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皇国 騎士試験本選2 準決勝を前に

 カマラが精霊石の剣と契約して、魔術剣士となった後、付け焼刃ではあるけれど、なんとか三つの術を覚えたと聞いていた。

 炎の剣と、風の衝撃波もどき、そして防御用の水の盾。


 水の盾は特に、敵の攻撃の威力を殺すだけでは無く、傘のように使う事もできて自然災害の防御にも役立つ優れものだ。

 ただ、水が無いと使えない。

 上級者は空気中の水分から水を汲むことができるというけれど、一詠唱以上の集中が必要になる。


「だから、今は護身用にいつも水の入った小瓶を持って歩く様にしているんです」


 とフェイは言っていた。

 重要なのは水があるか、ないか。

 少しの水さえあればそれを増幅させて必要量を確保することはできるのだそうだ。


 アルケディウスの民族衣装、チェルケスカには胸元にポケットがついている。

 普通のポケットではなく、細長い、棒のようなものが入る縦長ポケットがいくつも。

 向こうのアニメで似たような服を着ている人を見たことがあったけれど、その人は火薬を入れて使っていたっけ。

 そのポケットにカマラは水を入れていたらしい。


 最後の攻防の瞬間、彼女は守りを盾に任せて、自分の能力と全集中を攻撃に向けて突進した。

 結果、レスタード卿の意表をついて、剣を飛ばすことに成功したのだ。


 しばらく呆気に取られていたレスタード卿だったけれど、我に返った途端に、


「いや、やられた、やられた。世の中にはまだまだ私の知らない術や戦い方があるのだな」


 豪快に笑ってカマラに近付いていく。

 自分の剣を拾い、鞘に戻すと、


「精霊に愛された若き風、君と戦えたことを光栄に思う。ありがとう」


 一切の躊躇なくその手を差し出して下さったのだ。


「こ、こちらこそありがとうございます。

 奇策で正々堂々とした戦いを汚してしまい……」

「なんの。戦場においての正義は己の全てを出し切る事だ。

 それが詐術、罠の類であろうとも、勝利の為に己の持つ力の全てを出し惜しみなく行使することこそが、相手への誠意である。

 其方は戦いを汚してなどいない。胸を張って前に進むがいい」

「ありがとうございます!」


 握手の手をしっかりと握りしめたまま、もう一度深々と頭を下げるカマラとレスタード卿に、再び万雷の喝采が降る。

 微かな吐息はもしかしたら、レスタード卿に賭けていた人のモノかもしれないけれど。

 誰も、きっと本人さえ予想していなかったカマラの準決勝進出に、会場全体が華やかに騒めいていた。


「これで、準決勝第一試合はお前の関係者同士の対決と決まったな。

 一種の師弟対決か」


 お父様に言われてハッとする。そっか。

 準決勝はユン君=クラージュさんとカマラになる。

 カマラはクラージュさんの部下管轄で指導もしているから、師弟対決になるね。


「そうですね」


 さすがにクラージュさんにカマラが勝つ事は難しいだろう。

 今までの相手は誰も知らなかった精霊の剣術を初見で上手く使う事で意表をついて勝利して来た。

 でもクラージュさんは、精霊の剣術についてある意味カマラよりも良く知っている。

 加えて実力も二段階くらい上。

 だから、クラージュさんにとっては指導碁みたいにカマラの悪い所を教えてあげながら剣を交わす事になるんじゃないかな、って思う。


 騎士試験、御前試合という大舞台で師匠と手合わせする事は、カマラにとってもいい経験、勉強だ。


 因みに今回、偏見かも知れないけれど、実力者がかなり第一ブロックに固まってしまった気がする。

 カマラ、ヴァルさんとユン君の戦いがかなり高レベルの見ていて楽しいものだっただけに、次の第三試合の鎧騎士対鎧騎士の戦いは少し単調に感じてしまった。

 鎧騎士同士で動きも重いし、顔も見えないし。


 武器は斧と槍。ガンガン打ち合い戦うのみ。

 かなりの接戦を制したのは斧を使う騎士の方だった。

 技術的には槍の騎士の方が高かったように思うけれど、一撃の威力、重さは斧の方が強く重く、鎧の下に響く衝撃でダメージを累積させたみたいだ。

