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大聖都 科学会議と星の秘密

 月に一度の科学会議の時には、大聖都にある七国の神殿を繋ぐ転移陣の使用許可が出る。


 勿論、各国が事前に申請し、許可が出た人だけだけれども。


 一国、原則四名まで。

 使用人、護衛込み。

 警備の問題から武装は大神殿側に預ける事。


 等々、厳しい制限があるけれど、やっぱり何日も時間とお金をかけて移動するより楽なので、殆どの国が転移陣の使用を申請してくることが多い。


 転移陣の部屋は、リオンを含めたアルケディウスの警備陣がしっかりと固めているので、私は手続きが終わるまで中に入ることが許されない。


 だから、手続きを終えて懐かしい人達が面会の間にやってきてくれると、ホッとする。


「今回も、どうぞよろしくお願いします」

「久しぶりですわね。フェイ」

「お久しぶりです。ソレルティア様」

「この度はお招き下さいまして、誠にありがとうございます」


 アルケディウス代表としてやってきたのは、アルケディウス文官長タートザッヘ様と、護衛兼助手の宮廷魔術師ソレルティア様。

 それからストウディウム伯爵だ。


 元商業ギルド長のアインカウフは民間人なので、基本的には利用許可が下りず、自力で移動して来る。

 いろいろ荷物があるから好都合だと言っていたけれど。


「毎月のこの会議は、いつも楽しみでございます。どんな新技術が見つかるか。

 ワクワクしますな」


 タートザッヘ様は現在、アルケディウスにおける新技術の統括を行っている。


 この二年でアルケディウスに残されていた『精霊古語』の書物を完全読了し、地球世界の科学方式などをかなり理解されたそうだ。

 向こうの世界でいうところの携帯電話。

 電波を作り出し、カレドナイトで補強して音として伝える小型通信鏡の実用化は、この人無しではあり得なかった。


 タートザッヘ様が科学、技術分野で立てた素案を、ソレルティア様が精霊魔術でサポートして、中世異世界の低い技術力でも地球の科学に近いものを具現化させる。

 まさに最強タッグである。


 ストウディウム伯爵の領地は海に近い事から、造船業と様々な薬品精製にも近年力を入れている。

 今回はフリュッスカイトと共同研究している蒸気帆船についての発表があると聞いていた。


 アルケディウスの到着を皮切りに、各国の頭脳陣が次々に集まってくる。


「まあ、大公閣下自らおいでになったのですか?」

「今回は重大な発表があるからな。ソレイルには任せておけぬ」


 フリュッスカイト代表としてやってきたのは、大公メルクーリオ様。

 知恵の国フリュッスカイト一の頭脳ではあるのだけれど、まさかご本人が来るとは思わなかった。


 フリュッスカイトの、この会議における意気込みを感じる。


 もっとも、王族や王子が会議にやってくるのは珍しい事ではない。


「やあ、久しぶり。元気そうで何よりだ」

「ヴェートリッヒ様もご機嫌麗しゅう。アンヌティーレ様はお元気でいらっしゃいますか?」

「ああ。今度、新しく子ども達や希望者に文字や計算を教える学校を作ることになって、その指揮を任されたから忙しくしているようだ。

 アルケディウスの孤児院時代が懐かしいと、時々ぼやいているよ」


 アーヴェントルクの代表は、いつもヴェートリッヒ皇子だ。


 神殿長としてもお忙しい筈だけれど、必ず参加して来る。

 一人ではなく時計技師さんなども連れて来るけれど。


「アーヴェントルクは今、一番脂がのっている時期だ。

 鉱山の金属をより良く活用する方法は、なんとしても見つけていきたいからね」


 と、力が入っている。


 ヒンメルヴェルエクトから参加されているのはアリアン公子とオルクスさんだし。


「マリカ様。我が従妹の君。お久しぶりでございます」

「グランダルフィ様。お元気そうで何よりです。来月はプラーミァにお邪魔致しますので、その時はよろしくお願いします」

「父上を始めとする国中が、おいでをお待ちしております。

 最近はフィリアトゥリスも少しガルディヤーンから手が離れて落ち着いたようですが、子育てには悩みも多いので、相談したいことがたくさんあると申しておりました」

「何かあればいつでもお呼び下さいと伝えて頂けますか?」

「必ず。きっと喜ぶことでしょう」


 プラーミァ代表はグランダルフィ王太子。


 シュトルムスルフトも、女王アマリィヤ様の異母弟がいらっしゃっている。

 エルディランドからもグラン第二王子がいつも来ているくらいだからね。

 各国とも、新しい技術から乗り遅れたくはないのだろう。


「早速ですが、時間が惜しい。姫君。会議室をお借りしてもよろしいですかな?」

「いつでもどうぞ。大聖都からはアルとフェイが参加します。

 明日にはアインカウフも到着する筈ですので」


 到着早々、皆さんは早速会議場に籠って、研究成果と知識の交換を始めた。


「まずは、発表しておきたいことがある」


 一番先に発言を求めたのは、フリュッスカイト大公メルクーリオ様。

 その傍らにはストウディウム伯爵がいらっしゃるから、先程から言っていた特別な発表、だろう。


「フリュッスカイトとアルケディウスは、共同技術開発として長年行ってきた蒸気帆船の試作品を完成させた」


 おおっ!


 参加者達から歓声が上がる。


「ストウディウム領ビエイリークの造船技術と、フリュッスカイトの科学、および精霊力によって、困難とされていたエンジンと呼ばれる機構の製作に成功。

 帆船の力不足を石油エンジンで補い、高出力を発揮する船がほぼ完成したのだ」


 元々、ビエイリークには帆船建造の知識やノウハウがあった。

 それにフリュッスカイトの科学技術が取り入れられた。


 加えて、精霊の書物で発見されたエンジンを製造、搭載することで強化し、自然や精霊の力に頼らない機帆船にこぎつけたのは凄いと思う。


「近日中に進水式を行い、内装を整え、来月中には試験運転を行う予定だ。

 外洋には出ずに、大陸沿いをぐるりと周回する。各国においては海沿いの領地に機帆船の来訪を告知し、住民達に不安を与えないようにご配慮願いたい。

 海沿いに各国を巡ることで、それぞれの国の特産品を他国に運ぶことも試してみるつもりだ」


 母港はビエイリーク。

 そこから時計回りに各国の海沿いの街を回り、船の速度や性能を確認して大陸を一周するという。


「予定では、余裕を見ても一週間で大陸を回り切れると思う」


 不具合があったとしても、大陸沿いに回るのであれば何かあっても被害は最小限で済むだろうし。


 と、ふと思った。

 この船があれば、現魔王達のいる島を見つけ出したりとかできないかなって。


「外洋に出るのは難しいですか?」


 でも、ここで意外な事実が明かされる。


「位置計測が困難だからな。大陸からあまり離れての運用は考えていないのだ。

 座標確認の方法を引き続き研究している」

「星や太陽の位置で方角を調べたりとかはしないんですか?」

「星? 太陽? そんなもので方角が解る方法があるのか?」

「あれは、『神』と『精霊神』が空に張り付けた幻影でしょう?

 その幻影から魔王が生まれた……」


 この世界には、天文学がない?


「進水式には、できれば皇女の参列を賜りたい。

 歴史を変える船に名前を付けて頂き、祝福して貰えるとなお嬉しいな」


 私はメルクーリオ様の話を聞きながら、何かが喉元に引っかかっているような、何とも言えない違和感を覚えていた。


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