本屋のお仕事……? ③
「いいのよ。あの子が続かなそう、ってことは、わかってた」
エプロンを身につけながら、延原さんがいった。今度はちょっと、本当に怒っているらしい……。
「困ったねぇ。明日の夜、二人かぁ……」
どうやら山内氏はまず、バイトとして出る予定であった明日、出れないことを伝えた後に、「もう辞めたい」と告げたらしい。
「まだ一ヶ月も入ってないのに……」「最近はそういう子、多いのよ」
延原さんは、冷静にいう。
「せっかくのクリスマスだし、他の子に連絡するのも悪いわ。なんとか、二人でまわしましょう」
「あっ、あの……」
おれがいうと、二人は同時にこちらを見る。
「よかったら、おれ、出ます。明日」
小川さんが、複雑そうな顔をする。「でも、明日はクリスマスだよ……?」
「大丈夫です。なんにも予定、ないんで」
実をいえば、仁やいつものメンバーでクリスマスパーティーをする予定だったのだが、まぁあいつらには、いつでも会える。
「早く仕事も覚えたいですし……」
おれがそういうと、二人は顔を見合わせる。
「じゃあ、お願いしましょう」
延原さんが、いう。
初日に見た、三種目の表情。やさしい、笑顔だった。
店に戻ると、棚の上に、例の本がある。『ビロードのうさぎ』。
「ラッピングを、教えるわ」
彼女はそういうと、緑地にたくさんのサンタが描かれた、大きな紙を一枚、棚から出した。
「キャラメル折りくらいはできるようになってもらわないと」
「あの……」
おれがいうと、彼女はおれの方を見る。
「さっきは……スミマセンでした」
彼女は少しだけ驚いたような表情をして、やがて表情を緩ませると、ラッピング用紙をカッターで切りはじめる。
「私の方こそ……少し強くいい過ぎたわ。あなただって悪気があったわけじゃないのに……」
ごめんなさい。
ラッピング用紙は本のサイズに合わせて、半分以下になる。
「まずはこれをね……」
心が、晴れていくような気がした。この人に、許してもらえたからだ。
この店で働きはじめて、三日目。早くもおれは、この店のことが、なんだか……すきになりはじめているみたいだ。
この店が、というよりも、この人たちと、働いていきたい。そんな気持ちに、なってきている。
外で北風がビュウと吹いて、自動ドアを、ガタガタ揺らした。
この中は、あたたかい。そう、思った。




