偏差値?2 タルタロス 救う者
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「さあ~安いよ!安いよ!」
「おっそこのお嬢ちゃん!これ買ってってくんねえか!安くしとくぜ!」
「今ならセール中だよ!」
ここは地方都市ニギルカ 主要街道が交差するところで商人が多く集まり市が毎日開催されている。
「ほーう、ここは賑やかで楽しそうだね。」
どこからともなく少女が現れた。
タルタロスはブラブラと市場を回って何かを探している。
「何か、食べ物は~・・・あった!おじさん!一つ頂戴!」
「はいよ!10ザイ(通貨)だ!」 (1ザイ=5円ほど)
「はいどうぞ」
タルタロスが買ったのはオーロ鳥の丸焼き。オーロ鳥は雀より少し大きい鳥でこの地方では一般的な食材で丸焼きが一番美味しいとされている。
それを食べながらさらに甘いカップケーキや焼きビツル(とうもろこしに似たもの)など十個程屋台物を食べた。
「たまには屋台の食べ物を無性に食べたくなるときってあるよね。食べた食べた!」
タルタロスはすぐに食べ終わり、市場を物色していると、
「ひったくりだ!捕まえてくれ!」
こう叫び声が聞こえると向こうから悲鳴が聞こえてくる。
「ナイフを持っているぞ!気をつけろ!」
どうやらこっちにひったくり犯が逃げてくるらしい。
タルタロスは少しくさりを手の平から出すと、道の真中に立ち、
「おい!どけっ!」
怒鳴りながら走ってくる男にすれ違いざまに鎖を投げた。
「うおぉっ!」
鎖はひったくり犯の男の脚に絡まり、男は宙を舞って地面に叩きつけられた。
この早業に周囲にいた人達は驚いたが、すぐに男を抑え、ナイフを取り上げた。
「捕まえましたか!有難うございます!」
あとから群衆をかき分け、商人らしき人と付き人が来た。
付き人が礼金を捕まえてくれた人々に配り、商人はタルタロスに礼を述べようとした時、商人が驚きに満ちた顔でタルタロスを見た。
商人はタルタロスの耳元で、
「もしかして、タルタロス様ですか?」
驚いたのはタルタロスの方だった。
「ど、どうして、わかった?」
「やはりそうでしたか!いや、礼をしたいのでついてきてはくださいませんか?」
タルタロスは断ろうとしたが、商人がどうしても、と何度も頭を下げて頼むので仕方なくついていった。
ひったくり犯を役人に引き渡してから商人はタルタロスを高級宿屋に連れてきた。
部屋にはテーブルと椅子があり、商人とタルタロスは向かい合って座った。
「まず聞きたいんだけど、なんでぼくがタルタロスだってわかったの?」
「黒い服に鎖、そして少女なのに怪力、それがタルタロス様の特徴だと存じております。あの男を捕まえてくださった時、すぐに分かりました。」
「ふーん。(かなりバレてるなあ・・・気をつけないと)」
「どうかなさいましたか?」
「いや。で、ぼくをここまで連れてきたということはお礼以外にあるんでしょ?」
「さすがタルタロス様。実は私の娘が病気で・・・治してほしいのでございます。」
「え?」
「はい?」
「ちょっとまって。君のなかでぼくは一体どういう存在なのかな?」
「人々の願いを叶えてくれる、神様のようなお人だと。」
「・・・・・・・・・(あーなるほど)」
タルタロスは今までいくつかの町や村を助けたり、人々を救ってきたりした。それがいつしかタルタロスは願いを叶えてくれる存在である、という噂になったのだろう。
「私には今年で10歳になる娘がございまして、8歳のときから時々熱を出して寝込むということが有りました。」
「ふーん」
「沢山の祓い屋やお医者様に診てもらったのですが原因がわからず、2週間から1ヶ月ほどで元気になるのですが、また寝込むことがあるのです。そして今はずっと寝込んでおりまして。妻も私も心配でかわいそうで・・・ある時タルタロス様の噂を聞きまして、難病の男の子を治したと。」
「あー。あったあった。治したよ」(治したと言うより病気の原因であるウイルスを奪っただけだけど)
「なのでタルタロス様なら娘の病気を治せるんじゃないか、と」
「うーん・・・わかったよ。」
困っているとここまで言われて放っておけない。
「お礼は致します。お金であろうと何でも、治してくださるのなら何でもお支払い致します・・・」
「・・・・・・ふーん。君は商人みたいだけど、何を売っているのかな?」
