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エピローグ

 体育館裏の惨状を発見した生徒が呼んだ救急車に乗って僕は病院へ行った。止血するのが遅かったので普通に死にかけた。

 岳ヶ島市の技術なら新しい腕を生やすことができるが、僕はそれを断った。理由はうまく説明できないがその方が僕らしいと思えた。それは新しい僕のポリシーの1つになった。ただの感傷と言ってしまえばそれまでなのだが。

 代わりに機械の義手を付けてもらった。これがなかなかの高性能で、前と比べると細かい動作や微かな感覚は劣るが、単純な力はむしろ強くなったくらいだ。

 動けるようになってから、また警察の取り調べを受けた。通りすがりの殺人鬼が全部やったと言い張った。護身用に改造なぎなたを持っていたとか、幅桐と会ったのは偶然だとか、無理のある説明が多くなってしまったが、凶器となった拳銃が見つかることは無いので大丈夫だろう。殺人鬼の事件に警察は深く突っ込まないようにしているみたいだし。

 幅桐の死はその日のうちに河澄さんに伝わっただろう。でも河澄さんは一見変わらない様子で学校に来て普段通りの生活をしているように見えた。僕はそんな河澄さんに何も言えなかったし、彼女も何も言わなかった。

 幅桐が死んでから2日後、水曜日。河澄さんからメールが届いた。幅桐のお見舞いに行くのに付き合ってほしいという内容だった。僕は了承した。

 そういうわけで僕らは再生センターの附属病院に来ている。面会ができるようになるのはちょうど死後48時間が経ってからだ。まだ少し時間がある。

「……どうして僕を連れて来たの?」

 僕は河澄さんに話しかけた。道中はまともに会話をすることはできなかった。彼女は神妙な面持ちで答える。

「誰かの目があった方がなんだかうまくいくような気がしたんです」

 そう、と僕は頷いてそれから何も言わなかった。


「面会の方、もう入れますよー」

 しばらく待っていると看護師さんが呼んでくれた。

 ずんずんと病室に入っていく河澄さんの後ろを僕はおまけのようについていった。

 ここの病院の病室は基本的に個室だ。みんな3日で退院していくので、ベットが足りないという事態があまり起きないからだ。

 ベージュの室内、さっきまで装着していただろう医療器具に囲まれたベットの上に幅桐時雨は寝ていた。

 幅桐は河澄さんを見てハッとして、ゆっくり起き上がった。

「ゆーちゃん……えっと、私死んじゃった。……殺人鬼でもなくなっちゃったの」

 幅桐は不安そうな声を出す。僕は彼女の気持ちが少しだけわかるような気がした。

 河澄さんはそんな幅桐をじっと眺め、1つ間を開けて言った。

「初めまして、幅桐さん」

 幅桐の顔が歪んだ。その言葉を彼女は予想できていただろう。そして最も聞きたくなかった言葉なのだろう。

 しかし、その後に河澄さんはこう続けた。

「突然ですが、友達になってくれませんか?」

 彼女はそう言い、微笑んだ。幅桐の目から涙がこぼれた。

「もちろんだよ、ゆーちゃん」

 それだけをなんとか言葉にして、殺人鬼だった少女は泣きじゃくった。それをあやすように河澄さんが寄り添った。

 僕は変わらない友情に感動しつつも、自分がここにいるのが場違いなような気がしてそっと病室から出た。


 廊下の壁にもたれてぼーっとして待っていた。病室のドアを閉めると中の会話は聞こえなかった。結構な時間が経ったので、もう落ち着いただろうとは思うのだが、いったん出てしまうと入りにくい。

 そんなことを考えていると、河澄さんがドアを開けて病室から出てきた。

「あ、近衛君。なんだか置いてきぼりにしてしまってごめんなさい」

「いいよいいよ。それよりもういいの?」

「ちょっと飲み物を買ってこようと思いまして。それと近衛君もせっかく来たから病室で待っててと、しーちゃんが言ってました」

 では、と河澄さんは購買の方へ行ってしまった。

 僕は病室へ入って幅桐に声をかける。

「もう大丈夫なのかい?」

「はい。大丈夫です。小越さんでしたっけ」

「ひどいなあ、近衛だよ」

「あはは、冗談だよ。私を殺した奴の名前を忘れるわけないじゃん」

 そう言い放った幅桐は一昨日のことを思い出させるような雰囲気を纏っていた。

「あ、ちゃんと気づいてたんだね。よかった」

「今のは鎌をかけたつもりだったんだけど……。ということはわざとだったのね」

 あんな手紙をもらったら、差出人の予想が大体ついてしまうことはわかっていた。当日の記憶は残らなくても、記録は残せる。

「もしかしたら、殺人鬼じゃなくなっても僕を殺しに来るかと思ってさ。能力を持っていたって僕にはかなわないと教えてあげるべきだと思ったんだ。何回も殺したくはないからね」

「ふうん。でもそんなの無駄な心配だったね。今となっては人を殺すなんて死んでも無理。あなたをどうにかしたいとは思っているのだけど」

「どうにかしたい、ね……」

 幅桐はきっと自分が「嫉妬した」なんて言ったとは思ってないだろう。だから建前のほうに合わせて、僕は言った。

「別に河澄さんが死んでもいいとは思ってないさ。でもこの町で病死することはほとんど無いし、事故死も彼女自身で気を付けているだろうし、寄ってくる殺人鬼は全部、僕が殺すから問題ない」

「そんなの……無理だよ。なんでそんなことができると思ってるの?」

「できるかできないかじゃない、るからないかさ」

 僕は自虐気味に笑った。結局、僕の人生なんてそんなものだ。でも、僕の心の根本にあるもの、溢れるほどの気力が湧きでる源は、きっと素敵なものに違いない。

「ついでに幅桐さんも守ってあげるよ」

「……馬鹿じゃないの」

 幅桐は小さく笑った。

「あれ?いつの間にそんなに仲良くなったんですか?」

 河澄さんが戻ってきた。彼女は袋にいっぱいにジュースを詰め込んで持ってきていた。どう考えても買いすぎだ。僕も幅桐もそんな彼女を見て笑った。今度は自然な笑顔だった。

 つられて河澄さんも笑う。やっぱり素敵な笑顔だ。

 次はどうやって彼女とより親密になるかを考えなければならない。それが僕にとって一番重要な問題だ。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

くぅ疲です。書き始める前はここまでで第一章完! にしようと考えてたのですけど、どうせ10人ぐらいしか読んでないし、流し読みかもしれないし、ロボット検索かもしれないしとかぐずぐずと考えてしまってモチベーションが保てなかったです。作文って難しい。とにかく異能力バトルがしたかっただけなのに、うまくいかなかったです。うだうだ書いたけど、結局何が言いたいかって次にもしも書くなら、異世界TS転生チートNTRハーレム勇者で魔王な話を書く。

 


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