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蟲王-KOOU-   作者: 聖騎士・改
第1部 出逢いと別れ編

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第17話 転機

「それじゃ、アイリス頼むよ。」

「はい、主様。」

俺が目を覚ましてから三日、体もほとんど治り俺はリハビリに勤しんでいた。

「悪いね、付き合わせて。」

「いえ、私としても身体の使い方がわかるのでありがたいです。」

「今日も精が出るな。」

組手の最中後ろから声がかかる。この声は…。

「ミネルヴァ様。」

「その呼び方は寄せ、呼び捨てで構わんと言ったであろう。」

ミネルヴァ、ファリンの祖母にして守り人の師匠、最初の出会い方こそ最悪だったがあの告白依頼良い関係を築けている。

「それにしても、私の魔法を受けてたった三日でここまで動けるようになるとはな。」

「そんなにすごいことなんですか?」

「あぁ、そもそも普通は生きて帰れん。やはり蟲の生命力は凄まじいな。」

そうなのか、だが確かに言われてみれば蜂に襲われて死にかけた時もいつの間にか傷が治ってた。あの時はそこまで気にしなかったけど、生物としては驚異的な再生力だ。

 甲殻類とかは脱皮をすることで脚を再生させられるが似たようなものか。いや待て、なら変態を行うことで…。

「それで、ミネルヴァ様何かありましたか?」

俺が考察を終える前にアイリスが話し始めた。まぁいい、ひとまずこの疑問は置いておこう。

「あぁ、こやつの身体も治ったことだしそろそろ説明しておこうと思ってな。」

「ちょうどいい時間じゃし、休憩でもしながら話すとしよう。」




 俺たちがこうして森の外へと出た理由、ファリンを送り届けるためと言うともあるが元々は人の集落へと向かうための情報を得るためである。

 俺たちが家に戻ると既にファリン達が待っていた。

「ごめん、待たせたね。」

「いえ、大丈夫っス…あ、です。」

そう言うと、ファリンはぎこちない口調で応じてきた。

(ミネルヴァさんの前だと敬語なんだな。前もおばあちゃんと呼んで注意されていたし、そういう風に躾られたんだろうな。)

そんなことを考えながら席につき早速ミネルヴァさんに話を振る。

「それでどう向かえば良いですかね。」

「ふむ、そうじゃな。まずはこの国について軽く説明しておこう。」

そう言うとミネルヴァは書棚から古びた地図を取り出した。

「少し古いがのこれがこの国、『ラトネリクス』の地図じゃ。」

「この国の国境は森と平野の境目じゃ。そして我らは今この国の南南西の国境付近におる。」

「だいたいこの当たりじゃ。」

地図に直接書き込みながら続ける。

「ここからじゃと主要な都市はかなり遠いが『マグネス』になるかの。」

都市はいくつかあり、中心に一際大きな都市を据えその周りを等間隔で五つの大きな都市が囲っている。ミネルヴァはその内の南西の都市を指している。

「ここは観光都市で様々な人が訪れる。警備もかなり厳重じゃから俗世に疎いお主でも安心して色々と楽しめるじゃろう。」

「さて、こんなところじゃが他に質問はあるかの?」

「ありがとうございます。ひとまず大丈夫です。」

「そうか、期待に添えたようで何よりじゃ。」

観光都市か…。俺は少し思案を巡らせた。

(思った以上に発展してるんだな。マグネスか、確かに遠いけど十二分に行く価値がある。母さんの願いにも答えられそうだ。)

少し間を空けてミネルヴァが続ける。

「それと、今回の旅費だが私が出そう。」

「え、良いんですか…!?そんな事まで。」

「あぁ、もちろんじゃ。私としても礼と詫びをしたかったからの。」

「ありがとうございます。ミネルヴァ様。」

「やりましたね!主様。」

話がまとまってアイリスはとても嬉しそうだ。

「そうと決まれば今日はお祝いです。早速食料を調達しに行ってきます。」

「ファリンもお願い出来ますか?」

「…。」

「ファリン?」

「あ、すいません少しボッーとしてました。すぐ行きます。」

「はい、お願いします。」

「…。」

「あの、アニキ…。」

「ん、なんだい?」

「…いえ、なんでもありません。」

「行ってきます!」

「あ、ちょっと…。」

俺が何かを言うより先にファリンは言ってしまった。

「なんだったんだろう。」

「…。」

(静かだ。)

アイリス達がが出て行き、辺りは一気に静まり返った。

(二人っきりはさすがにまだ気まずいな…。)

気まずさを感じ席を立とうとする。しかし、ミネルヴァはそんな俺を呼び止めた。

「主よ、ひとつ頼まれてくれんか?」

「なんでしょう…。」

「………。」




 夜になり、テーブルには豪華な料理が並べられた。どれもアイリスが作ったものでとても美味しそうだ。

「いただきます。」

「主様、どんどん食べてくださいね。腕によりをかけて作りましたから。」

「美味しいっス。さすが姐さん。」

「うむ、確かに美味じゃな。」

「はい、六郎はこっちを食べてくださいね。」

「ウォフウォフ!」

久しぶりの()()()()は楽しくて、懐かしくて、とても有意義に過ぎていった。しかし、物事には終わりがあるもので気づけばあれだけあった料理は綺麗になくなっていた。

「いや〜食べた食べた。久しぶりだよこんなにお腹いっぱい食べたの。」

「満足していただけて良かったです。」

「ありがとう、アイリス。片付けは俺がやるから座ってて…。」

「…お二人とも少し待ってくれませんか。」

ファリンが真面目な口調で座るように促す。その声には緊張が伺える。それに呼応して空気が少し重さを持った。

「…どうしたんだい?急に改まって。」

「…実はお願いがあるんです。」

「私を…これからの旅にも同行させてくれませんか。」

その言葉に空気は張り詰めた。

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