 もし、このブロックにヴァルさんが入っていたら、準決勝までいけたのではないかって思う。

 軽戦士系には鎧騎士を仮想敵として十分な対応をしている人が多い。

 去年も、ヴァルさんは鎧騎士と当たっていたけれど、槍の穂先を鎧の関節に入れて動きを封じたりと工夫できていたから。


 第二試合 四回戦。

 ミーティラ様の登場だ。相手は大剣使いの鎧騎士。

 この時点で、私はなんとなくだけど、肩の力を抜いた。

 確信できたのだ。ミーティラ様は負けない、って。


 案の定、試合開始と同時、ミーティラ様の猛攻が始まった。

 鎧騎士にも色々なタイプがいて、完全なフルメタルアーマー、良く動けるねって人もいれば、装甲は薄め、動きやすさを重視しているって人もいる。

 鎧も、固いだけでは無く動きやすさとか工夫されているみたいだ。


 この方はその中でも特に鎧の防御力に拘っているようだった。

 分厚いブレスト、肩の装甲も厚め。動く度にガシャンガシャンと音がする。

 兜もフルフェイス。目元は小さな点々がいっぱいあるけど、すっぽりかぶるタイプで目元も開かない。

 良くこれで動けるな、前が見えるなあって思う。

 重さ、絶対相当だ。子ども一人なんて簡単に超える。


 勿論、それでもここまで来たのだし、これだけの鎧を着こなして動く体力、膂力はすさまじいと思う。

 鎧の外形かなり大きいから、きっとこの試合一の高身長なのだと思う。

 お父様が使うような大剣を振るう様子は、きっと戦場のただ中だったらフリュッスカイトのルイヴィル様みたいに難攻不落の盾、みたいな役割を果たせるだろう。

 また戦い方を見る限り、一切の防御を考えていない。

 敵の攻撃は無視して相手に向かって行き、剣を振るうやり方だ。

 鎧の構造からふりかぶれない為か、横薙ぎ、下からの払い、突き上げなどが多いけれど、一撃がかなり重いので当たれば一気に相手を戦闘不能に持っていける。


 ただ、予選みたいにある程度力押しでなんとかなる相手とは違い、御前試合で勝ちあがって来た相手にはそのアドバンテージは十二分には生かせないことが多い。

 それを考慮して対策を練ればいいのに、それをしないあたりがお父様曰く『単純』と言われる所以なのだろう。


 ヒット&アウェイ。

 試合開始と同じタイミングから、まるで蜂のように刺しては離れ、離しては刺すのを繰り返すミーティラ様を、鎧騎士は捕えあぐねているようだった。

 一撃当たればミーティラ様は女性だし、装甲も軽いから一気に戦闘不能にできるだろう。

 けれどその一撃があたらない。

 勿論、固い装甲に護られて、ミーティラ様の三叉槍は弾かれるばかり。

 でも緩急、打突を取り交ぜて、攻撃を続けるミーティラ様は、甘い攻撃の狭間に、的確に下段、足元を狙い攻撃を入れ続けている。

 長柄の武器だから、上に突き上げるのもアリだけど、下に打ち込む方が重力の助けもあって鋭い攻撃が行くのかも。


 試合開始から数分が経過する。

 突然、バチン!

 何かがはじけるような鈍い音がした。

 と、同時に、がくん、と鎧騎士の足元が揺れ崩れた。


「な、なに?」


 今迄執拗に足元を狙い、攻撃を続けていたミーティラ様の攻撃で、足首を護っていた足首近辺のパーツが弾けたっぽい?


 その一瞬のスキを狙ってミーティラ様は胸を狙い撃つ。

 胸の装甲は特に厚いからダメージを狙ったわけでは無い。

 身体ごと飛び込んで、鎧ごと、彼を押し倒したのだ。


 自身が一本の槍になったような鋭く重い一撃は、鎧騎士の腰を崩し、背を地面に付けさせた。

 一度倒れてしまうと鎧騎士は簡単には立てない。

 それでなくても、自分の意図では無く背中が地面に付いたら敗北だ。


「そこまで! 勝者! プラーミァのミーティラ!」


 軽く息を切らせながらも、ミーティラ様は観客に手を振る余裕がある。

 第二ブロックの勝者は間違いなくミーティラ様になるだろう。


 それを迎え撃つのは次の試合の勝者。


「エルディランドのユン対エクトールのカマラ」


 二人が闘技場の中央で一礼する。


「始め!」


 そして、第一ブロック最終戦。

 準決勝が始まったのだった。

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