかかった。
タルタロスは鎖を投げると照明を消した。ガラスの破片が飛び散った。
「明かりを消したか。だが暗闇でも私は見えるぞ!お前は見えまい!」
「そうでもないさ。」
暗闇でペシペシと音がした。
「うぉっ!」
キューズが倒れた。
タルタロスは光の玉をだし部屋を照らす。
「どうだい?動けないだろう?」
キューズは床の上に這うように倒れていた。
「あ、足に力が入らない……?」
「お前の脚力を奪った。つまりもうお前は歩けない。」
「クソッ!不快だ……」
「ところで、ぼくは悪人をいたぶるのが大好きでね、本当は君を殺してもいいぐらい怒っているんだけど。悪魔は現世じゃ死なないんだよねえ~~つまり、現世では最高にいたぶることができるってことだ!死より恐ろしい苦痛を与えてやろう……」
ある意味悪魔より恐ろしい笑みを浮かべながら動けないキューズに近づいたその時!!
「グッ!…………」
「よくやった、ギリー!」
「タルタロスさん!」
タルタロスは背中を刺され、後ろに投げられた。
壁にめり込み血を吐きながら、目を開けると、
「カハッ………お前、死んでいなかったんだな……」
そこに立っていたのは入り口で死んでいたはずの執事だった。
「ハーハハハハハハ!!いいぞ!面白い!愉快だ!!まさか死体に化けているとは思うまい!」
ギリーと呼ばれた執事(?)は短剣についた血を払った。
「カッ……ぐっ……お前も…悪魔なのか?」
「そうさ、オレはギリー。キューズ兄貴と一緒に来たんだ。俺は化けるのと予知が得意でね、お前、勝ち誇っていただろ?」
「そうか、予知か。なるほどね、ゲェッ…」
血が大量に床に吐かれた。
短剣には毒が仕込まれていた。
ギリーはタルタロスの髪の毛を掴むと、
「よう、さっきはキューズ兄貴をいたぶるとかなんとか言ってたなァ!ざまあねぇな!こっちもお前を殺せねぇかもしれねぇ。だが動けなくなるまでいたぶることはできるぜ!!オラ!」
ギリーは何度も剣をタルタロスに刺していく。
キューズも翼で飛び、タルタロスを殴った。
イザベラは怖くて喋ることができなかった。
ジャラ……………………………………
ジヤラ ジャラジャラジャラジャラ!!
かすかに鎖の擦れる音がする。
「……なんだぁ? 何か聞こえるなァ…てめぇ何か企んでやがるのか?」
「ふふっ ぼくの足を見てごらんよ 」
タルタロスの左足から鎖が何十本も垂れ下がり、床を貫通している。
「………鎖が床をつきぬけている?」
ふたりは驚いて飛びのいた。
「別に、不思議なことでもないだろうろう?グレイプニルはこの世の物ではない。貫通していても不思議ではない。長年現世にいて忘れてしまったのか?」
片目がつぶれ、服もほとんど破れ血が大量に出ているのにもかかわらず、笑いながらタルタロスは立ち上がった。
「………っ!何をしようとしている!そんなボロボロでなにができるんだ!」
「だから言っただろう?ぼくの本体はくさりの方だって!」
「がっ!!何だ!」
悪魔二人に幅1メートルはある大きな銀色の鎖が上下から3本ずつささった。
その鎖は部屋の外から穴をあけずすりぬけて伸びていた。
「本領発揮、グレイプニルさ。動けないだろう?本来グレイプニルは普通の鎖のように縛るものではなく、触れたものを動けなくさせるものなんだ。」
「くっそ………やられているふりをしてこんなことを企んでいやがったのか。」
キューズは鎖で全く動けないまま悔しそうにタルタロスを睨んだ。
「そうだよ? 本来、お前たちをここで罪状を読み上げ処罰しなければならないが……いくら攻撃が効かないといってもここまでされると、痛い。君たちには特別な刑をしてあげよう。斬首の刑だ。」
タルタロスは手のひらから鎖をだすと床に円を作った。
「今、魔鎖グレイプニルをもって世の理を曲げる。 我が呼びし者は冥界の看守、斬首王 フェイル 世界の境を越えて我が元にに現れよ!」
円が光った。