「布でございます!この国だけでなく、他国の珍しい布まで幅広く取り扱っております!」
「へぇ。まぁ礼は後でいいや。まず君の娘さんを治してあげよう」
「!!治して頂けるのですか!」
「うん、娘さんはどこにいるんだい?」
「この街の郊外に私の家がございます。そこに私の妻と娘は住んでおります。」
「わかった。じゃあ案内してほしい。今から行ったほうがいいだろう?」
「はい有難うございます!」
商人は涙を流しながら付き人に馬車を手配させた。
街から馬車で少し離れたところに商人の家があった。商人は一台で成功したらしく、家は新しかった。
「ここか。・・・・・・豪邸だね。結構儲かっているんじゃない?」
「いやーはは。そこまで、ですけど」
「…まあいいさ。早速娘さんの部屋に行こう」
急な訪問で商人の妻や使用人たちは驚いたが商人が事情を説明し、大喜びで案内した。
「ここでございます」
娘の部屋の前には暗い、妖気のようなものが漂っていた。
「…気分が悪くなるな」
タルタロスは鎖を出すとさっと一周振り回した。
「空気が変わったような・・・?」
「ここ一体の空気を入れ替えた。部屋の空気もこれで変わったはずだ」
「さすがタルタロス様。では、ドアをお開け致します」
部屋の中では10歳ほどの少女がベッドで寝ていた。
そばでメイドが額に置くタオルを取り替えていた。
「旦那様?なぜこちらに?」
「あとで説明する。すこし休んできなさい。ささ、タルタロス様」
「タルタロス・・・!」
メイドは気づいてすぐに道具を片付けた。
「・・・だれ?」
「起こしてゴメンね。そのまま寝てて大丈夫だから。僕はタルタロス、君の病気を直しに来たんだ」
「どーせ診ても治せないよ。今までのお医者さん達全員だめだったからね。あんたもお父様に呼ばれたんだろうけど無駄だよ…治りっこない」
何人もの医者や祈祷師にも同じことを言われた娘はタルタロスも同類と思った。
「ふーん…確かにいままでは駄目だったみたいだね。だけど、ぼくは違う。君を必ず治してあげるよ」
「ふん!絶対無理!」
「まあわかったわかった。とりあえず、出ようか」
付き人に事情を聞いたメイドを部屋に残し、商人とタルタロスは部屋を出た。
「確かに、あの子は呪いにかかっている」
「え!もうわかったんですか」
「うん、だけど少し特殊なんだ。」
タルタロスは手のひらから鎖を出し、それを眺めている。
「特殊・・・」
付き人と商人は首をかしげる。
「呪われているのは、君なんだよ」
「わ、わたしですか?」
指を指されたのは商人だった。
「何でわたしなんですか?娘がのろわれているんじゃ…」
「いいや、君だ。ぼくも最初わからなかったのだが君にかけられている呪いは君自身でなく君の周りにいるものに影響を及ぼすものなんだ。だが、力が弱い。呪いに対する抵抗力が弱い子供、つまり君の娘が苦しむようになっている」
「そ、そうなんですか…だから医者様方はわからなかった…」
「そうだね。この呪いは難しいから人間にはわからない。これは…人間の仕業ではない」
「ええ?」
「ま、話すと長くなるからまずはのろいを解こうか、あの子がかわいそうだ。エイッ!」
タルタロスは鎖をさっと出すと商人の体に巻きつける。
商人は驚くが、すぐ解放された。
「これで大丈夫なはず」
「私は、なんとも…」
商人の娘の部屋から歓喜の声が上がる。どうやら呪いが解けたようだ。
「旦那様!呪いが・・・!!」
商人はメイドの言葉をさいが目で聞く前に部屋に飛ぶように入った。
娘と商人は抱き合って泣いた。
少しして商人の妻も部屋まで来た。
その様子をタルタロスは部屋の隅で寂しそうに見ていた。
「タルタロス様……コレで娘は大丈夫なのでしょうか?」
「それだが…また部屋の外に出て欲しい」
「呪いは解けたはずじゃ・・・娘はもう苦しむことはないのでは…」
「そうだよ。だが、まだ終わっていない。君にかけられた呪いは解いたが元を断ってない。解けた事に気づき、また呪ってくるだろう」
「そんな・・・呪いは解けたなら二度と同じ呪いはかけられない…そうではないのですか?」
「ニンゲンなら、ね。さっきも言ったがこの呪いをかけたのは人間ではない。………悪魔だ」
「……!」
「呪いを解く時少し、分析させてもらってね。君たち家族が泣いている間かけた人物を割り出した」
「・・・・・そんなことまで。さすがです」
