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部屋とゆたんぽとチエリ③
「うん、うまくなってきたね」
最後の段ボールを縛り終えると、小川さんがいった。
「次は伝票の書き方なんだけど……」
――実は。あの話を聞いて、先日、おれはゆたんぽを買った。彼女が持っていたものと同じ、シリコン製のものだ。
体調を崩し、ただ寝ているしかなかった日々。病院の先生に「あったかくして、安静にしていること」といわれたことを思い出したおれは早速、某有名通販サイトでゆたんぽを注文した。
二日後、届いたゆたんぽにお湯を入れ、布団に入れてみると――これが思っていたよりよかった。足元が温まるだけで、全身が暖まるのだ。
……それで。寝る前、彼女がいっていたとおりに、おれもゆたんぽを、抱きしめてみた。
その結果、感じたことを彼女に早く伝えたいのだが――あいにく今は仕事中。
仕事が終わったら、話そう。そう思いながら、おれは指示された通りに、伝票の記入を続けた。