中から紅い光と共に大剣を携えた大男が現れた。
「我が名はフェイル! 獄長、何用か 」
大男はひざまづいた。
「フェイル、頼みがある。あそこにいる悪魔二人をいつものように斬ってくれ。」
「はっ しかし獄長、お怪我は大丈夫なのですか?」
「お前と闘った時の方がひどかった。大丈夫なのはわかっているだろ。早くやってくれ 」
タルタロスは垂れている血を拭いながら言った。
「承知いたしました 」
キューズは怯え始めた。
「あ、あれは…フェイル 」
「な、なんなんですかい兄貴?」
ギリーもキューズが怖がっているのを見て震え出した。
「あ、あいつは昔、地獄で一番の剣の使い手だった。だがあるときから姿を消したんだ。 しばらくしてから首だけの死体が見つかるようになったんだ。しかも1日に2人。」
ギリーは唾を飲み込んだ。
「調査をしていくとそれはフェイルの仕業だったんだ。切れ口があまりにもなめらかだったのだよ。フェイルはただ斬ることが好きな狂ったやつだった。辻斬りをするほどの。まさか、タルタロスの部下になっていたなんて……」
「…ヤバいですか兄貴? 」
「……言うまでもない。」
「いくぞお二方!我が剣技、見るがよい! 」
本当に一瞬だった。
フェイルが二人の後ろに立ったとおもいきや、二人の体は鎖がついたままバラバラになった。血は一切出なかった。
「ぐああっ!」 「あぁっ!」
二人は頭だけになり、残りの体は大鎖に吸収された。
「では、我はこれで。」
「ああ、ご苦労、呼び出してすまなかったな。」
フェイルは鎖の円のなかに戻り、冥界に帰った。
「くそっ!なぜ殺さない?フェイルなら私たちを切り刻んで意識を失わせることもできたはず!なぜ頭を残した!」
「さっきいっただろう?ぼくはいたぶるのが大好きなんだ。意識まで奪うわけないじゃんか。フェイルに斬ってもらったのはぼくの痛みをわかってもらうため。頭だけにしたのはお前たちを鎖の輪にしやすくするため。悪魔なら頭だけでも生きていられるだろう?」
「くそおぉぉぉぉォォォォォォォっ!お前ごときにぃぃぃィィィィィィィィィィィ!!」
首だけになっても大声で叫んだ。
「今度、あるわけがないが今度からは相手のことをちゃんと調べて、そして油断しないようにするんだな!」
タルタロスがくいっと指を動かすと浮いていた巨大な鎖が二つの頭めがけて突っ込んだ。
鎖が消えると小さい鎖の輪しかなかった。
タルタロスはその輪を拾うと手の鎖にカチッとつなげた。
ようやくイザベラは口を開いた。
「なにを、したんです?」
タルタロスは鎖を自分の体にすり付けて傷を治しながら言った。
「二人の魂を鎖にしたのさ。あとでたっぷり苦しめて、残りの脱走した悪魔のことを聞き出さないとだからね。…チッこっちはか弱い女の子なのにおもいっきり殴りやがって……この服はお気に入りなのに……」
タルタロスが愚痴を吐いているのを聞きながらイザベラは言った。
「では、あの二人は……」
「もう君を襲わないし、君を苦しめるものはいないよ。イザベラ。」
イザベラの縄をほどきながらグレイプニル、いやタルタロスは言った。
「あなたと別れてから朝、私に優しくしてくださった方たちにお礼をいっていたんです。そしたら、あの執事さんがやって来て伯爵さまが死んだので来てほしい、と。」
「おそらくギリーの予知でぼくがくることがわかったんだね。あとで君の分も苦しめておこう。」
ドンドンドン!!
寝室のドアを叩く音がする。
「おっと、寝かした奴らがもう起きてきちゃった。 さぁイザベラ、一緒に冥界に行こうか。」
「はい。タルタロス様 」
タルタロスが鎖を自分達の周りに巻くと
二人の姿は消えた。
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次回更新は5月1日です。
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