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マホロバ堂書店でございます  作者: 木下秋
夏目、書店員になる
13/33

本屋のお仕事……? ③

「いいのよ。あの子が続かなそう、ってことは、わかってた」



 エプロンを身につけながら、延原さんがいった。今度はちょっと、本当に怒っているらしい……。



「困ったねぇ。明日の夜、二人かぁ……」



 どうやら山内氏はまず、バイトとして出る予定であった明日、出れないことを伝えた後に、「もう辞めたい」と告げたらしい。



「まだ一ヶ月も入ってないのに……」「最近はそういう子、多いのよ」



 延原さんは、冷静にいう。



「せっかくのクリスマスだし、他の子に連絡するのも悪いわ。なんとか、二人でまわしましょう」



「あっ、あの……」



 おれがいうと、二人は同時にこちらを見る。



「よかったら、おれ、出ます。明日」



 小川さんが、複雑そうな顔をする。「でも、明日はクリスマスだよ……?」



「大丈夫です。なんにも予定、ないんで」



 実をいえば、ヒトシやいつものメンバーでクリスマスパーティーをする予定だったのだが、まぁあいつらには、いつでも会える。



「早く仕事も覚えたいですし……」



 おれがそういうと、二人は顔を見合わせる。



「じゃあ、お願いしましょう」



 延原さんが、いう。

 初日に見た、三種目の表情。やさしい、笑顔だった。


 店に戻ると、棚の上に、例の本がある。『ビロードのうさぎ』。



「ラッピングを、教えるわ」



 彼女はそういうと、緑地にたくさんのサンタが描かれた、大きな紙を一枚、棚から出した。



「キャラメル折りくらいはできるようになってもらわないと」



「あの……」



 おれがいうと、彼女はおれの方を見る。



「さっきは……スミマセンでした」



 彼女は少しだけ驚いたような表情をして、やがて表情を緩ませると、ラッピング用紙をカッターで切りはじめる。



「私の方こそ……少し強くいい過ぎたわ。あなただって悪気があったわけじゃないのに……」



 ごめんなさい。



 ラッピング用紙は本のサイズに合わせて、半分以下になる。



「まずはこれをね……」



 心が、晴れていくような気がした。この人に、許してもらえたからだ。

 この店で働きはじめて、三日目。早くもおれは、この店のことが、なんだか……すきになりはじめているみたいだ。

 この店が、というよりも、この人たちと、働いていきたい。そんな気持ちに、なってきている。



 外で北風がビュウと吹いて、自動ドアを、ガタガタ揺らした。


 この中は、あたたかい。そう、思った。

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