※呪いは呪者の魔力を使用し、遠くに居る人に悪影響を及ぼすようにする魔法の一種。しかし魔法式が複雑なため、呪者の正体が分かる状態でかけてしまうことがよくある。タルタロスはちょっとだけ鎖に呪いを吸収させ、逆探知のようなことをした。
「どこに居るのかまではわからないが、特定はできた。この悪魔はぼくも探していたやつでね どうしてもこいつを捕まえないといけない。手伝ってくれないかな?」
「もちろん!娘のためです。それに恩人のタルタロス様なら何でもお手伝いいたします!!」
「大したことはしてないけど、そう言ってくれて嬉しいよ。まぁまずは……君は布を売っているんだよねぇ……布をすこし、買わせていただこうか」
「……!?」
一方、町外れの一軒家で、
「…………………………ッチ 呪いが解けやがった 誰だ?オレっちの呪いが解けるやつなんてそうそういないはず…………………………まあいい。またかければいい話じゃねえか。そうとなれば準備を………………………」
「すみませ~ん 荷物で~す」
「・・・?荷物?なんか送ってもらう約束してたっけか?」
「大きい布が……巻いてあるだけ・・・こんなもん頼んでない気がするが……いいや、とりあえず開けちまおう」
布を広げると、中には一本の短い鎖が入っていた。
「………………………なんだぁ?この鎖は?」
「やはりお前か。脱走兵、アール」
「ッッツ!この声は!」
短い鎖から何本も鎖が飛び出し、球状になると、中からタルタロスが現れた。
タルタロスはアールと呼んだ悪魔を睨み付けて、
「布商人に呪いをかけ、娘を苦しませたのはお前だったんだな」
「ッッち、違うぜ、俺は何もやってない。ああ、あんたこそいきなり現れてなんなんだよ」
「とぼけるな。お前がかけた呪いを分析した。」
タルタロスの顔はもう[少女]のモノではなかった。まるで地獄の鬼、【獄長タルタロス】の顔になっていた。
「………仕方ねぇ。獄長に睨まれちゃ敵わねえ………確かにオレっちは冥界脱走悪魔兵、アールだ。なんで此処がわかった?」
「簡単さ。魔力探知で大きく反応した所にぼくの鎖を短くちぎって布で巻いたものを送ったのさ。触れられたら分析すれば誰だかわかる。ま、10件ほどだから手間がかからなかったがな。」
「へへっそうか……意外とアナログなことするな………だが悪あがきはさせてもらうぜ!」
アールは近くにあった呪術用の物が並べてある棚を倒し、逃げようとした。
(へへっ隙をついて逃げ出してやる!!)
「甘いな」
「ゲェッ!動けねえ!」
アールの足にはタルタロスの鎖が絡まっていた。ふりほどこうとしても逃げることはできない。
「この家が薄暗くて助かった。この家はぼくの鎖に包囲されている。逃げようなんて考えは捨てるんだな!」
「チッちくしょう!!こんなところで!!!!!」
「……ま、大方現世に逃げたはいいが魔力が尽きそうになり、人間を呪うことで魔力を吸収し、生き延びていた。そんなところだろう?」
「………ま、大体正解だ。だが少しちげぇ。ある目的のため潜伏中なのさ」
「!!何?どのような目的だ?」
「言えるわけねぇじゃんww馬鹿なのか?」
「…くっ……もういい。おしゃべりはここまでだ!処刑を開始する!」
「は!?処刑?意味不明なんだけど。獄長はできないはずじゃ?」
「お前が脱走してから法律が変わった。現行犯に限ってな!!」
「は?マジかよ………」
「被告!悪魔アール!悪魔の居住に関する法律第76条違反、現世長期間不法滞在、第86条違反、冥界不法出国、及び人間に対する迷惑防止法違反、余罪は冥界にて追及する。よって悪魔アールを主罪「冥界脱走」により[鎖人形の刑]を執行する!!」
「さ、鎖人形?な、何を・・・」
「行くぞ!ふんっ!」
獄長タルタロスは鎖を力いっぱいしならせると、
家中の鎖が音を立てながら集まっていき、4つに分かれ、ひとりでにある形を作った。
「……鎖人形って、そういうわけか」
アールは諦めがついたのか、その顔には笑いがあった。
アールの周りに巨大な人形が4体、取り囲むようにしてゆらゆら立っている。
彼ら人形に表情はあるのか、意志はあるのか。喜、怒、哀、楽のようにも見える。
「…一番やっかいなのは悪魔は現世では死なない、ということだ。しかし、逆を取れば悪魔は現世では殺しても冥界に送ることが出来るということだ………撲殺」
「お、おい、撲殺って………ぐぎゃああぁぁぁぁ!」
