本屋のお仕事……? ②
「あのね……アイちゃんはね。怒ってたわけじゃないの。すっごく責任感の強い子だしね、ちょっと目とかもキリッ、としてるから誤解されやすいんだけど、ほんとはすっ、ごく、優しい子なの」
レジカウンターに立つおれの横で、小川さんがいった。
声は小さく、伏せ目がちだった。
「わかってます」
延原さんがいっていたことは、正しかったと思う。下手な行為をしなくて済んでよかったと、今は思っている。
ただ……この心のモヤモヤは、なんなのだろう……。
延原さんが店を出て、一時間近くが経った頃。店に電話が入って、小川さんが出た。
「お電話ありがとうございます、マホロバ堂書店でございます。……あっ、アイちゃん! どうだった?」
その内容は、彼女の表情を見れば、わかった。あの男性客の注文品、『ビロードのうさぎ』が、見つかったのだ。
「よかったねぇ。これで一安心だよ」
電話を切った小川さんは、穏やかな表情でいった。
おれも、素直によかったと思う。
――ピリリリリリ……
すると、すぐにまた電話が鳴って、小川さんが出た。
「お電話ありがとうございます、マホロバ堂書店で……あぁ、山内くん? さっきは大変だったんだよぉ。この前キミが受けた注文品がね…………へっ……? ちょ、そんなの困る…………えぇえ!!」
電話を切った彼女は、ハハハ……と渇いた笑いをもらして、こちらを見ていった。
「山内くん……バイトやめるって……」




