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ひよわな私の異世界ぐらし  作者: ささみし
ひよわな私と秘密の話
46/75

46. せーたんさいって、なんですか?

前回45話投稿時、貼り付けの失敗により文が重複していました。

現在は修正済みとなっております。ご指摘、誤字報告で気づけました。ありがとうございました!

 昼下がりの町の中。

 私はリルカと二人で食材の買い出しに出ていた。

 ただ、その町の様子がいつもと違う。人がやけに多くて賑やかだし、お店の飾り付けも華やかで、なんとなく楽しげな感じがする。


「なんだか今日はいつもより活気がありますね」


 ふとした拍子にはぐれてしまいそうな人混みの中で、私はリルカと手をつないで歩いていた。

 たぶん、はたから見れば子供と手を繋ぐお姉さん、かな。だけどその実は、私が迷子にならないようにリルカのほうが気を使ってくれているのだった。

 私の疑問にリルカが答える。


「だって、明日はせーたんさいだもん」

「せーたんさい、ってなんですか?」

「あのねー、おひさまのお誕生日なんだよ」


 お日様の誕生日と聞いて、せーたんさいに意味が繋がった。


「お日様の……ああ生誕祭。でも、どうして明日が誕生日なんでしょうか」

「それはねー、1年のなかで、明日がいちばんおひさまの出る時間が少ない日だからだよ。だから明日が誕生日なの」


 得意顔のリルカが私に言った。

 なるほど、と思いながら私は空を見上げた。明日から日照時間が長くなっていくから誕生日、かあ。

 

「へえー、勉強になりました。リルカさんは物知りですねえ」

「えへへー」


 上機嫌なリルカと一緒に買い物を済ませ、帰りにお菓子を買っていこうと、きゅあかるとに立ち寄った。

 

「いっ、いらっしゃいませ!!」


 入り口のドアを開けると、聞き覚えのない声に出迎えられた。

 ロゼッタじゃない。あれ? と思って目を向けると、メイド服を着た小さな女の子が立っていた。リルカと同じくらいの年頃だろうか。ぱっちりとした目と短い前髪にはつらつとした印象を受ける。

 

「あ、シホさん。リルカちゃんも。いらっしゃい」

 

 店の奥からロゼッタが顔を出した。

 

「ロゼッタさん、こちらの子は、どうしたんですか?」

「ああ、最近入った新人ちゃんだよ」

「ユイですっ。よ、よろしくおねがいします」


 メイド服を着た少女、ユイがぺこりと頭を下げる。動きがちまちましていて可愛らしい。



 リルカが楽しそうにユイとおしゃべりするのを眺めながら、わたしはロゼッタにたずねた。


「ずいぶんちっちゃい子を雇ったんですね……。ロゼッタさんって子供が好きなんですか?」

「いやいや、なんか変な誤解してない? あの子、ああ見えてあたしと同じくらいの歳だからね」

「えっ、そうなんですか?」


 ということは、私とも歳が近い? うーん、全然そうは見えない。

 

「まあお陰で最近特殊な客層が増えたような気がするんだけど……ってまあその話はおいといて、シホさんから教えてもらったケーキ、すごく評判良いよー。名前なんだっけ、えーと……モンブラン! 上にのっけたクリがお日様みたいで生誕祭にもぴったりだし――」


 リルカの大声で会話が遮られた。

 

「えーーっ!? ユイちゃん恋人いるの!?」

「う、うん……」


 店内にいたお客さんが、一瞬にして静まり返り、やがて悲嘆にも似たざわめきが生まれる。

 

「そ、そんな……」「ユイちゃんに恋人……?」「嘘だ、嘘だと言ってくれ……」

 

 あれ? なんか変な空気になってない? 大丈夫かな……。

 だけど周りの空気をまるで気にすることもなく、リルカが追い打ちをかけた。

 

「すごいすごーい! ねえねえ教えて、どんなひと!?」

「あの、そこにいる……」


 と、ユイが指差した先には、カウンター席で本を呼んでいる大人の女性がいた。

 お客さんの注目が一点に集まり、今度は歓声のような驚嘆のどよめきが溢れた。

 

「俺は信じてたよ」「っぱ推しの幸せが一番よ」「大勝利だ……」

 

「ん。なに……? なにかあったの?」


 少しハスキーな声とともに女性が振り返った。

 すごい美人だ。だけどその顔の半分は仮面で隠されていて、それがまたミステリアスな色気を醸し出しているのだった。



 帰り道を歩きながら、リルカがつぶやいた。

 

「いいなー、ユイちゃんは恋人がいて」

「あっ。そういえばリルカさん。お店の中であんなふうに大声を出してはだめですよ。他のお客さんの迷惑になります」

「わかってるよ~。でもびっくりしちゃったんだもん」

「確かに、ギャップのあるお二人でしたね」


 横に並んだら身長差は倍くらいあるんじゃないだろうか。


「リルカも恋人ほしいな~」

「恋人って、ほしいから作るものではないと思いますけど」

「だって、明日はせーたんさいなんだもん」


 生誕祭と恋人と、どういう関わりがあるんだろう。

 聞こうと思ったら、リルカが駆け出した。いつの間にかライカ亭に着いていたようだ。

 

「おかーさーん、ただいまー」


 まあいいか。もうすぐ夕方になる。店を開く前に一休みだ。買ってきたお菓子も食べたいし、クリスを呼んでお茶にしよう。

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