鎖人形は腕を振り上げると、四体同時に振り下ろす。鎖でできているので一発一発の威力は物凄い。アールは足が鎖で縛られている上、囲まれて動くことが全くできない。すべての攻撃がアールに命中し、血しぶきが鎖人形に飛び散る。
「………今お前が受けている痛み、それはお前が掛けた呪いの苦しみだ。あの商人から呪いを吸収した際のエネルギーを鎖人形に注いでいる。随分と激しく動くじゃないか」
「ガッ…あっ…クッ…くっそぅ…この恨み……グッ…絶対晴らしてやる…いくら獄長といえど…あの方には……」
「ああお前たちにはリーダーがいたんだよね。名前はもうわかっているから見つかるのももう時間の問題だろう」
「フッ…お前がどれだけ知っているのかわからんが…グハッ…あの方には隠されている秘密がある…タルタロス…お前でも勝てんかも……オレっちを捕まえたところで意味はないぜ…獄長……」
「ふん、せいぜいほざくがいい。脱走した悪魔たちはお前も含め全員捕まえる、冥界の名にかけて。」
獄長の顔にははっきりとした決意が示されていた。
「ハハッ……流石獄長様だ……」
アールはめった打ちにされ、骨は砕かれ血まみれになり片目がつぶれていた。
「そろそろ仕上げようか。拷問は冥界ですればいいからね………止め!!」
タルタロスが叫ぶと鎖人形達は動きを止め、鎖で出来た頭をのけぞらせた。
「封印!!」
「やっやめ……!!」
アールが叫ぶ暇もなく鎖人形は四つの頭を降り落とした。
金属がぶつかるギィンという音がした。
「戻れ」
鎖人形達はほどけて鎖に戻りタルタロスの元へとかえった。
アールがいたところには血と肉片、そして一個の鎖のリングが落ちていた。
「こうしないと冥界に持ち帰りづらいからな」
結果に満足したタルタロスはその鎖を拾い、手のひらから出した鎖を身にまとって消えた。
商人の家ーーーーーーーー
「元凶の悪魔を倒してきたよ」
鎖の球から現れたタルタロスはこう商人に言った。
「!お帰りなさいませ!タルタロス様!!」
商人はタルタロスの帰りを着替えもせず待っていたようだ。
「ほら、これが君に呪いをかけていた悪魔だ」
そう言うとさっき持ち帰った鎖を商人に見せた。
「はっ!ありがとうございます!……これがその悪魔ですか?」
その鎖のリングは黒く鈍く光っていた。
「鎖として封印したんだ。こいつを冥界に連れ帰らないといけないからね。」
「め、冥界!?」
「おっと言ってなかったね。ぼくは冥界の者なんだ。今回の悪魔は脱走してて探していたんだ。たまたま君に呪いをかけていたから見つけることが出来た。こちらこそありがとう」
「!!いえいえ、まさかタルタロス様がそのようなお方だったとは。ところで娘を助けて頂けましたお礼ですが……」
「うーん、いいよ。いらない」
「そんなこと仰らずにどうか…」
「じゃあ近いうちにぼくの部下の服を作りたいんだ。その時また来るからいい布と仕立て屋を用意してくれないかな」
「お安い御用です。でもそれだけでいいんですか?娘を助けて頂いて悪魔まで退治していただいた私としてはもっと……」
「いいよ。そんなことをするくらいなら娘と遊んであげなよ。呪いにかかるってことは心に隙があるってこと。最近仕事のしすぎなんじゃないか?」
「!!……」
「ぼくは大したことをしていない。もっと家族を大事にしなよ。今回で家族が大切だってこと、わかっただろう」
「!!!……わかりました。」
「あ!タルタロスさん!ありがとう!!お姉さんが治してくれたんでしょ?」
商人の娘が部屋に入ってきてタルタロスに駆け寄ってきた。
「そうだよ。すっかり元気になったようだね。」
「うん!気分がスッキリしたの!まるで青い空をとんでいるような気分だわ!」
「それはよかった。あ、そうだお父さんが君とどこか遊びにいきたいみたいだよ」
「!」
「えーほんと~?お父さんが~?ならわたし、お母さんとメイドさんも一緒にカーム山にピクニックにいきたい!」
「タルタロス様……!!」
商人は目で感謝の気持ちを伝えた。
「それじゃあお母さんとメイドさんを呼んでどうするのか相談しないとだね」
タルタロスはいいんだ、と目で伝えた。
「はーい!呼んでくる!」
商人の娘は勢い良く飛びだしていった。
「それではぼくは帰るとするかな。お世話になったね。」
「いえ、こちらこそありがとうございました!お元気で!」
少女は邸をでると闇に消えた。
2話、どうでした?
本編と別々で投稿しないのは理由があるので~ご了承を~





